流れの読み物

Home > 流れの読み物 > ニュースレター > 2002年4月号

流れ 2002年4月号 目次

  1. トピックス
    色素を用いて圧力をはかる -感圧塗料- 
    浅井圭介(航空宇宙技術研究所)
  2. 第79期流体工学部門講演会の概要
    実行委員会委員長 南部健一(東北大)
  3. 第1回「流れの夢コンテスト」開催にあたって
    第1回流れの夢コンテスト実行委員長 平原裕行(埼玉大)
  4. 関西支部流体工学懇話会(発足前後の私的な回想)
    東恒雄(大阪市立大)
  5. 会告
    第8回流れと遊ぶアイデアコンテスト 
  6. 報告
    第79期各委員会からの報告

 

第1回「流れの夢コンテスト」開催にあたって

▲平原裕行
(埼玉大)

  流体工学部門では,若手研究者を対象にした企画として,本年度より「流れの夢コンテスト」を開催することになりました.学会員の皆様が,講演会とは全く異なった雰囲気の中で,流体工学について語り合い,また,各自が持っている流体工学に対する夢を語り合ってみたいという発想のもとにこの企画がスタートいたしました.この企画に至るまでには,度重なる多くの議論を重ねて,学生員の方々の貴重な意見を頂戴いたしました.まずは,ここに,企画にあたってご協力を頂いた学生幹事の皆様にお礼申し上げます.また,本企画を実行するにあたり支援してくださった企業,ならびに実行委員の方々にお礼申し上げます.

さて,「流れの夢コンテスト」にたくす期待について,第1回目実行委員会委員長として一言寄せておきたいと思います.そもそも,このような企画は,プロフェッショナルな技術者と,若手技術者との交流を目指して発案されたもので,その前身は「洋上セミナー」に見ることができます.洋上セミナーは過去10年にわたり開催され,実に多くの賛同を得て,多くの方々が集い,特別講演や企業の方々との語らい,また,人工カモメフライングコンテストなど,楽しい企画が開催されてきました.10年間,継続され実行されたのは,その企画がいつも新鮮で興味を引いたからだと思います.しかし,10年とは短いようで,長くも有り,この企画は10年を一区切りとして,一旦,衣替えをすることとなりました.広報委員会のセミナーWGが発足し,それを機軸にディスカッションが行われ,幾つかの代替案が出されました.海外研修の案,日本のトップランナーと語る会,流体工学歴史探訪,企業訪問会などなど,実に楽しい企画が出されました.そして,討論を重ねるうちに,流体工学部門の広報活動としての意識が強まり,若手研究者の啓蒙をかねて,熱い討論の場を持ちたいという雰囲気ができてまいりました. 今回の企画はこのような過程を経て決定されたものです.流体工学について語るとき,何か突拍子も無い夢物語でもいいから専門家を交えて,若手研究者を交えて交流を深めようではないか.このような要望を実現するために「流れの夢コンテスト」が開催される運びとなりました.

流れの夢コンテストは,若手研究者に専門知識を提供するために,特別講演会を積極的に行うことと致しました.第1回目の2001年度は,6月16日に1回目の特別講演会を慶応大学にて,東海大学の加藤直三先生をお招きして,第2回目の特別講演会を蔵王にて東京大学の清野聡子先生をお招きして開催いたしました.第2回目の特別講演会の後,直ぐにコンテストを行いました.コンテストの会場は,多くの方のご参加を頂き,実に生き生きとした雰囲気の中で,発表が行われ,実に楽しい大会となったことをここにご報告いたしておきます.作品はどれも創造にあふれており,発表者の説明にも力が入っていらっしゃいました.いずれも中々の力作でした.

 九州大学の清水絵里子さんは「二次元羽ばたき翼の高効率推進に関する研究」と題して,実験結果と数値計算結果を含めて,実に論理的に,技術的にしっかりと,羽ばたき翼の分析を説明してくれました.
福山大学の梅田眞三郎先生は,若者の中に混じって「渦と噴流を利用した新しい魚の養殖水槽」について楽しくその構想を披露していただきました.梅田先生が,夢を描きながら学生を指導する様子が浮かぶようでした.
九州工業大学の田中宏幸さんは,聴覚の器官である蝸牛を取り扱った「蝸牛からの考察」と題して,新規のセンサーやアンテナに関する提案をしてくれました

 名古屋大学の松沢礼文さんは,「魚の向流性に学ぶ船舶の航行性能の向上に対する提案」について語ってもらいました.魚にヒントを得たアイデアに対して会場から色々な意見や質問が出されました.
東北大学の伊藤有沙さんは,「生物と流れのテーマに無理に結びつけて発表に来ました.」といいながらも「絶対音感に関する研究」として,独自の音の表現と,音感に対してプレゼンしていただき会場から大きな共感を呼んでいました.
埼玉大学の西村弘紀さんは,「THEみずすますぃ~ん」とややうけを狙ったタイトルで発表していましたが,大学で指導教官をやっている私としましては,技術的な背景は希薄であるけれども,アイデアとして練ってあるなと思って聞いておりました.
神奈川工科大学の長谷川一成さんは,「水上歩行はできないか」という,まさに自分が描く夢のスポーツ用具について面白いアイデアスケッチを提案してくれました.

