Nano powder transportation by combining plasma actuation and electrostatic mixing in a tube
高奈 秀匡 東北大学流体科学研究所 |
中川路 周作 元東北大学大学院工学研究科 |
上原 聡司 東北大学流体科学研究所 |
西山 秀哉 東北大学流体科学研究所 |
Hidemasa Takana*1, Shusaku Nakakawaji*2, Satoshi Uehara*1 and Hideya Nishiyama*1 |
1. はじめに
近年,粉体プロセス業界や食品,製薬産業における気流による細管微粒子輸送では,微粒子輸送量の時間的変動や微粒子付着による細管内閉塞が問題となっており,原料微粒子の安定な供給が強く要請されている.また,PM2.5による健康被害から汚染微粒子の効率的捕集と表面浄化法の確立が求められている.
以上のような背景により,著者らは革新的な微粒子の搬送・浄化方法として,プラズマアクチュエータチューブを提案し,その開発を進めてきた(1)-(3).本研究で提案するプラズマアクチュエータチューブは管内壁上に誘電体バリア放電(DBD)発生機構(4)を有し,DBDによる誘起流(プラズマアクチュエータ効果(5)(6))および放電によって帯電した微粒子に作用する静電気力により,微粒子が撹拌・搬送される.本方式では,電圧印加時に管内に誘起流が生じるため,管内に分散したり堆積している微粒子を搬送することができる.また,静電気力により微粒子が管内で効率的に撹拌されるため,微粒子の壁面付着が抑制され,従来懸念されている微粒子堆積付着による管の閉塞を回避できる.さらに,空気中での放電時には管内にオゾンやOHラジカルなどの強酸化力を有する化学種が発生するため,これらの高活性化学種による汚染微粒子の表面浄化(7)や微粒子の表面改質が期待される(8)(9).
本研究では,低電力で管内旋回流を発生させることができるプラズマアクチュエータチューブを独自に開発し,作動条件や電極螺旋角による3次元管内微粒子流動構造およびプラズマの可視化, 消費電力, 流量特性,プラズマアクチュエータ駆動力,微粒子帯電特性, オゾン濃度分布,さらにはナノ粒子輸送割合を相互に関連づけて実験的に明らかにした.
Fig. 1 Cross-sectional view of the developed DBD plasma tube.
2. プラズマアクチュエータチューブの概要
本研究で提案したプラズマアクチュエータチューブによる微粒子搬送方法では,図1に示すチューブ断面図から分かるように,誘電体の円管内外壁に螺旋状に巻いた一対の電極に正弦波の交流電圧を印加し,管内壁近傍に誘電体バリア放電を発生させ,誘起された旋回流や帯電微粒子に作用する静電気力により管内のナノ粒子を撹拌・輸送するものである.また,本装置では,空気を作動流体とした場合では,放電により生成されたオゾンにより,搬送と同時にナノ粒子表面や管内壁を浄化することが可能となる.
3.実験結果と考察
図2にStereo PIV法を用いて計測した,電極角度45°のチューブ出口から2-3 mm下流における3次元平均速度ベクトルおよび軸方向速度分布を電圧周波数および印加電圧に対してそれぞれ示す.プラズマアクチュエータチューブによる誘起流は半径方向の速度成分が非常に小さく,軸方向成分と周方向成分を有する旋回流であり,チューブ出口から見て右回りに旋回していることが分かる.また,内壁面上の電極領域近傍においてのみ流れが誘起されており,誘起流の軸方向速度は50 cm/s程度である.誘起される旋回流は電圧および周波数により加速される.
図3に誘電極角度に対する誘起流のスワール比を示す.なお,スワール比とは軸方向の流速に対する周方向の流速の比である.誘起流のスワール比は,tan(90°-θ )の値とほぼ一致しており,電極に対して垂直方向に流れが誘起される.これより,電極角度によりスワール比を制御することが可能である.また,スワール比により,微粒子の管内滞在時間を制御させることが可能となるので,微粒子の表面浄化には,微粒子滞在時間を長くするために電極角度を小さくし,一方で,微粒子輸送量を増加させる場合には,電極角度を大きくすればよい.
Fig. 2 Three dimensional time averaged induced flow velocity vectors and axial flow velocity distribution measured by stereo-PIV at 2 mm downstream of the tube outlet for the electrode angle of 45°.
Fig. 3 Correlation between electrode angle and swirl ratio of the discharge induced flow for 16.7 kVpp at 1.0 kHz.
図4に管出口から5 mm上流において測定したオゾン濃度の管半径方向分布を示す.なお,印加電圧および周波数はそれぞれ15.3 kVppおよび1 kHzである.放電により生成されたオゾンは,管内壁近傍において最も濃度が高く,中心に向かい旋回拡散するが,電極螺旋角度を小さくしてスワール比を大きくし,管内での滞在時間を長くすることにより,管断面でのオゾン濃度がより均一になる.
Fig. 4 Radial distribution of ozone concentration at 5 mm upstream from the tube outlet.
図5に周波数1.0 kHzで印加電圧17.0 kV印加した際の平均粒径30 nmのアルミナ微粒子の微粒子搬送の写真を示す.写真は60 fps で撮影されており,あらかじめ管中央に静置した粒子が,誘起流により管出口まで搬送されている様子が観測された.写真では見られないが,管内壁上の露出電極の角部において,帯電微粒子が交流電場により激しく撹拌される.
Fig. 5 Photo of alumina powder transportation by plasma induced internal flow.
Fig. 6 Powder transfer rate for consumption power.
図6に電極角度が60°のプラズマアクチュエータチューブによる分散微粒子の搬送特性を示す.なお,管の長さは100 mmである.単位時間当たりの搬送量は,いずれの周波数に対しても消費電力に対し線形的に増加し,安定的に輸送できる.本実験条件の範囲においては,0.35 Wの消費電力で,最大で2.8 mg/s の搬送量が得られる.
4.おわりに
本研究は,ナノ粒子の高効率搬送と表面浄化の革新的技術の確立を目的として,プラズマアクチュエータチューブを開発し,放電特性や誘起流特性などの基礎特性を定量的に明らかにし,さらに,電極角度や作動条件が基礎特性に与える効果を明らかにした.本研究は,プラズマアクチュエータチューブに誘起される旋回流による細管内微粒子輸送と閉塞抑制および発生オゾンによる微粒子表面や細管内壁洗浄に多大なる寄与するものである.
謝 辞
本研究の一部は,科研費(若手研究(B)22760120,挑戦的萌芽研究 22656044)の助成を受けて行われたものである。また,東北大学流体科学研究所の中嶋智樹技術職員には計測において技術支援を賜った。ここに記して深く謝意を表す。
文 献