ふしぎな流れの世界に触れてみよう
(流れのふしぎ科学教室2018 in 大阪)
石綿良三,根本光正(神奈川工科大学)
水や空気は身近なものであるが,実験してみると予想と逆のことが起こったりしてふしぎな題材が多い.子供から大人までを対象に,そのような流体を利用したいろいろな実験や工作を体験して科学への興味と理解を深めてもらうことを目的に「流れのふしぎ科学教室」を年次大会講演会の市民フォーラムの一つとして続けている.今年は9月9日に関西大学を会場として,小中学生を対象とした「楽しい流れの実験教室」と理科教員,科学ボランティア,大学生等を対象とした「研修会」の2部構成で実施した.
第1部 楽しい流れの実験教室(小中学生対象)
同名のサイトが流体工学部門ホームページにあり,実験動画を公開している.身近なものを使って簡単な流れの実験をしてみようというもので,毎年約3万アクセスがある.
参加者は小中学生30名と付き添いの家族17名でにぎやかであった.つかみは,発泡スチロール製のボールをドライヤーで真上に上げ,次に斜めに浮かせるという実験で,私は手を出さずに子供さんにやってもらった.ボールがななめ上方に浮くと,会場全体が驚いていたが,当の本人が一番驚いていたようである.他には,「ボールの封じ込め」,「平板翼」,「あふれ出ない水」など.工作は「雪だるま」,全員にやってもらう体験実験は「ななめに浮く風船」,「ボールを筒から取り出す」,「浮沈子」,「トルネード」などもりだくさんで驚きの連続であった(いずれの題材も次のURLで動画公開中.YouTubeでは累計15万再生を超えている).終了時には万雷の拍手をいただき,皆さんに満足いただけたようである.
参考:「楽しい流れの実験教室」http://www.jsme-fed.org/experiment/index.html
第2部 教員と科学ボランティアのための研修会(教員,科学ボランティアのほか学生等を対象)
空気や水に代表される流体は身近な存在であるが,驚くような現象が起こることから科学実験でよく取り上げられているが,原理の誤認識も多い.科学入門書の著者でも誤認識している例が散見され,間違いが広く拡散していると考えている.
誤認識の代表例の一つは,「ベルヌーイの定理」を「流れが速い所では圧力が低い」ことであると誤解しているケースである.エネルギーの損失や供給がなく,同一の流線上の2点で成り立つエネルギー保存則であるということが理解できていないもので,かなり多くの人が誤認識しているようである.詳細は楽しい流れの実験教室の2017年10月公開「ベルヌーイの定理」に示した.
参考:「ベルヌーイの定理」http://www.jsme-fed.org/experiment/2017_10/005.html
このような背景から,科学を教育,普及している理科教員等を対象とした研修会を,毎年8月の流れのふしぎ展(日本科学未来館)と年次大会講演会で続けている.今回は,高専と中学校の教員や学生の7名の参加があった.
題材は,前項の実験教室で行ったものに加えて,「水と水あめ(粘性)」,「大小の風船(空気の質量)」,「自由渦と強制渦」,「水の加速」,「マグナスパイプ(マグナス効果)」など10数項目に及び,間違えやすい事例についてはその矛盾を指摘し,受講者からは満足の声が聞かれた.