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テーブルに下敷きを貼りつける

まずは見てみよう!

どんな実験?

実験手順と種あかし

  • 下敷き(18cm×25cm)に吸盤を貼りつけてテーブルの上に置きます。すきまができないようにタオルなどで上からこすりつけます。
  • 吸盤にばねばかりをかけて上に引き上げます。5kgくらいの力で引っぱってもびくとも動きません。
  • 次に、小さな下敷き(12cm×18cm)でどのくらいの力に耐えられるかを確かめてみます。約16kgの力ではがれ、大きな力を支えられることがわかります。
  • この原理を「上面には大気圧がはたらき、下面は真空になっていて大きな力を支えられる。このことら大気圧の大きさを実感できる。」と説明している本が多く見られますが、これは間違っています。
    もしこのことが正しいとすれば、大気圧は1cm2あたり約1kgの力がはたらくのでこの下敷きでは約216kgの力を支えられることになりますが、実験では約16kgとケタ違いです。
  • 下敷きは一見つるつるしていて完全な平面に見えますが、顕微鏡などで拡大して見ると表面には細かい凸凹、うねり、そりがあることがわかります。また、テーブルの表面も同様です。この二つが接触すると図のように間にはすき間が至る所にでき、下敷きとテーブルが固体接触(固体どうしが接触)しているのはほんの一部分です。すき間は密閉されていない限り大気圧ですので、下面の大部分は大気圧になります。下敷きを上に引き上げると、接触部分の圧力は下がり、理論的には最小で0気圧(真空)まで下がることができますが、通常はその前に下敷きがはがれてしまい、そこまで低圧には達しません。このとき、下敷きとテーブルが固体接触している部分だけが大気圧より小さな接触圧力になり、その部分の上面にはたらく大気圧との差の分だけ下敷きを支える力になります。下面全体の圧力の平均値は大気圧の90~95%くらいと考えられ、真空状態とは程遠い状況となっています。
  • まとめると「下敷きがテーブルと接触している部分(この面積は全面積のごく一部)の圧力が大気圧より低くなり、上面の大気圧との差によって力を支えている」となります。そして、この力は上面にはたらいている大気圧による力(12cm×18cmの下敷きでは約216kg)に比べてはるかに小さく(実験では約16kg)なっていて、「大気圧による力のごく一部しか感じていない」ことになります。
  • 動画ではおこなっていませんが、素早く引き上げる場合にはもっと大きな力がはたらきます。これは下面のすき間に空気が流入するときの粘性摩擦を原因とする力(速度に依存する力)、下敷きの下面および上面付近の空気を加速するために必要な力(加速度に依存する力)が上乗せされるからです。
【注意】
  • 加える力が2~3kgを超える実験をするときは、必ず先生など指導者といっしょに安全確保をして行ってください。
  • 大気圧がはたらいている物体にはたらく力を考えるときは、表だけ(片側だけ)ではなく必ずその裏側(反対側の)の圧力も考慮してください。本実験は一例ですが、科学入門書等で「大気圧によって押されているから」という原理の説明には多くの間違いが見られます。必ず反対側の面についても正しく状況を把握してその圧力を考慮してください。
【キーワード】 大気圧
【関連項目】

吸盤のひみつ天井に下敷きを貼りつける

【参考】 石綿良三「図解雑学流体力学」ナツメ社、P16-17.
日本機械学会編「流れのふしぎ」講談社ブルーバックス、P34-37.

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更新日:2015.10.1