 プレゼンテーションの後で,審査員が集まり,「夢,新規性,実用性,実現性,社会への影響度,生物のテーマとの関連性,研究のレベル」の7項目に関して3点ずつの配点で採点を行った結果を集計して,最優秀賞を決定いたしました.結果は,埼玉大学の西村さんの「THEみずすますぃ~ん」に最優秀賞が決まりました.結果的に最も夢を"熱く"語ってくれた埼玉大学の西村さんに最優秀賞の栄冠が輝いた気がいたします.
本コンテストは,最初の試みであったため,様々な問題点を抱えてのスタートであり,また,課題も残す結果となりました.例えば,このようなコンテストを本気でやるならば,特許やオリジナリティの問題をどのように確保しておくべきか,などが問題となりました.また,価値ある発想に対して,その実現に向けて援助となるぐらいの賞金を与えるべきではないか,との意見も出されました.いずれも現在,懸案課題となっておりますが,このような前向きな意見が出されたことは,本コンテストの実行委員の一員としては,参加した方々からの大きな賛同のご意見であったと受け止めております.最後に,今後,この夢コンテストが様々な形式で,若い研究者の活動の場となることを期待いたします.
最後に,本コンテストを運営するにあたって大変なご協力をいただいた実行委員の方々,企画中からさまざまな意見を出していただいた学生幹事の方々,それぞれの場所に置いて相談員としてコンテストの相談にのっていただいた先生方に対して,感謝申し上げます.

流れの夢コンテスト結果報告

流れの夢コンテストは以下のようなスケジュールで行われました.

ネット上で作品応募

応募〆切:2001年9月10日(金)

選考方法

予備選考:2001年9月11日(火)~9月14日(金)
(ネット投票結果と有識者の先生方の意見を交え,優秀な作品を5~6件を採択.)
本選考
2001年10月2日(火)
予備選考で選ばれた応募者を招待し,流体工学部門講演会会場にて成果発表会でプレゼンテーションを行い最優秀作品を決定.


コンテストの結果は以下のとおりです.

最優秀賞

「THEみずすますぃ~ん」西村弘紀

優秀賞

「二次元羽ばたき翼の高効率推進に関する研究」 清水 絵里子
「渦と噴流を利用した新しい魚の養殖水槽」 梅田 眞三郎
「魚の向流性に学ぶ船舶の航行性能の向上に対する提案」 松沢 礼文
「絶対音感に関する研究」 伊藤 有沙
「水上歩行はできないか」 長谷川 一成
「蝸牛からの考察」 田中 宏幸

流体工学部門講演会にてプレゼンテーションを行い,審査の結果以上のように決定いたしました.各作品は動画を含めて下記アドレスで見ることができます.
http://fourier.mech.saitama-u.ac.jp


第1回コンテスト支援団体

第1回夢コンテストは,下記企業のご協力のもとに運営がなされました.
夢コン支援企業
石川島播磨重工業(株)
(株)荏原総合研究所
日機装(株)
(株)東芝
富士電機(株)
(五十音順)

第1回コンテスト運営スタッフ・学生幹事

相談員
望月 修:北海道大学工学研究科 機械科学専攻
大林 茂:東北大学工学研究科 航空宇宙工学専攻
小尾晋之介:慶應義塾大学理工学部 機械工学科
長谷川豊:名古屋大学大学院工学研究科
梅田眞三郎:福山大学建設環境工学科
宮崎康次:九州工業大学生命体工学研究科

学生幹事
市川正明:慶應義塾大学大学院理工学研究科開放環境科学専攻
菊川豪太:東京大学大学院工学研究科機械工学専攻
菊地 直:神奈川工科大学機械システム工学専攻
佐藤俊輔:工学院大学流体工学研究室
長谷川一成:神奈川工科大学機械システム工学科
佐藤克典:埼玉大学大学院理工学研究科機械工学専攻
佐藤幸仁:埼玉大学大学院理工学研究科機械工学専攻
西村弘紀:埼玉大学大学院理工学研究科機械工学専攻
田中宏幸:九州工業大学大学院 生命体工学研究科
松沢礼文:名古屋大学工学研究科機械工学専攻

実行委員
実行委員長 平原裕行:埼玉大学工学部機械工学科
幹 事    武田渉:日機装(株)東村山製作所R&Dセンター
委 員    佐藤雅浩:富士電機(株)エネルギー製作所 火力部 計画設計課
        増子章:石川島播磨重工業(株)基盤技術研究所 基礎技術研究部





写真1:特別講演でカブトガニの標本を手に講演される清野先生

写真2:熱弁を振るう発表者

写真3:熱弁を振るう発表者

写真4:最優秀賞 西村弘紀さん(中央)と松本部門長(右),小西広報委員長(左)

写真5:最優秀賞の盾
更新日:2002.4