「第18回流れのふしぎ展」実施報告
神奈川工科大学 山岸陽一
8月11,12日,東京都江東区の日本科学未来館で日本機械学会流体工学部門主催,神奈川工科大学共催「第18回流のふしぎ展」を開催いたしました.東京湾大華火祭とも重なり,2日間で約2200人もの方々に来場いただきました.この企画は,「流れのふしぎから未来がみえてくる」をテーマに,科学教室,科学講演,体験型展示,工作教室,ウインドカーコンテストに参加して,子供から大人まで,そのふしぎな世界を見て,さわって,話しを聞いて「えっ!?」と驚くような発見をして,そのなぞを解き明かそうというものです.体験型展示会場では,終了時間ギリギリまで楽しく遊ぶ子供たち.工作教室会場では178名もの参加者.ウインドカーコンテスト会場では奇抜なアイデアを取り入れたウインドカーなど65台のエントリーがあり大盛況でした.
<科学教室>
図1 研修会の様子 |
●教員・科学ボランティアのための研修会
研修会では小・中・高校教員,科学ボランティア,教職課程学生等を対象として流れを利用した教材作りを行い,原理や応用について解説が行われました.11名の参加者からは,熱心な質疑応答がありました.
●楽しい流れの実験教室
実験教室では小中高校生を対象に48名が参加しました.飛行の翼,サッカーの無回転シュート,野球の変化球などのふしぎな実験や風に向かって走るウインドカーを製作しました.
<体験型展示>
空気や水の流れを利用したおもちゃや遊びを通して,流れのふしぎを実際に体験します.ドライヤーの風でボールをあやつり障害物をクリアしていく「ボールの散歩」,ボールの回転を利用して直接ゴールをねらう「コーナーキック」,終端速度と同じ速さで下から気流を吹かし,水滴が空中に浮かんでふしぎな動きをする「雨滴」,カップを回転させてフワッと飛ばす「マグナスカップ」,回転しないようにボールを飛ばしボールの後ろの不規則な渦でボールに変化が起こる「無回転シュート」など11種類のブースがあります.各ブースでは,スタッフによる遊び方の説明やパネルを使って現象の解説が行われ,終了時間ギリギリまで,楽しく遊ぶ多くの幼稚園生や小学生の姿がみられました.
図2 コーナーキック | 図3 無回転シュート |
図4 雪だるま |
<工作教室>
自分で簡単なおもちゃを作って,空気や水の流れの性質を学ぶことができます.工作教室は5回開催され178名の参加がありました.ストローで吹いてあやつる発泡スチロール製の「雪だるま」,風に向かって進む「ウインドカー」を作って遊びました.小学生・幼稚園生をはじめ付き添いのご父母も楽しまれていました.
<科学講演>
科学教室では,「君にもできるロケットづくり!」(藤本圭一郎先生,JAXA),「誰よりも速く泳ぐための流れ学」(望月 修先生,東洋大学)と題して,2つの興味ある講演が行われ,会場は,110名の聴講者の参加がありました.先生方のお話は,工夫を凝らしたクイズ形式で大変わかりやすく,小さいお子さんが集中して聞いている姿が印象的でした.
図5 ロケットについて説明する藤本先生 | 図6 泳ぎ方について説明する望月先生 |
<ウインドカーコンテスト>
コンテストは,風のエネルギーで風上に走るウインドカーを競争させ,2台並走によるトーナメント方式で速度を競うレーシング部門と,坂道と半球状の丘を乗り越えて進むアイデアを競う障害物部門があります.どちらの部門も,コース長さ:3m,走路内風速:約3m/sであり,ウインドカーは完全に静止した状態からスタートする規則です.以下の2部門,5クラスに分けて実施しました.
- レーシング部門:小学生の部(13組がエントリー),中学生の部(12組がエントリー), 高校生の部(20組がエントリー)
- 障害物部門: ジュニアの部(6組がエントリー),高校生・一般の部(14組がエントリー)
図7 レーシング部門 小学生の部 | 図8 障害物部門 高校生・一般の部 |
レーシング部門小学生の部では,優勝者は小泉翔君(図9),中学生の部では,優勝者は野村聡君(図10),高校生の部では,山梨県立韮崎工業高校と茨城県立中央高校の強豪校どうしのハイレベルなレース展開となり大峰誠也君(図11)が3.17秒の好タイムで優勝して日本風力エネルギー学会賞に輝きました.
図9 レーシング部門小学生の部 受賞者の皆さん |
図10 レーシング部門中学生の部 受賞者の皆さん |
図11 レーシング部門高校生の部 受賞者の皆さん |
図12 障害物部門ジュニアの部 風力エネルギー学会賞受賞者 |
障害物部門は上り下りの坂道を進んで半球状の丘を越える往復のコースで,ウインドカーのアイデアを競うものです.難関な競技であるがジュニアの部では,タイヤを大きくして障害物を超え,糸の巻き方を反転させて往復完走した木村朱里さん(図12)が優勝して日本風力エネルギー学会賞を受賞しました.高校生・一般の部では,残念ながら完走はありませんでしたが,バランスをとるために後方に翼を付けたり,車輪の代わりにキャタピラーを付けるなどユニークなデザインが多数参加しました.その中で,リンク機構で歩くように進むウインドカーで出場した飯塚浩市君がアイデア賞に輝きました. なお,優勝以外にも,レーシング部門においては,準優勝,第3位,特別賞が併せて選出され,障害物部門ではベストデザイン賞も選出されました.
<最後に>
開催に際しては,文部科学省科学研究費助成事業(研究成果公開促進費「研究成果公開発表(B)」課題番号2454008),日本機械学会流体工学部門特定事業資金,日本機械学会機械工学振興事業資金,神奈川工科大学からそれぞれ助成金を頂くとともに,多くの機関・団体から後援・協賛を頂きました.また,開催までの準備と会期中の運営に当たっては,大学教員(神奈川工科大学,群馬大学)の10名,学生(神奈川工科大学)47名,卒業生(神奈川工科大学)12名,一般ボランティア8名の献身的な協力に支えられました.これら,多大なる助成とご協力に深く感謝の意を表します.