えっ!! どうして!? なぜ?? 「第11回流れのふしぎ展」実施報告
神奈川工科大学 根本光正
<はじめに>
東京・台場にある日本科学未来館で,8月27日(土)と28日(日)の2日間にわたって,第11回流れのふしぎ展が開催された.ウインドカーなどのアイデアを募るコンテストに加えて,昨年からは体験型展示,工作教室,シンポジウムをあわせて行い,より多くの方々が参加できる内容となった.これを機に名称を「流れのふしぎ展」(旧:流れと遊ぶアイデアコンテスト)とし,この2日間でおよそ4,400名もの方が来訪(体験)され,たいへん盛況であった.
<企画:展示コーナー> 展示コーナーは,15種類の体験型展示との2講座の工作教室からなり,「えっ!! どうして!?」の体験から,その流れのふしぎ「なぜ??」のなぞ解きをスタッフの解説とともに楽しんでもらうことがねらいでした.体験型展示で特に人気のあったのは,ボールの散歩(図1,発泡スチロール球をドライヤーで上から風を当ててあやつり,凸凹や湾曲した道をなどがあるコースを進める),雨滴(図2,小さな水滴を下から吹き上げる風の中に浮遊させ,空から落ちる雨粒のそのユニークな形を再現),コーナーキック(図3,サッカーボールに見立てた発泡スチロール球を,けり出す装置を使って回転をかけて直接ゴールをねらう)であった.また30分間隔で開催された工作教室では,プラコップ転がし(図4,2つのプラコップの底どうしをセロテープで留めて作った“コロ”に向けて,ストローからの息だけで手前に転がす),雪だるま飛ばし(串に緩めに刺さった発泡スチロールの小球を,ストローからの息だけで抜き飛ばす),浮沈子(図5,水の入ったペットボトル内を浮き沈みするおもちゃ)は常に満席で,それ以外のどのコーナーでも来訪者が途切れることはほとんどなく,スタッフは休憩を取れないほどであった. |
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図1 ボールの散歩 |
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図2 雨滴 |
図3 コーナーキック |
図4 プラコップ転がし&雪だるま飛ばし |
図5 浮沈子 |
<企画:シンポジウム> シンポジウム「流体力学って,おもしろい」では,「水泳の科学」(図6,伊藤慎一郎先生,防衛大学校),「流れのふしぎ」(石綿良三先生,神奈川工科大学),「流れを見る,流れをはかる」(石間経章先生,群馬大学)の3つのテーマで話があった.参加者は引率で来訪された親御さん世代が目立ったようだが,「自由形で少しでも速くするには,体を交互にロールしながら泳ぐのがコツ」など,すぐにでも役立つような内容に興味深そうに聴講していたのが印象的であった. |
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図6 「水泳の科学」の話しをする 伊藤慎一郎先生 |
<企画:コンテスト>
コンテストとしては,まずウインドカー(風のエネルギーで風上に走る模型自動車)・レーシング部門で,小学生の部16台,中学生の部11台,高校生の部15台がそれぞれトーナメントを行った.白熱した競技のなか,優勝はそれぞれ,川村英彰君(新宿区立落合第三小学校5年,作品:図7),森田亜季枝さん(八潮市立八潮中学校3年,作品:図8),石塚 亘君(茨城県立土浦工業高校3年,作品:図9)であった.
また今回から新たに設けられたウインドカー・障害物部門では,ジュニアの部(高校生以下)19台,一般の部(大学生以上)21台が,走路に並べられた3種類の障害物走破とゴールを目指した.ジュニアの部では篠原 潤君(山梨県立韮崎工業高校)の腕を回転させながら進む車輪レスの作品(図10),一般の部では大森 崇君他2名(湘南工科大学)の障害物への車輪の追従性に工夫を凝らした作品(図11)が,それぞれアイデア大賞を受賞した.また特別賞を受賞した小林義行さん(高校教員)は,昨年度ウインドカー・アイデア部門の一般の部グランドチャンピオン,ウインドシップ(風のエネルギーで風上に走る船)においても過去2回アイデア大賞を受賞しており,半数以上の作品が障害物途中で立ち往生してしまう中,まるで離陸直前の飛行機が通り抜けるかの様なスムース走り(図12)に会場がどよめいた.
図7 川村英彰君の作品 |
図8 森田亜季枝さんの作品 |
図9 石塚 亘君の作品 |
図10 篠原 潤君の作品 |
図11 大森 崇君らの作品 |
図12 走行中の小林義行氏の作品 |
<最後に>
来訪者の多くは小中学生連れのご家族であり,次世代を担う子供たちに「流体力学っておもしろい!」と思ってもらえたのであれば幸いである.当日は,記念品として流体工学部門企画の「流れのふしぎ」(講談社ブルーバックス)他を配布した.これを通じてさらに流体力学への理解が深まればと願っている.今回は,科学研究費研究成果公開促進費,日本機械学会機械工学振興事業資金,流体工学部門特定事業資金,神奈川工科大学からそれぞれ補助をいただくとともに,日本科学未来館から会場・設営費等の助成・協力をいただいた.また,多くの機関・団体からも後援・協賛をいただいた.準備と会期中の運営に当たっては委員と学生・高校生スタッフ約48名もの献身的な協力に支えられた.末筆ながら,これらの助成,ご協力に深く感謝の意をここに表します.