第22回流れのふしぎ展報告
香川高専 機械工学科 上代良文
平成28年8月11日(木),12日(金),日本科学未来館にて日本機械学会流体工学部門主催,神奈川工科大学共催「第22回流れのふしぎ展」を開催いたしました.2日間で約2700人もの方々の来場があり,例年に勝る大盛会となりました.「流れのふしぎから未来がみえてくる」をテーマとして,(1)体験型展示,(2)実験教室,(3)科学講演,(4)教員と科学ボランティアのための研修会を実施しました.身の回りの流れに関するふしぎな世界を見て,さわって,遊ぶことで,子供から大人まで「えっ!?」と驚くような発見をして,そのなぞを解き明かそうというものです.AR技術(Augmented Reality,拡張現実)を取り入れ,スタッフTシャツや展示パネルをスマートフォンやタブレットのアプリでスキャンすると,記念撮影や展示物の詳細な説明を楽しむことができました.場所柄,外国人と思われるお客様も目立ち,スタッフはできる限りのおもてなしに努めました.
(1)体験型展示(参加自由)
12種類の空気や水の流れを利用したおもちゃや遊びの展示を,スタンプラリー形式で実施しました.多くの小中学生などでブースは賑わい,順番待ちができるほどの大盛況ぶりでした.子供たちが体験する隣では,スタッフの説明に熱心に聞き入る親御さんの姿が続いていました.エアポンプを利用してイルカが口で作るようなリングを水中で作る「空気の輪」,ドライヤーの風でボールをあやつり障害物をクリアしていく「ボールの散歩」,ボールの回転を利用して直接ゴールをねらう「コーナーキック」,終端速度と同じ速さで下から気流を吹かし,水滴が空中に浮かんでふしぎな動きをする「雨滴」,カップを回転させてフワッと飛ばす「マグナスカップ」,回転しないようにボールを飛ばしボールの後ろの不規則な渦でボールに変化が起こる「無回転シュート」,AR技術とコンピュータシミュレーションを融合させ目の前に水槽があるかのように表示する「水槽の波」など,直接触って感じて楽しめる実験体験型ブースとなっています.各ブースでは,スタッフによる遊び方の説明やパネルを使って現象の解説が行われました.高校生以上の来場者の中には原理をより詳しく知りたい方も多く,大学や高専で流体力学の教鞭をとるスタッフが対応させて頂きました.終了時間ギリギリまで,楽しく遊ぶ多くの幼稚園生・小中学生,童心に返って癒される大人の方々の姿がみられました.
【体験型展示の様子】
【空気の輪】
【竜巻】
【水槽の波】
【無回転シュート】
(2)実験教室(小中学生対象,当日先着受付順)
ストローで吹いてあやつる発泡スチロール製の「雪だるま」のおもちゃを参加者が作成し流れのふしぎを体験する実験教室を開きました.作製したおもちゃはご家庭や学校でも実験できるように授業後お持ち帰り頂きました.小さなお子様は保護者の方の助けを借りて工作と実験とを楽しみました.これが飛行機が空を飛ぶ原理と関連していると聞いて,参加者はびっくりした様子でした.実験教室には181名もの参加者があり大盛況となりました.参考動画として,日本機械学会ホームページで公開されている「楽しい流れの実験教室(http://www.jsme-fed.org/experiment/index.html)」が紹介されました.
【ストローで吹いてあやつる雪だるま作成の様子】
(3)科学講演(聴講自由)
科学講演では,「小さな泡の大きなひみつ!?」(金子 暁子先生,筑波大学),「葉っぱは虫に食べられても枯れないのはなんで!?」(窪田 佳寛先生,東洋大学)と題して,2つの興味深い講演が行われ,会場は大人だけでなく多くの小中学生を含む約140名の聴講者がありました.いろいろな泡が,医療や洗浄などに役立つことのほか,シャンパンの泡が香り成分を液面まで運んでくれるといった話題や,泡の挙動の実験とシミュレーションまでの幅の広いお話がありました.葉脈のネットワークが網の目状であるために,葉脈一本でも水を吸える葉っぱの生命力にみなさんとても驚かれていました.これを道路網,電気・ガス・水道,人のネットワークにたとえたお話も大変興味深いものでした.お二方のクイズを交えた,わかりやすく噛み砕いたお話に,小さなお子様も熱心に聞き入っていました.
【小さな泡の大きなひみつ!?】
【葉っぱは虫に食べられても枯れないのはなんで!?】
(4)教員と科学ボランティアのための研修会(事前申込み)
研修会では,小・中・高校教員,科学ボランティア,教職課程学生等を対象とした流れに関わる原理や応用例について,石綿良三教授(神奈川工科大学)を講師として研修会が開かれました.たくさんの実験教材が配布され,その教材を基にやさしい解説を交えながら,身の回りの流れに関わる現象のホントorウソ!?が紹介されました.日ごろは学校や科学教室等で講師を勤める多くの参加者も,この教材は面白い!などと目を輝かせていらっしゃいました.教材作成のための材料の入手方法や下準備の要点などの貴重なノウハウも提供され,研修時間があっという間に過ぎました.26名の参加者との熱心な質疑応答を通じて,原理を正しく説明することの重要性を相互に再認識しました.
【空気の質量】
<最後に>
開催に際して,日本機械学会流体工学部門特定事業資金,日本機械学会機械工学振興事業資金,神奈川工科大学からそれぞれ助成金を頂くとともに,多くの機関・団体から後援・協賛を頂きました.また,開催までの準備と会期中の運営に当たっては,大学教員(神奈川工科大学,群馬大学,東洋大学,東京都市大学,筑波大学,香川高専)の12名,学生(神奈川工科大学,東洋大学,京都大学)53名,卒業生(神奈川工科大学)5名,一般ボランティア9名,総員79名の献身的な協力に支えられました.これら,多大なる助成とご協力に深く感謝の意を表します.
【スタッフ集合写真】