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流れ 2019年12月号 目次

― 特集テーマ:2019年度年次大会 ―

  1. 巻頭言
    (本澤,森)
  2. 気泡の流体工学的諸特性とその計測技術
    齋藤 隆之(静岡大学)
  3. 流体機械と渦流れ現象
    古川 雅人(九州大学)
  4. 企業におけるEFDの事例紹介 キャビテーションを例にとって
    能見 基彦(荏原製作所)
  5. マイクロバブルプルームの内部に直列配置された2円柱の周囲の流れ
    内山 知実, 高牟礼 光太郎(名古屋大学)
  6. キャビテーションと溶存気体:キャビテーションのより良い予測を目指して
    渡邉 聡(九州大学)

 

マイクロバブルプルームの内部に直列配置された2円柱の周囲の流れ


内山 知実
名古屋大学


高牟礼光太郎
名古屋大学

1. はじめに

 一様流中におかれた複数の柱状物体の周りの流れは,熱交換器や橋梁の振動特性の解明や予測などに関連して,工学的に多くの関心を集めています.もっとも基本的な流れ場として2本の円柱が流れに直列に配置された場合について,上流の円柱で生起したはく離せん断層が下流の円柱に再付着する様子や,上流円柱が誘起した渦流れが下流円柱における渦の発生に及ぼす影響などが詳細に調査されています(1-4)

 一方,液相中を浮力で上昇する気泡群が誘起する気泡流は,熱や物質の移動を伴う様々な工業プロセスで利用されています.このような気泡プルームの内部に置かれた柱状物体の周囲の流れについても,調査例が報告されています(5).ただし,気泡の直径が3-5 mm(物体代表長さの1/10程度)であり,調査は比較的大径の気泡に限定されています.気泡プルームの特性は気泡の終端速度すなわち気泡直径に依存するため,物体周囲の流れは気泡直径の影響を受けることが考えられます.しかし,直径0.1 mm以下の微小気泡から構成されるプルームの内部におかれた物体周りの流れに関する研究例は見当たりません.そのような流れの詳細を知ることは,マイクロバブルが誘起するプルームを扱う装置の設計指針を得るために重要です.そこで著者らは,直径が約0.05 mmの微小気泡から構成されるマイクロバブルプルームを創成し,その内部に2本の円柱を直列配置した場合の流れを調査しました(6).1本の円柱に関する実験とシミュレーションも併せて実行しました(7).本稿では,これらの概要について紹介いたします.

2. マイクロバブルプルームの内部に直列配置された2本の円柱の周囲の流れに関する実験(6)

 実験装置の概略を図1に示します.透明アクリル製の矩形タンクに水が貯められ,2本の円柱(直径D = 30 mm)が鉛直方向に直列に配置されています.タンク底面中央には,5本の炭素棒が配置され,2本の炭素棒が陽極,3本が陰極として直流電源から電圧が印可され,水の電気分解により陽極および陰極から,それぞれ酸素気泡および水素気泡が発生します.気泡は浮力により上昇しながら周囲に水の流れを誘起します.このような気泡プルームが円柱の周囲を通過していきます.タンク底面と下部円柱の距離は5D,2本の円柱の距離はLであり可変です.

 円柱周囲における気泡の平均直径は一様で0.05 mmでした.気泡をトレーサ粒子とみなして速度をPIV で測定しました.また,ローダミン染料を下部円柱の下半分に塗布し,円柱周囲の水の流れを可視化しました.フィルタを装着した2台のカメラで気泡とローダミンを同時撮影し,気泡とローダミンに関する個別の可視化動画を取得しました.


図1 実験装置  (a) 実験装置の概略,(b) 円柱と電極炭素棒の配置

気泡と水流の可視化動画を図2に示します.ただし,円柱間の距離Lは1.5Dです.下部円柱の側部で気泡がはく離し,せん断層が生じています.せん断層はほぼ鉛直に上昇して上部円柱の側部に再付着したのち,再はく離して上昇していきます.上部円柱の背後に気泡はなく,その上部では気泡せん断層がプルーム中心軸の方向に巻き込まれます.ローダミンで可視化された水流についても,下部円柱の側部でのはく離せん断層の生起,上部円柱での再付着と再剥離,上部円柱の背後でのせん断層の巻き込みなどが観察されます.気泡の運動と水流の密接な関係を把握できます.


図2 流れの可視化動画(L/D = 1.5)

3. マイクロバブルプルームの内部に置かれた1本の円柱の周囲の流れのシミュレーション(7)

 上述の2本の円柱に関する実験で得られた知見を補完するため,1本の円柱をマイクロバブルプルームの内部に水平に置いた場合の実験とシミュレーションも実施しました.図3は,気泡の運動の可視化動画とシミュレーション動画です.シミュレーションは,渦法に分類されるVortex in Cell法(8)にImmersed boundary法を併用して得られたものであり,水流の速度ベクトルも併記してあります.円柱側部からの気泡のはく離や後流の形成などがシミュレーションで適切に捉えられています.


図3 1本の円柱まわりの気泡プルームの可視化動画とシミュレーション動画

4. おわりに

 微小気泡(マイクロバブル)に関しては,効率的な創成方法のほか,その新奇な特性の解明や応用などについて,多くの研究成果が蓄積されつつあります.しかし,工業利用の際に様々な場面で生起する,プルームと構造物の干渉については研究例がほとんど見当たりません.本稿で示した研究は端緒に過ぎませんが,干渉の理解に資すれば幸いです.

参考文献

(1) Tanida, Y., Okajima, A. and Watanabe, Y., “Stability of a circular cylinder oscillating in uniform flow or in a wake”, J. Fluid Mech., Vol.61, (1973), pp.769-784.
(2) Sumner, D., Price, S. J. and Paidoussis, M. P., “Tandem cylinders in impulsively started flow”, J. Fluids Struct., Vol.13 (1999), pp.955-965.
(3) Vakil, A. and Green, G. I., “Numerical study of two-dimensional circular cylinders in tandem at moderate Reynolds numbers”, Trans. ASME, J. Fluids Eng., Vol.135, (2013), 071204(9 pages).
(4) Jester, W. and Kallinderis, Y., “Numerical study of incompressible flow about fixed cylinder pairs”, J. Fluids Struct., Vol.17, (2003), pp.561-577.
(5) Murai, Y., Sasaki, T., Ishikawa, M. and Yamamoto, F., Bubble-driven convection around cylinders confined in a channel, Trans. ASME, J. Fluid Eng., Vol.127, (2005) pp.117-123.
(6) Uchiyama, T., Kano, R., Degawa, T. and Takamure, K., “Flow past two cylinders arranged in tandem within a microbubble plume”, Proc. ASME-JSME-KSME Joint Fluids Eng. Conf. 2019, San Francisco, 2019, AJKFluids2019-4971.
(7) Nguyen, V., Degawa, T., Uchiyama, T. and Takamure, K. , "Numerical simulation of bubbly flow around a cylinder by semi-Lagrangian Lagrangian method", Int. J. Numer. Methods for Heat & Fluid Flow, Vol.29, (2019), pp.4660-4683.
https://doi.org/10.1108/HFF-03-2019-0227.
(8) Nguyen, V. L., Degawa, T. and Uchiyama, T., "Numerical simulation of annular bubble plume by vortex in cell method", Int. J. Numer. Methods for Heat & Fluid Flow, Vol. 29, (2019), pp. 1103-1131. https://doi.org/10.1108/HFF-03-2018-0094.
更新日:2019.12.24