流れの読み物

Home > 流れの読み物 > 今この論文/技術/研究開発が熱い! > Performance prediction model of contra-rotating axial flow pump with separate rotational speed of front and rear rotors and its application for energy saving operation

Performance prediction model of contra-rotating axial flow pump with separate rotational speed of front and rear rotors and its application for energy saving operation

張 徳
(株)酉島製作所
(元九州大学)
片山 雄介
早稲田大学
(元九州大学)
渡邉 聡
九州大学
津田 伸一
九州大学
古川 明徳
九州大学
(名誉教授)

1.背景

 ターボ機械に代表される流体機械は,エネルギー生産だけでなく電力を含むエネルギー消費の大部分を占めるため,わずかな性能・効率の向上でもカーボンニュートラルに大きく貢献する.前後段動翼が互いに反転する二重反転形軸流ポンプ(Fig. 1)は,従来の軸流ポンプに比べ,ガイドベーンを必要としないため小形化が可能で,低回転数であるため高吸込性能であるという利点がある[1].さらに,前段動翼と後段動翼の回転数を個別に制御することで,とくに非設計流量運転時に性能を向上させることができる[2].一般にポンプは,様々な需要に応じて設計流量以外の幅広い流量範囲で運転されるため,動翼の回転数制御によるエネルギー消費の大幅な削減が期待される.しかし,そのためには,各運転流量に対して最適な前後段動翼の回転数の組み合わせを見出す必要があり,コストのかかる実験や数値シミュレーションに頼らない高速な性能予測手法の開発が不可欠である.本研究では,このような背景のもと,翼列流れの基本的な物理に基づいた簡易的な性能予測手法を提案し,応用例としてポンプを含む管路系システム全体の効率最大化を実現する最適運転回転数を推定し,モデルの有用性を提示した.


Fig. 1: Contra-rotating axial flow pump.

2.性能予測モデル

 本研究では,まず予測モデルのベースとなるデータの取得のため,通常の設計段階においても実施される前後段各動翼の単一流路に対する低コストの定常RANS(Reynolds-averaged Navier-Stokes)解析を,設計回転数運転に対して実施した.そして,その結果に基づいて,各動翼の入口/出口における半径方向平衡条件,質量保存則,偏差角の経験則,翼列間相互作用,損失モデルなどの流動モデルを考慮することにより,前段動翼と後段動翼のそれぞれに対して高速で効果的な性能予測モデルの構築手法を提案した(Fig. 2).モデリングに関する詳細な情報は原著論文[3]を参照されたい.モデリングの妥当性検証のため,私どもが以前に設計した,実験データも豊富な二重反転形ポンプ動翼[4]を対象に,本手法を用いて性能予測モデルを構築し,回転数制御下での最適な前後段動翼回転数の予測を試みた.予測結果は広い流量範囲にわたり実験結果と定量的によく一致し,本モデルの有効性が確認された.


Fig. 2: Construction of performance prediction model of contra-rotating axial flow model. The performance under rotational speed control of rotors is predicted by three steps each considering the flow models and physics.

3.性能予測モデルの応用:省エネ運転のため最適回転数制御の探索

 次に,性能予測モデルの応用として,吸込み性能の向上を目的に設計したもう一組の二重反転形ポンプ前後段動翼[1]に対して性能予測モデルを構築し,システム効率(入力動力に対する最終出力動力の比)の最大化,すなわち省エネ運転実現のための前後段動翼の最適回転数の組み合わせを,2種類の管路システムに対して探索した.その結果の一例を図3に示す.回転数制御(RSC)と従来のバルブ制御(Valve)の結果を比較すると,回転数制御により,必要な揚程(Fig. 3(b))を満足しながらシステム効率を大幅に向上させうることがわかる(Fig. 3(c)).なお,最適な前後段回転数の組み合わせはFig. 3(a)のとおりであった.

Fig. 3: Example of the application of performance prediction model to predict the optimum rotating speed control against a typical system resistance for energy saving. (a) Optimum rotational speed combination of rotors control, (b) head and pump efficiency and (c) the system efficiencies for rotational speed control (RSC) and valve control (Valve).  

 本研究の成果は,二重反転形軸流ポンプという特定の機械を対象として得られたものであるが,性能予測モデル構築の考え方自体は他のターボ機械にも適用可能であり,高効率運転制御だけでなく,不安定流れの制御・抑制への応用も期待できる.また,配管系や運転制御を事前に考慮するカスタマイズ設計にも適用可能である.

4.おわりに

 本稿は,流体工学部門の英文ジャーナルであるJournal of Fluid Science and Technologyに2020年7月に掲載され[3],2023年度日本機械学会賞(論文)を頂戴した私どもの論文の紹介記事である.日本機械学会賞の受賞は流体機械のような古典的なテーマにこつこつと取り組んできている著者らにとって大変光栄なことであり,今後の研究の遂行にも大変励みになるものであった.この場をお借りして,学会賞にご推薦いただいた流体工学部門の皆様に心より御礼申し上げるとともに,論文内容を紹介する機会をいただいたことにも感謝申し上げたい.

References

[1] Cao, L.-L., Watanabe, S., Momosaki, S., Imanishi, T. and Furukawa, A., Low speed design of rear rotor in contra-rotating axial flow pump, International Journal of Fluid Machinery and Systems, Vol. 6, No. 2 (2013a), pp. 105-112.
[2] Momosaki, S., Usami, S., Watanabe, S., Furukawa, A. and Okuma, K., Experimental study on rotational speed control of contra-rotating axial flow pump, Turbomachinery, Vol. 39, No. 2 (2010a), pp. 119-125 (in Japanese).
[3] Zhang, D., Katayama, Y., Watanabe, S., Tsuda, S. and Furukawa, A., Performance prediction model of contra-rotating axial flow pump with separate rotational speed of front and rear rotors and its application for energy saving operation, Journal of Fluid Science and Technology, Vol. 15 (2020), JFST0015.
[4] Shigemitsu, T., Furukawa, A., Okuma, K. and Watanabe, S., Experimental study on rear rotor design in contra-rotating axial flow pump, Turbomachinery, Vol. 31, No. 2 (2003), pp. 84-90 (in Japanese).
更新日:2024.9.5