えっ!! どうして!? なぜ?? 「第13回流れのふしぎ展」実施報告
神奈川工科大学 根本光正
<はじめに> 横浜・桜木町にある神奈川県立青少年センターで,8月11日(土)と12日(日)の2日間にわたって,第13回流れのふしぎ展が開催された.青少年の理科離れが問われて久しく,身のまわりの自然現象やモノづくりへの関心が薄れている昨今,「流れのふしぎから,未来が見えてくる」と題して,空気や水の流れを利用したおもちゃや遊びを紹介した体験型展示や工作教室,流れに関する最先端の研究をわかりやすく紹介したシンポジウム,風のエネルギーで風上に走る模型自動車の速さや障害物を乗り越えて進むことのアイデアを競うウインドカーコンテストなどが開催され,この2日間でおよそ1,500名の来訪者があり盛況であった(図1). <企画:展示コーナー> 展示コーナーは10種類の体験型展示と工作教室からなり,「えっ!! どうして!?」の体験から,その流れのふしぎ「なぜ??」のなぞ解きを,会場のスタッフの説明とともに来訪者に楽しんでもらうものである.体験型展示で人気のあったのは,モグラのジャンプ(図2,頭の形状が丸や四角のモグラに見立てた物体を,送風機で浮かせる),ボールの散歩(図3,発泡スチロール球をドライヤーで上から風を当ててあやつり,凸凹や湾曲した道などがあるコースを進める),雨滴(図4,小さな水滴を下から吹き上げる風の中に浮遊させ,空から落ちる雨粒のそのユニークな形を再現),丸と四角(図5,送風機で風を当てた際,円柱と角柱の動きの違いをみる),コーナーキック(図6,サッカーボールに見立てた発泡スチロール球を,けり出す装置を使って回転をかけて直接ゴールをねらう)であった.また2日間で合計20回開催された工作教室(図7)では,浮沈子(水の入った容器内を浮き沈みするおもちゃ),雪だるま飛ばし(串に緩めに刺さった発泡スチロールの小球を,ストローからの息だけで抜き飛ばす),プラコップ転がし(2つのプラコップの底どうしをセロテープで留めて作った“コロ”に向けて,ストローからの息だけで手前に転がす)など意外な動きをするおもちゃ作りを楽しんでもらい,毎回ほぼ満席だった.他のコーナーでも親子いっしょに,時に夢中になって楽しんでいたようすが印象的であった(図8). |
図1 第13回流れのふしぎ展の会場の様子 図2 モグラのどこに空気流を当てればいい? モグラのジャンプ 図3 うまく渡りきれるか? ボールの散歩 |
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<企画:シンポジウム> シンポジウムでは,「ジェット水流を吹く海の生き物たち」(清野聡子先生,東京大学),「人工衛星の手足,スラスタエンジンのふしぎ」(長田泰一氏,宇宙航空研究開発機構),「流れのふしぎ」(石綿良三先生,神奈川工科大学)と題して,3つのテーマで話があった.ほとんどが親子同伴での参加で,清野先生の超音波画像診断装置によるタコの体内での海水の流れの観測の実演やイカとの違い(図9),長田氏の地上と宇宙空間の違いや衛星のスラスタエンジンの実物展示や役割(図10),石綿先生の手品のような空気のふしぎな流れの実演とそのタネあかし(図11)のそれぞれのお話しに,参加者は興味深そうに聴講していた.講演終了後も,生き物の生態や宇宙のふしぎに興味津々の子供たち達に,講演者は質問攻めにあっていたのが大変印象的であった(図12,図13). |
図9 超音波画像診断装置で,たこの推進法の 話しをする清野聡子先生 |
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<企画:コンテスト> このコンテストは,風のエネルギーだけで風上に走る模型自動車(ウインドカー)の,早さや障害物を乗り越えて進むことのアイデアを競うもので,小学生から一般まで83グループの参加を得た.はじめに行われた距離3mをいかに速く走るかを競うウインドカー・レーシング部門(図14)では,小学生の部と中高生の部に分かれて勝ち抜き戦でトーナメントの頂点を目指した.白熱した競技のなか優勝は,小学生の部は小林薫乃さん(土浦市立真鍋小学校6年)の作品(図15,自己ベストタイム4.25秒),中高生の部では澁谷雅芳君(茨城県立土浦工業高校3年)の作品(図16,自己ベストタイム3.29秒)であった.そのほかに準優勝,第3位ならびに特別賞の表彰がなされた. ウインドカー・障害物部門では中学生以下のジュニアの部と高校生・一般の部が行われ,走路に並べられた3種類の障害物の走破とゴールを目指した.ジュニアの部では川村英彰君(小石川中等教育学校1年)の作品(図17),高校生・一般の部では長岡 卓君(秋田県立秋田工業高校)の堅実な走りにくわえて片輪走行でのゴールで会場を沸かせた作品(図18)が,それぞれアイデア大賞を受賞した.川村英彰君の作品は,サッカーボールをイメージした球状の樹脂製ワイヤーフレームを車輪として回転させる方式で,半数以上の作品が障害物途中で立ち往生してしまう中,その障害物をものともしないスムースな走りに会場がどよめいた.そのほかにアイデア賞,ベストデザイン賞,ユーモア賞ならびに特別賞の表彰がなされた. <最後に> 来訪者の多くは小中学生連れのご家族であり,身近にある空気や水などの流れを利用した遊びや不思議な現象に触れて,これらの原理がどのように身近な技術から最先端技術までに応用されているか,次世代を担う子供たちに「流体力学って,おもしろい!」と思ってもらえたのであれば幸いである. 開催に際しては,文部科学省科学研究費研究成果公開促進費,流体工学部門特定事業資金,日本機械学会機械工学振興事業資金,神奈川工科大学からそれぞれ助成金をいただくとともに,神奈川県立青少年センターには共催ならびに会場提供をはじめ設営等の全面的な協力をいただいた.さらに,多くの機関・団体から後援・協賛をいただいた.また,日本機械学会2007年度神奈川ブロック企画「小中高生のための見学会:第13回流れのふしぎ展見学」も同時開催された. 末筆ながら,開催までの準備と会期中の運営に当たっては,委員と学生ならびに一般ボランティアの計52名もの献身的な協力に支えられたことと,多大なる助成,ご協力に深く感謝の意を表します. |
図14 レーシング部門・小学生の部で 作品のアピールをする参加者 図15 レーシング部門・小学生の部で優勝した 小林薫乃さんの作品 図16 レーシング部門・中高生の部で優勝した 澁谷雅芳君の作品 図17 障害物部門・ジュニアの部で アイデア大賞を授賞した川村英彰君の作品 図18 障害物部門・高校生・一般の部で アイデア大賞を授賞した長岡 卓君の作品 |