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No. 24-38 講習会「流体とインフォマティクス」開催報告

小針達也(日立製作所)
宮浦拓人(IHI)
安炳辰(荏原製作所)

2024年4月25日(木)に、日本機械学会No.24-38講習会「流体とインフォマティクス」を開催しました。今回,例年2月に開催していたのを4月に開催し,受講者数は前回30名から80名に増加しました.詳細について以下の通り報告いたします.

開催方法および日時

日時:2024年4月25日(木) 9:30–17:10,オンライン開催(Zoom)

ホームページ

https://www.jsme-fed.org/events/2024/24-38.html

プログラム

9:30-9:40 挨拶・緒説明 (10分)
株式会社日立製作所 小針達也、株式会社IHI 宮浦拓人、株式会社荏原製作所 安炳辰
9:40-11:10 東北大学 大林茂 教授 (90分)
「フルードインフォマティクス2.0」
近年、CAE(computer aided engineering)が実用化され、シミュレーションは実験と並ぶ研究開発の重要な柱となっている。Society 5.0 の実現が謳われる今日、シミュレーションと実験を繋ぎ、双方の情報を最大限に活用することが望まれている。データ科学の手法であるデータ同化を用いれば、シミュレーションと実験を統計的に適切に融合することが可能となり、真のデジタルツインが実現する。本講演では、流体科学とデータ科学の融合による「フルードインフォマティクス」の新たな展開を紹介する。
11:20-12:20  九州大学 下山幸治 教授 (60分)
「流体解析・設計のためのデータ駆動・データインフォームドアプローチ」
流体力学は、家電などの小型のものから、自動車・航空機などの大型のものまで、我々の身近にある様々な流体機械を支配する複雑系の物理です。昨今では、高性能のコンピュータを用いて複雑な流体現象を数値的に解析することで、様々な流体機械の性能を手軽に評価できるようになりましたが、解析結果を流体機械の「ものづくり」に落とし込む作業は依然として困難であるため、流体解析からものづくりまでのプロセスを一貫して支援できるアプローチの開発が望まれます。本講演では、流体力学とデータ科学を融合させることで、流体機械とそのシステムの最適化・強靭化・知的化に貢献するデータ駆動型アプローチに関する研究を紹介します。
12:20-13:40 昼休み
13:40-14:40 名古屋大学 野々村拓 教授 (60分)
「流体力学の低次元モデルとスパースセンシング」
流体力学の高次元データは固有直交分解や動的モード分解を利用することにより、少数の潜在変数で表現できる可能性がある。この低次元化された表現を利用することにより、感度の良い少数のスパースなセンサ情報のみから流れ場全体を復元できる可能性が見えつつある。本講演では、流体力学の低次元モデルおよびセンサ位置最適化に関してその概要を説明し、このアイデアの具体例としてスパースプロセッシングPIV(粒子画像速度測定法)によりリアルタイム流体場観測が可能となることを説明する。
14:50-15:50 東京大学 長谷川洋介 教授 (60分)
「物理法則を考慮した深層ネットワークの基礎と熱流体工学における逆問題への応用」
データ駆動型アプローチの熱流体工学への応用が進んでおり、今後、更なる進展が期待されている。しかし、データ駆動型アプローチでは、通常、十分なトレーニングデータを必要とし、それに基づいて予測された結果は、必ずしも物理法則を満足するものとは限らない。一方、近年、物理現象の支配方程式を陽的に考慮したり、非物理的な解を予め排除した深層ネットワークを用いることによって、学習データが少ない状況においても、様々な熱流体工学におsける逆問題を扱うことが可能となりつつある。本講義では、物理法則を考慮した深層ネットワークの基礎から応用までを概説する。
16:00-17:00  東京大学 三輪修一郎 准教授 (60分)
「ディープラーニングを用いた熱流動解析事例:現状と課題」
熱流動現象の解明は、システム設計や相変化ダイナミクスの基礎研究の領域において重要である。特に、サブクール沸騰をはじめとした相変化冷却においては、気泡の生成から離脱までのライフサイクルをはじめとした気泡ダイナミクスの解明が、熱伝達率評価に影響を与えることが知られている。近年、データ駆動型解析手法の一つとしてディープラーニングによるモデル開発が幅広い工学系分野において注目されている。本講演では、ディープラーニングをベースとした物体検出技術の応用例と、近年注目されているPhysics-informed Neural Networks(PINNs)の応用例について説明を行う。物体検出の事例では、深層学習を用いたサブクール沸騰における凝縮気泡の検出・追跡手法を検討し、その有効性について検証を行った。本手法では、高速度カメラにより撮影されたサブクール気泡の画像群をベースに物体検出モデルを構成し、その後、連続するフレーム間での気泡のライフサイクルをトラッキング(追跡)した。本手法では、凝縮気泡の約90%を検出するロバストな能力を実証した。さらに、提案したAIベースのモデルを用いてアスペクト比、ザウター平均径、離脱径、成長時間、気泡寿命などの主要な熱流動パラメータを抽出し、既存の構成方程式との比較を行った。その結果、既存の経験則との一貫性が示されたと同時に、平均化された値のみを算出する相関式からは評価が困難な変動値の抽出が定量的に可能であることも示唆された。第二のテーマとして、PINNsをベースとした流体解析についての説明を行う。ニューラルネットへ偏微分方程式等の物理法則を紐づけたPINNsは、流体力学の諸問題を解決するための潜在的な手法の一つとして注目されている。従来のPINNsは、サンプリング点の選択、損失項目のバランス、ハイパーパラメータの最適化などの難しさによる制限にしばしば遭遇し、PINNsの非収束につながる事例が報告されている。これらの問題を克服するため、残差ベースの適応的サンプリング等を用いた最適化アルゴリズムを検討し、3つの多次元単相流のケーススタディを用いて検証を行った。理論的な解析解とベンチマークCFD計算結果の両方と比較し、概ね良い一致が見られた。本発表では、以上の二つの解析事例をもとに、ディープラーニングを熱流動諸問題へ応用する際の可能性と課題点等について述べる。
17:00-17:10 クロージング

受講者数

会員資格

正員

31

正員(継続特典)

4

特別員

17

会員外

11

学生員

10

一般学生

0

協賛団体一般

4

協賛団体学生

1

特別員行事無料参加券

2

80

更新日:2024.7.16