No.10-66 講習会「渦流れの科学」実施報告
㈱荏原製作所 江藤 文宣
2010年7月2日(金)に「渦流れの科学」が名古屋駅前イノベーションハブ会議室において社会人38名,学生6名,計44名の受講生を集め開催されました.
講師には元横浜国立大学 亀本 喬司 先生,信州大学 松原 雅春 先生,鉄道総合技術研究所 高石 武久 先生,九州大学 古川 雅人 先生,東京大学海洋研究所 新野 宏 先生をお招きし,下記題目でご講義いただきました.
題目・講師
9:20~10:40 | 「渦流れの科学総論」 | 亀本 喬司 先生 |
10:50~12:10 | 「渦の発生,成長,減衰 ~境界層中の渦~」 | 松原 雅春 先生 |
13:10~14:30 | 「渦流れから発生する音とその解決法」 | 高石 武久 先生 |
14:40~16:00 | 「ターボ機械と渦」 | 古川 雅人 先生 |
16:10~17:30 | 「大気・海洋における渦構造のダイナミズム」 | 新野 宏 先生 |
講習会の状況:
写真1 講習会の様子
写真2 亀本 喬司 先生 | 写真3 松原 雅春 先生 |
写真4 高石 武久 先生 | 写真5 古川 雅人 先生 |
写真6 新野 宏 先生 |
アンケート結果から:
- 講習会参加者について
本講習会では"渦"に関わるテーマについて多岐にわたって取り上げたため,学生の参加が多くなるのではと予想していましたが,実際には2割程度の参加に留まりました.むしろ社会人,とりわけ地元のメーカーで研究開発に従事されている方の参加が目立ち,ものづくり拠点としての中部地方の活気を感じさせられる参加者構成となりました.
受講生の年齢層は20代および30代の若い人で4分の3が占められましたが,今回の講習会では60代の方2名にもご参加いただきました.最近の流体工学部門主催講習会では60代の参加はほとんど見られないのですが,本講習会の"流れの本質を捉える"という趣旨にご興味を抱かれたためかも知れません.
参加のきっかけとして多くが"上司・先生・知人の紹介"を挙げていますが,この中には流体工学部門メーリングリスト"fed-info"での開催案内を受信した人からのご紹介による参加者も多く含まれていると考えられ,メーリングリストによる講習会情報発信は一定の効果を示しているものと考えられます.
受講の動機については,20代,30代の受講生では渦に関する基礎的な事項を幅広く習得したい,という回答が中心であったのに対し,40代以降ではそれぞれが取り組んでいる個別のテーマ(特に空力騒音)に関する講義があったことを受講理由とする人が多くなる傾向にありました.
- 講習会の内容について
参加費用について半数以上の受講生から妥当との回答をいただけましたが,社会人の方を中心に"やや高い"との回答が見受けられました.企画する側としても参加費用を安くして多くの受講生を集めたいところですが,多くの講師の先生方を招いての講習会として考えた場合,概ね妥当な金額ではないかと考えています.
使用テキストについては,受講生アンケートから"内容がよくまとめてあり,参考文献も充実している","発表のPowerPoint資料が掲載されているのがよかった"と概ね好評でした.
一方PowerPoint資料について,"白黒でなくカラーがよかった","1ページに6シートでは字がつぶれてよく読めない"といった声も聞かれ,今後改善を図っていく必要があると考えられます.
なお,80%以上の受講生から"かなり理解した"あるいは"概ね理解した"と回答,講習会の満足度についても,"非常に満足"と"概ね満足"合わせ80%以上の受講生から"満足"と回答いただくことができました.
- 是非参加したい講習会
参加者に今後是非参加したい講習会のテーマを伺ったところ,次のような回答が得られました.
・境界層理論
・ターボ機械の高性能・低騒音化に対する実用的な対策について
・流体を利用した輸送機構の講習会
・CFDの注意点,乱流研究について
・流体音(特に共鳴音)に関する講習会
・数値解析の最新の動向
・流体騒音
・生物に学ぶ流体工学
今回の講習会で取り上げたテーマの中からさらに個々のテーマについて,特に流体騒音,ターボ機械を中心に取り上げた講習会を望む回答が多く見られました.
表 アンケート集計結果(回答数34/回収率77%)
まとめ
本講習会では流れの本質を捉える一つの方法として”渦”に焦点を当て,渦の基本的な性質から産業機械で見られる渦,さらには気象分野で見られる渦といった広範なテーマについて,第一線で活躍されている研究者をお招きして最新の研究成果も交え講義いただきました.
講師の先生方からは大変熱の入ったご講義で講義時間も延長気味,休憩時間を削りながらの大変ハードなスケジュールとなってしまいました.このため受講者の皆さまには講師の先生方と自由に討議いただく時間が満足に取れず,プログラムの時間構成については反省点が残りました.受講者アンケートの”是非参加したい講習会”で挙げられたテーマと合わせ,こうした反省点を今後の流体工学部門企画講習会に活かしていければと思います.
一方アンケート結果からは8割を超す受講者から理解度,満足度とも高い回答が得られ,内容の濃い充実した講習会を開催することができたと考えています.受講者の募集につきましても昨今の経済情勢により当初苦労するのではと予想していましたが,蓋を開けてみれば満員札止めという大変うれしい結果となりました.受講者の皆さまには会場が手狭で大変窮屈な思いをさせてしまいましたが,多くの方にご参加いただきましたこと深く御礼申し上げます.
最後に,お忙しい中講師をお引き受けいただいた先生方,ならびに流体工学部門担当職員 曽根原 雅代 様および講習会ワーキンググループ(WG)メンバーの皆さまに厚く御礼申し上げます.特に講習会WG前幹事 豊橋技術科学大学 関下 信正 先生には講習会の企画から開催まで,多大なるご支援をいただきました.改めて感謝の意を表します.
(本報告に掲載した写真は関下先生よりご提供いただきました)