A-TS05-09 北海道地区流体工学研究会 第82期活動報告
研究会主査: 杉山 弘(室蘭工業大学)
幹 事: 河合秀樹(室蘭工業大学)
日本機械学会流体工学部門研究会「北海道地区流体工学研究会(A-TS05-19)」は,現在54名の参加会員のもとに活動しています.年3~4回の研究会を開催し,1回の研究会にそれぞれ複数のテーマを設定し,研究活動の活発化と情報の交換を行っています.平成16年度は北海道支部流体工学懇話会(主査:藤川重雄(北大),幹事:村井祐一(北大))と併催の形式で3回の研究会を開催いたしました.開催された研究会の具体的な内容はつぎのものとなっています.
(1)第1回研究会(平成16年6月26日開催,参加者14名)
会場北海道大学工学部物理工学系大会議室
- 「衝撃波研究の応用 ~火山噴火の数値シュミレーション~」
齋藤 務氏(室蘭工業大学)
- 「粒子分散系の動的特性に関する研究」
原田 周作 氏(北海道大学)
- 「内部発熱対流と液体ガリウム対流に関する実験的研究」
田坂 裕司 君(北海道大学 博士課程学生)
- 「Gaussian-BGK Boltzmann方程式による多原子分子蒸気の相変化過程に関する研究」
小林 一道 君(北海道大学 博士課程学生)平成16年度より北海道地区の大学に着任された齋藤先生,原田先生より火山噴火の物理モデル,粒子運動の流体力学における理論的記述についてそれぞれ話題提供がなされました.また懇話会主査の藤川教授の提案により,本年度より大学院博士課程の学生による発表を本研究会に組み込むこととし,博士論文に向けて研究する彼らのホットな話題交換を継続的に企画することとなりました.第1回は田坂君(北海道大学・武田教授研究室),小林君(北海道大学・藤川教授研究室)から発表がありました.
(2)第2回研究会(平成17年1月7日開催,参加者19名)
会場北海道大学工学部物理工学系大会議室
- 「水滴の水面衝突による気泡音発生のメカニズムと応用」
冨田 幸雄 氏(北海道教育大学函館校)
- 「高速流れと衝撃波現象に関する最近の研究について」
杉山 弘 氏(室蘭工業大学)
- 「ベクトルUVPの開発」
大林 寛生 君(北海道大学 博士課程学生)
- 「衝撃波と細胞膜の干渉に関する非平衡分子動力学」
越山顕一郎 君(北海道大学 博士課程学生)冨田先生は液面に水滴が落下する際に発生する固有音の物理とそれを反響する境界条件について詳しい解説を頂きました.杉山先生からは室蘭工業大学における最新のマッハ4超音速風洞設備と長年にわたる衝撃波を伴う超音速内部流動現象に関する研究について紹介がありました.博士課程学生セッションでは,超音波ドップラー流速分布計から流速ベクトル情報を得る技術,ならびに細胞膜の衝撃波による破断機構の分子動力学的による解析について高い関心を呼ぶ発表がありました.
(3)第3回研究会(平成17年3月5日~6日開催,参加者34名)
会場 登別温泉 万世閣
- 「樹木の流体力学特性」
石川 仁 氏(東京理科大学)
- 「SSTロケットの実験機の遷移計測」
徳川 直子 氏(JAXA総合技術研究本部)
- 「再使用型宇宙輸送機開発の経緯と大学主導による飛行実験計画」
棚次 亘弘 氏(室蘭工業大学)
- 「円筒波および球面波の共鳴現象におけるゆっくりとした振幅の変調」
栗原 央流 氏(北海道大学)
- 「河口成層密度流の現象とその力学機構」
吉田 静男 氏(北海道大学)日本機械学会年次大会が北海道大学で開催された際に,台風18号が札幌に最大瞬間風速50.2m/sで通過しました.この台風は北大農場のポプラ並木の半数を倒すなど市内に絶大な被害をもたらしました.この災害の前から石川先生は様々なタイプの樹木の抗力係数を実験的に調べており,研究会ではポプラ並木が倒れる瞬間の動画を含めそのダイナミクスを紹介されました.徳川先生はSSTロケットの開発状況とオーストラリアでの実験について近年の最新の話題を紹介されました.JAXAから室蘭工業大学に移られた棚次先生には大学主導のロケット開発の魅力と必要性についてその世界的動向とともに紹介頂きました.栗原先生には円筒波と球面波の音場の決定機構について数学的アプローチに関する現在進行中の研究成果を話題提供頂きました.最後に吉田先生からは永年携わっておられる河口成層密度流に関して北海道内の種々の河川地理を取りあげ風向・風速の影響について紹介頂きました.なお登別温泉を会場として夜遅くまで研究の質疑討論が続き,自然界から宇宙までの流体力学について取り組むべき未解明のテーマが多数あることを深く実感した夜となりました.
写真1 植え直された北大のポプラ並木・雪がとけて葉が出れば.
写真2 第3回研究会の風景