第24回流れのふしぎ展 開催報告
神奈川工科大学 情報メディア学科 服部元史
平成30年8月11日(土)と12日(日)に日本科学未来館にて,日本機械学会流体工学部門主催と神奈川工科大学共催により「第24回流れのふしぎ展」を開催いたしました.この2日間で約3,100人もの方々による来場があり,例年にまさる大盛会となりました.「流れのふしぎから未来がみえてくる」をテーマとして,(A)体験型展示,(B)「楽しい流れの実験教室」,(C)科学講演,(D)「教員と科学ボランティアのための研修会」を実施しました.身の回りにある空気や水の流れに関して「なぜだろう?」とふしぎに感じる種々の現象の謎を解き明かすべく,見たり触ったり動かしたり遊んだりしながらの体験を通じて納得いただく趣旨で実施いたしました.
(A)体験型展示(参加自由)
空気や水の流れを利用した実験装置を動かしたり触ったり見たりしながら体験していただく12種類の展示を,スタンプラリー形式で実施しました.多くの小中学生などでブースは賑わい,順番待ちができるほどの大盛況ぶりでした.子供たちが体験する隣では,スタッフの説明に熱心に聞き入る親御さんの姿が続いていました.
12種類の展示の内容を以下に記します.1)ドライヤーの風でボールをあやつり障害物をクリアしていく「ボールの散歩」,2)ボールの回転を利用して直接ゴールをねらう「コーナーキック」,3)ラッパから噴き出す空気の速い流れでボールを捉える「ボールの封じ込め」,4)空気の粘性に妨げられながら筒の中をゆっくりと降りて行く「ただよう円板」,5)カップを回転させてフワッと飛ばす「マグナスカップ」,6)プロペラにあたる風に向かって進んで行く「ウインドカー」,7)ボールの後ろの不規則な渦でボールの動きに変化を起こす「無回転シュート」,8)流れの外側と内側の圧力差や遠心力による「曲がる川の流れ」,9)風船から噴き出す空気の流れの速さで「天井に貼りつく風船」,10)終端速度と同じ速さで下から気流を吹かすことで水滴がふしぎな動きをする「空中に浮く雨滴」,11)空気の流れを利用した種々の競技に挑戦する「空力オリンピック」,12)目の前に水槽で水が波打っているかのようにAR描画する「水槽の波」でした.
これら12種類の実験体験型ブースでは,スタッフによる遊び方の説明やパネルを使って現象の解説が行われました.高校生以上の来場者の中には原理をより詳しく知りたい方も多く,大学や高専で流体力学の教鞭をとるスタッフが対応させていただきました.終了時間ギリギリまで,楽しく遊ぶ多くの幼稚園生・小中学生,童心に返って癒される大人の方々の姿がみられました.
(B)楽しい流れの実験教室(小中学生対象,当日先着受付順)
ストローで吹いてあやつる発泡スチロール製の「雪だるま」のおもちゃを参加者が作成しで,空気の流れのふしぎを体験する実験教室を開きました.作製したおもちゃはご家庭や学校でも実験できるように授業後お持ち帰りいただきました.小さなお子様は保護者の方の助けを借りて工作と実験とを楽しみました.これが飛行機が空を飛ぶ原理と関連していると聞いて,参加者はびっくりした様子でした.実験教室には119名もの参加者があり大盛況となりました.参考動画として,日本機械学会ホームページで公開されている「楽しい流れの実験教室が紹介されました.
http://www.jsme-fed.org/experiment/index.html
(C)科学講演(聴講自由)
科学講演では,「見てみよう!肺の中の流れ」(平原裕行教授,埼玉大学),「流れのふしぎ」(石綿良三教授,神奈川工科大学)と題して,2つの興味深い講演が行われ,会場は大人だけでなく多くの小中学生を含む約100名の聴講者がありました.
平原先生の講演では,大昔の恐竜などまで含む地上の動物が呼吸しながら生きていけるために進化してきた肺のふしぎを空気の流れの観点から解説いただきました.
石綿先生からは,空気の流れに関する種々の実験について豊かなジョークを交えて解説をしながら,有志の小学生達に実演いただきました.
両先生によるわかりやい解説と真に迫ったジョークに,子供も大人も聞き入りながら,楽しい時間が過ぎていきました.
(D)教員と科学ボランティアのための研修会(事前申込み)
小・中・高校教員,科学ボランティア,教職課程学生等を対象として,流れに関わる原理や応用例について,石綿良三教授(神奈川工科大学)を講師とする研修会が開かれました.たくさんの実験教材が配布され,その教材を基にやさしい解説を交えながら,身の回りの流れに関わる現象のホントorウソ!?が紹介されました.日ごろは学校や科学教室等で講師を勤める多くの参加者も,この教材は面白い!などと目を輝かせていらっしゃいました.教材作製のための材料の入手方法や下準備の要点などの貴重なノウハウも提供され,研修時間があっという間に過ぎました.21名の参加者との熱心な質疑応答を通じて,原理を正しく説明することの重要性を相互に再認識しました.
<最後に>
開催に際して,日本機械学会流体工学部門特定事業資金と日本機械学会機械工学振興事業資金,神奈川工科大学から助成金をいただくとともに,多くの機関・団体から後援・協賛をいただきました.また,開催までの準備と会期中の運営に当たっては,大学・高専・高校教員と企業技術者(神奈川工科大学,群馬大学,東北大学,東洋大学,近畿大学附属高専,東京都市大学,米子工業高専,千代田化工建設など)18名,学生(神奈川工科大学,京都薬科大学,高校生)37名,卒業生(神奈川工科大学)10名,一般ボランティア4名,総員69名の献身的な協力に支えられました.これら,多大なる助成とご協力に深く感謝の意を表します.