No.09-102 講習会「水力機械に発生する非定常現象」の実施報告
早稲田大学 太田 有
2009年10月30日(金)に東京都新宿区の早稲田大学西早稲田キャンパスにおいて,標記の講習会が開催されました.
開催日 :2009年10月30日(金)
会 場 :早稲田大学 西早稲田キャンパス(理工学部)55号館S棟2階第三会議室
東京メトロ 副都心線「西早稲田」駅 3番出口直通[西早稲田駅は各駅停車のみ停車]
JR山手線,西武新宿線「高田馬場」駅より徒歩約15分
会場地図 https://www.waseda.jp/top/access/nishiwaseda-campus
開催趣旨:
流体機械に発生する非定常現象の中で,特にポンプや水車などの水力機械に発生する非定常現象に焦点を当て,実験やCFDを含めた最新の研究成果をこの分野の第一線で活躍されている方々に解説していただく.参加に当たっては水力機械に関してある程度の基礎知識を有し,実務あるいは研究面で実際に非定常現象に取り組んでいる方々を対象とした専門的な内容を含む.当該分野の技術開発に携わっている若手技術者,研究者および大学院生を主な対象としている.
具体的には,ポンプに発生するキャビテーションなどの非定常現象の分類からCFD解析手法,キャビテーション壊食に関する最新の研究成果に加え,ポンプ吸込み渦の非定常挙動や,ポンプ・水車系の非定常数値解析の現状と問題点,更には水力機械の大型化に伴う非定常現象の解析事例に至るまで広範な内容を含む.
題目・講師:
9:20~10:40 | 「ポンプに発生する非定常現象(キャビテーションの分類とキャビテーションサージ,旋回キャビテーション等の解説)」 辻本 良信(大阪大学) |
10:50~12:10 | 「キャビテーションのCFD解析」 能見 基彦(荏原製作所) |
12:10~13:10 | 昼休み |
13:10~14:20 | 「ポンプのキャビテーション損傷」 斉藤 純夫(東京工業高等専門学校) |
14:20~15:30 | 「ポンプ・水車のCFD解析」 宮川 和芳(三菱重工業) |
15:45~16:45 | 「ポンプ吸込水槽に発生する渦のCFD解析」 長原 孝英(日立プラントテクノロジー) |
16:45~17:45 | 「水車の大型化に伴う非定常現象の解析」 井筒 研吾(富士・フォイトハイドロ) |
聴講料:
会員 20,000円,会員外30,000円,学生員7,000円,一般学生10,000円
参加者:43名 (社会人23名,学生20名)
講習会の状況
講習会の様子 (1) | 講習会の様子 (2) |
辻本良信先生 | 能見基彦先生 | 斉藤純夫先生 |
宮川和芳先生 | 長原孝英先生 | 井筒研吾先生 |
アンケート結果(アンケート回収数:33[77%])
講習会参加者について:
アンケートの集計結果からもわかるように,今回の講習会の参加者は20代および30代の若い人が殆どであり,40代が5名,50代も2名の参加があった.60代以上の参加者はなかった.参加者の職業は,企業で研究・開発に従事している方が最も多く,学生の参加も多数認められた.今回の講習会は,初学者が主たる対象ではなく,当該分野において実際に研究・開発に携わっている方々に焦点を絞って,比較的難易度が高い内容であったため,企業の研究・開発を担当されている方が主たる参加者となった.学生,特に大学院生の参加が多かった背景には,開催場所が大学であったことが挙げられる.
「ご自身のご専門は何ですか?」に対する回答例
- 化学機械
- CFD
- 地下タンクの開発設計
- 油圧ポンプのキャビテーション解析,油汚染土壌のオンサイト浄化
- ポンプ・水車の水力設計
- インヂューサポンプの開発・CFD
- 原子炉の熱流動解析
- 攪拌機械
- バルブの設計
- ポンプ機場設計
- 遠心圧縮機の開発,など
参加者の多くは,そのきっかけとして上司や先生・知人の紹介を挙げており,いわゆる口コミでの宣伝が効果的であることがわかる.学会誌の会告記事を見て参加したと答えた方はわずか2名である一方,日本機械学会のWebページ6名,メーリングリスト10名という結果から,電子媒体による勧誘が効果的であることがわかる.
「本講習会に参加した動機をお答え下さい」に対する回答例
- 混相流のCFDについて勉強したかったから.
- 自分自身の研究を深くするため.
- キャビテーションに関する知識を習得するため.
- 業務上の参考知識取得のため.
- 実機におけるキャビテーション現象の知識を得るため.
- 技術士試験のための情報収集.
- 水力機械の知識が空気機械に適用できる可能性があるため,など.
講習会の内容について:
参加費については,高い,やや高いと答えた方が約45%,半数以上の方が妥当であるとの回答であった.日本機械学会の流体工学部門が企画する2日間の講習会の登録料と比較すると,やや高額ではあるが,参加者からの評判は比較的良好であった.使用テキストについては,講師の方々の意志を尊重して,枚数制限に囚われず執筆して頂いたこともあり,概ね良好な回答結果であった.若干悪いと回答した5名の方からのご意見としては,
- パワーポイントのスライドをテキストに入れて欲しい.
- 字が細かく,読めない個所がある.
- 一部の内容が発表と異なっている.
- テキストが講習会の内容を十分に網羅できていない.
などがあった.
内容の理解度については,比較的高度で最先端の内容が含まれていたにも係らず,80%以上の参加者が「かなり理解した」あるいは「概ね理解した」と回答している.
本講習会の満足度についても,約85%の参加者が「非常に満足した」あるいは「概ね満足した」と回答している.
今後参加したい講習会:
参加者に是非参加したい講習会の内容を伺ったところ,以下のような回答が得られた.
- CFD入門(演習付き)
- キャビテーション
- 二相流のCFD
- 空気機械の非定常現象
- 流体機械の騒音・振動,など
まとめ:
今回の講習会は,水力機械の非定常現象に関するやや高度な内容を含むもので,入門的内容ではないため,参加者を勧誘するのは非常に困難であった.部門のメーリングリストを使った電子メールによる会告を,1回だけでなく定期的に繰り返し実施することで参加者の増加は期待できる.また,6名の講師の方に講演をお願いしたが,内容的に考えて1日間の講習会ではかなり時間的に厳しく,参加者にはかなりハードな講習会となった.一つの講演時間を長くすることで,2日間の講習会とするなど,プログラムの編成に改良の余地があると考えられる.
アンケートの回答結果から,内容およびテキストに関しては,概ね満足して頂けた講習会となった.著作権の問題にも関連するが,発表時のパワーポイントのファイルを教材にも入れて欲しいという要望は多く寄せられた.今後の検討課題として頂きたい.
また,少数意見ではあったが,参加申込みおよび聴講料の支払方法が面倒であるとの意見があった.これらの方法を改善することで,更に多くの参加者が期待できると考えられる.
最後になりましたが,本講習会にご参加頂いた受講者の皆様,お忙しい中,テキストの執筆・講演をお引き受け下さった講師の皆様,ならびに流体工学部門講習会WG委員の皆様,担当職員の曽根原雅代様に厚く御礼申し上げます.
(本実施報告に掲載した全ての写真は,講習会WG幹事 関下信正先生(豊橋技術科学大学)よりご提供いただきました.改めて感謝の意を表します.)