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P-SC329「流体の抵抗減少効果に関する研究分科会」報告

主 査 渡辺 敬三(東京都立大学)
幹 事 東  恒雄(大阪市立大学)


歴史的に見ると,流体の抵抗減少効果に関する研究は1942年の高分子溶液におけるトムズ効果の発見を契機として,乱流の乱れとの関連からも研究者や技術者の注目を浴び,従来から多くの研究が成されてきた. しかしながら,高分子溶液の劣化の問題がその応用を妨げ,現在まで十分な実用的展開がなされなかったと言える.
一方,流体の抵抗や損失を低減させる試みは近年の地球温暖化防止や省エネルギーに密接に関連する主要な事項として注目され,現在再評価されつつある.このことは機械的せん断に対して劣化を生じない界面活性剤水溶液の実用的応用や流体の壁面を変化させることによる新しい低減法が乱流域のみならず,マイクロマシンに関わる層流域をも対象として提案されていることからも明らかである.
このような背景に鑑み,本研究分科会は抵抗減少効果に関する国内外の研究状況及びその課題と今後の問題点を明らかにすることを目的として,日本機械学会流体工学部門所属の研究分科会として2000年10月に設置された.設置期間は1年間の延長が認められて3年間であった.その間,分科会委員による9回の研究発表・討論会が開催された.また,本研究課題に対して密接に関連するフォーラムあるいはワークショップを年次大会講演会や流体工学部門講演会において以下のように開催し,本研究会委員を中心に話題提供者となっていただき,会員と共に研究討論を行った.
   フォーラム
  ・「流体の抵抗減少効果―界面活性剤水溶液の流れとその実用化に迫るー」
      日本機械学会 流体工学部門講演会 (仙台蔵王)(2001年10月)
  ・「流体の抵抗減少効果―流れの制御はどこまで進むか,その問題点を探るー」
      日本機械学会 年次大会講演会 (東京大学)(2002年9月)
・「流体の抵抗減少効果 ―モデル化とその問題点―」
      日本機械学会 流体工学部門講演会(関西大学)(2003年9月)
ワークショップ
・「流れを捉えその抵抗を減らす ―いま何が問題か?―」
      日本機械学会関東支部支部講演会(日本大学(船橋校舎))(平成14年3月)

さらに,研究会で指摘された界面活性剤水溶液のレオロジー特性の問題点を明らかにする目的で,国内の7大学と1研究機関で同一資料の界面活性剤水溶液に対するレオロジー特性合同測定会を企画,実施した.その結果は2003年度流体工学部門講演会(9月20日,関西大学)で公開の討論会を開催して報告され,その問題点の把握と認識について多くの知見が得られた.
  本研究分科会の3年間に亘るこれらの研究活動を通じて,定例の研究会で発表されたオリジナルな研究及び界面活性剤水溶液に対するレオロジー特性合同測定会の測定結果とその検討結果は.
本研究分科会成果報告書としてまとめられている.これらの研究成果が今後の流体工学の抵抗減少効果の研究分野における発展と新しい応用やその展開に寄与できることを期待したい.

 (文責 渡辺 敬三)

更新日:2004.4.7