「第17回流れのふしぎ展」実施報告
神奈川工科大学 山岸陽一
8月13、14日、東京江東区の日本科学未来館で日本機械学会主催、神奈川工科大学共催「第17回流れのふしぎ展」を開催した.連日34℃の猛暑にも関わらず、2日間で合計約2200人(1日目1000人、2日目1200人)の来場があった.この企画は、「流れのふしぎから未来がみえてくる」をテーマに、体験型展示、工作教室、科学教室、ウインドカーコンテストや教員向けの研修会に参加して、子供から大人まで、そのふしぎな世界を見て、さわって、話しを聞いて「えっ!?」と驚くような発見をして、遊びながら、いっしょにそのなぞを解き明かそうというものである.体験型展示会場では、楽しく遊ぶ多くの幼稚園生や小学生.工作教室会場では170名もの参加者.ウインドカーコンテスト会場では奇抜なアイデアを取り入れたウインドカーなど99台のエントリーがあり大盛況であった.
図1 研修会で説明する石綿先生 |
<研修会>
研修会では小・中・高校教員、科学ボランティア、教職課程学生等を対象として流れを利用した教材作りを行い、原理や応用について解説が行われた.解説ごとに実験風景をカメラに収めるなど熱心な質疑応答があった.
<体験型展示>
空気や水の流れを利用したおもちゃや遊びを通して、流れのふしぎを実際に体験する.ドライヤーの風でボールをあやつり障害物をクリアしていく「ボールの散歩」、ボールの回転を利用して直接ゴールをねらう「コーナーキック」、終端速度と同じ速さで下から気流を吹かし、水滴が空中に浮かんでふしぎな動きをする「雨滴」、カップを回転させてフワッと飛ばす「マグナスカップ」、回転しないようにボールを飛ばしボールの後ろの不規則な渦でボールに変化が起こる「無回転シュート」など10種類のブースがある.各ブースでは、スタッフによる遊び方の説明やパネルを使って現象の解説が行われた.
終了時間を過ぎても、楽しく遊ぶ多くの幼稚園生、小学生や中学生の姿がみられた.
図2 ボールの散歩に親子で参加 | 図3 ボールの封じ込めに興味津々 |
<工作教室>
自分で簡単なおもちゃを作って、空気や水の流れの性質を学ぶことができる.工作教室は9回開催され、ストローで吹いてあやつる発泡スチロール製の「雪だるま」、ふしぎな動きをする「マグナスカップ」や「浮沈子」を作って遊んだ.小学生・幼稚園生をはじめ付き添いのご父母も楽しまれていた.
図4 工作教室全景 | 図5 雪だるま作りに一生懸命 |
図6 ブラックホールについて説明する栗田先生 |
<科学教室>
科学教室では、「ブラックホールと宇宙のふしぎ」(栗田泰生先生、神奈川工科大学)、「サッカーブレ球を蹴ろう」(浅井 武先生、筑波大学)、「流れが磨いた自動車のカタチ」(高木通俊先生、元日産自動車)と題して、3つの興味ある講演が行われ、会場は、ほぼ満席の220名の聴講者となった.先生方のお話は、大変わかりやすく、小さいお子さんが集中して聞いている姿が印象的であった.
図7 サッカーブレ球について説明する浅井先生 | 図8 自動車のカタチについて説明する高木先生 |
<ウインドカーコンテスト>
コンテストは、風のエネルギーで風上に走るウインドカーを競争させ、2台並走によるトーナメント方式で速度を競うレーシング部門と、坂道型の障害物を2つ乗り越えて進むウインドカーで速度を競う片道走行とアイデアを競う往復走行の障害物部門がある.どちらの部門も、コース長さ:3m、走路内風速:約3m/sであり、ウインドカーは完全に静止した状態からスタートする規則である.以下の2部門、7クラスに分けて実施した.
- レーシング部門:小学生の部(12組がエントリー)、中学生の部(21組がエントリー)、
高校生の部(21組がエントリー) - 障害物部門:
・片道走行:ジュニアの部(7組がエントリー)、高校生・一般の部(21組がエントリー)
・往復走行:ジュニアの部(3組がエントリー)、高校生・一般の部(14組がエントリー)
図9 可愛らしいウインドカーも参戦 | 図10 障害物往復走行に参加したウインドカー 2輪車タイプで登場 (特別賞受賞) |
レーシング部門小学生の部では、イラストを描いたり、人形のドライバーが乗ったウインドカーが登場して接戦の末、優勝者は昨年に引き続いて木村朱里さん(図11)、中学生の部では、直進するように帆を張ったり、プロペラを2つけたウインドカーが登場した結果、優勝者は伊原玲央奈さん(図12)、高校生の部では、アルミフレームで軽量化を図り、前輪1つ、後輪2つのウインドカーを製作して、3.43秒でゴールした茨木県立中央高校の小澤圭祐君(図13)が優勝した.
図11 レーシング部門小学生の部 受賞者の皆さん |
図12 レーシング部門中学生の部 受賞者の皆さん |
図13 レーシング部門高校生の部 受賞者の皆さん |
障害物部門の片道走行ジュニアの部では、車体が側壁に衝突しないように工夫した内山玄君(図14)が優勝し、高校生・一般の部では、後半からスピードが増すように工夫をした秋田工業高校の高橋宏樹君(図15)が5.28秒の好タイムで優勝した.
図14 障害物部門片道走行ジュニアの部 受賞者の皆さん |
図15 障害物部門片道走行高校生・一般の部 受賞者の皆さん |
障害物部門の往復走行競技は障害物をすべて乗り越えてゴールした後、再び障害物を乗り越えてスタートラインに戻る往復型のウインドカーのアイデアを競うものである。難関な競技であるが、ジュニアの部では、復路で抵抗板が立ち上るアイデアを取り入れた木村成孝君(図16)が日本風力エネルギー協会賞を受賞した.高校生・一般の部では、ユニークなデザインが多かった大学生は残念ながら完走がなく来年に期待されたが、その中で高校生が健闘して、プロペラを3重につけたウインドカーで完走した山梨県立韮崎工業高校の三橋東奈さん(図17)が日本風力エネルギー協会賞に輝いた。 なお、優勝以外にも、レーシング部門と障害物部門の片道走行においては、準優勝、第3位、特別賞が併せて選出され、往復走行ではアイデア賞、ユーモア賞と特別賞も選出された。
図16 障害物部門往復走行ジュニアの部 受賞者の皆さん |
図17 障害物部門往復走行高校生・一般の部 受賞者の皆さん |
<最後に>
開催に際しては、日本機械学会流体工学部門特定事業資金、日本機械学会機械工学振興事業資金、神奈川工科大学からそれぞれ助成金を頂くとともに、多くの機関・団体から後援・協賛を頂いた.また、開催までの準備と会期中の運営に当たっては、大学教職員(神奈川工科大学、群馬大学、東京工業大学、北九州工業高専)の委員11名、学生(神奈川工科大学)41名、一般ボランティア16名の献身的な協力に支えられた.これら、多大なる助成とご協力に深く感謝の意を表す.