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第88期(2010年度)流体工学部門 一般表彰(フロンティア表彰)

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一般表彰(フロンティア表彰)


石本 淳 (東北大学)

受賞理由:

 マイクロスラッシュ粒子の連続生成技術開発に世界に先駆けて成功し,またマイクロキャビテーションを伴う乱流微細化の数値予測手法を開発するなど,異分野融合手法により先駆的な業績を挙げた.

受賞のコメント:

 この度は,流体工学部門一般表彰(フロンティア表彰)を賜り,大変光栄に存じます.ご推薦いただいた先生ならびにこれまで研究面で討論とご協力下さった方々に厚く御礼申し上げます.

 私が初めて本格的な流体工学研究と関わったのは,大学院生時代の研究テーマである磁性流体沸騰二相流動現象の解明でした.その後,教員となってテーマが変わり極低温流体二相流・LHeキャビテーションの研究を開始,このときに手がけた極低温流体の研究は今回受賞対象テーマとなったマイクロソリッド窒素噴霧流の異分野融合領域への応用研究へとつながっていきました.マイクロソリッド窒素噴霧流は次世代スーパーコンピュータ用プロセッサ超高熱流束冷却,さらには新型半導体洗浄法への応用が期待され新しい知見が得られつつあります.

  同時に,自動車会社との共同研究テーマであるマイクロキャビテーションを伴うインジェクター噴霧流動解析を行い,特殊流体の微粒化現象解明とその異分野融合領域応用は私の主要研究テーマとなっています.振り返ると,一貫して特殊流体の混相流に関わる研究を行ってきたわけで,特に最近重要視している極低温固体窒素噴霧と一体型微粒化シミュレーションに関する研究テーマが評価されて今回受賞の運びとなりましたことは大変光栄なことと感じている次第であります.

 今回の受賞を契機に,混相流動のエネルギー循環・環境調和を考慮したサステナブル異分野融合型の研究を推進し,流体工学分野の学術的発展と産業発展に貢献できるよう努力精進していく所存でございます.

一般表彰(フロンティア表彰)


稲室 隆二(京都大学)

受賞理由:

 格子ボルツマン法を用いた密度比の大きな気液二相流の数値解析法の開発において,気液二相流解析の発展のみならず新領域の研究分野の開拓に貢献する先駆的な業績を挙げた.

受賞のコメント:

 この度は,流体工学部門一般表彰(フロンティア表彰)を賜り,大変光栄に存じます.ご推薦下さった先生方ならびにこれまでご指導いただいた先生方に厚くお礼申し上げます.また,これまで一緒に研究してきた学生の皆さんに感謝いたします.

  大学院を修了後,企業の研究所に15年間勤めたあと,大学に戻ってきた1994年頃に新しい研究テーマをやりたいと思って始めたのが格子ボルツマン法でした.世界的にも格子ボルツマン法の研究が始まったばかりの頃でした.当時は,まだ単相流の新しい数値解析法として,その基礎となる理論(Navier-Stokes方程式との対応)や境界条件の提案などが研究者の興味のある課題でした.

  一方,今回の受賞対象となった,二相流に対する格子ボルツマン法についても,その基本的な方法は1990年代にすでに幾つかの方法が提案されていました.ただし,それらは密度比の大きな気液二相流を扱えないことが最大の欠点でした.1990年代終り頃から,世界の研究者が大きな密度比を扱える格子ボルツマン法の開発に取り組みましたが,なかなか成功しませんでした.我々も同じ頃から密度比を大きくすることに挑戦しましたが,そう簡単には解決できませんでした.4,5年かかって,一応の解決(当時も今も,それほど満足できる方法とは思っていませんが,大きな密度比が扱えることは確かです.)を見たのが2004年にJ. Comput. Phys.に掲載された論文です.この論文は,すでに被引用回数が100回を超えており,この分野の小さな一里塚になりつつあります.ただし,今でも満足していない部分の改良は必要と思っており,少しずつ取り組んでいます.

 現在,二相系格子ボルツマン法の改良だけでなく,これまでに開発した格子ボルツマン法をいろいろな分野に適用しています.相変化を伴う二相流,血管内の赤血球の挙動,はばたき翼の飛行などが最新の研究テーマです.今回の受賞を励みに,微力ながら,これらの分野で流体工学の発展に貢献できればと考えています.

更新日:2010.12.26