部門賞

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第87期 (2009年度)流体工学部門 部門賞

● 宮田 勝文 (山梨大学)
● 山下 新太郎 (岐阜大学)

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部門賞


宮田 勝文 (山梨大学)

受賞理由:

 長年にわたり流体工学分野の教育と研究に従事し,多くの技術者の育成と流体工学の発展に多大な功績があった.特に,粗面乱流境界層や空力騒音,透過性構造物を過ぎる流れの基礎研究などにおいて顕著な業績を挙げた.

受賞のコメント:

 この度は,流体工学部門賞という栄えある賞を頂くこととなり,身に余る光栄に存じます.推薦を頂きました方々,これまで指導鞭撻をいただきました先生方,緒先輩ならびに研究仲間の皆様に心より感謝をいたします.

 長年にわたって流れの研究と教育に携わったというのが主な受賞理由であるとおり,学部卒業から40年,ピトー管,可視化,熱線,変動濃度計,LDVと手法は変わっても一途に流れの測定にひたすら打ち込んできました.対象とした流れも,粗面,粗さ要素,コーナー流れ,管内乱流,噴流,ルーバー構造体,透過性物体と変わりましたが,その時代ごとのはやりの研究には余り目を向けずに,自分が調べたいと思う流れを追ってきたというのが実情です.もともと,流れの実験をやり,流線一本を得ること自体に喜びを感じ,その都度,なるほど流れはこのように流れるのか,ということを思い知らされる経験をほぼ半世紀にわたり繰り返してきたわけなのですが,いまだに流れには予想を裏切られることが度々で,至らなさを痛感しております.

 ここしばらくは,少しは役に立つ研究をやらなければと,高層建築物の外装材周りの空力音に関連する流れ場の計測を主に,今でも院生,学生と一緒にデータをとっています.空力音と流れ場の因果関係を実験的に明らかにすることは想像以上に困難ではありますが,一方で,ほんの少しだけ流れ場を工夫するだけで,空力騒音を大きく変えることが出来る醍醐味を味わえる分野でもありますので,流体工学部門の多くの方々がこの難問に取り組んでいただけることを期待しております.

部門賞


山下 新太郎 (岐阜大学)

受賞理由:

 長年にわたり乱流現象,特に回転体上の乱流境界層や三次元壁乱流,壁面噴流などの実験的,理論的解明に取り組み,顕著な業績を挙げた.また,「マイクロEFD 調査研究分科会」の主査を務め,先端的な流体工学分野の開拓に多大な貢献をした.

受賞のコメント:

 このたびは日本機械学会流体工学部門賞をいただくことになり,まことに光栄に存じます.ご推挙いただいた関係各位に篤く御礼申し上げます.

  私が流体工学の研究の道に入ったのは,今から40年以上前のことで,浅はかな私は機械学科の中に流体の問題を研究する部署(講座)があるということにある種の不可思議さを感じていました.そして,特に強いモチベーションを抱くこともなく流体工学の研究室に入れていただき,卒業研究を行いました.その時の研究テーマが回転体上の境界層です.それ以来,この流れの問題に長く関わることになりました.初期の頃は,特に流体力学のコーナーストーンのひとつと言われている対数法則が,この流れでどのように表されるべきかという問題に取り組み,引き続きこの回転場の乱流構造を調べてきました.一方で,素性がよく,系統的研究が可能な三次元流れとして,平板上に傾斜して設置されたなだらかな隆起曲面を過ぎる乱流境界層,あるいは斜め後方ステップを過ぎる流れの研究に取り組んできました.回転体上の流れや三次元的な流れの計測は単純流れに比べて格段に難しくなり,特にそのための測定法の考案やデータ処理の工夫に努めてきました.振り返ってみると,計測と処理に当っては,細かいことが常に気になり,不具合を取り除く工夫の中で,新たな切り口を模索してきたように思います.たとえば,熱線計測で測定技能の限界を処理で補うという試みの中で,熱線のデータ処理式の展開に数式処理を応用したことや,リブレット面上の流れに対して,壁せん断応力と仮想原点を同時に求めたことなどです.

  終わりに,研究のご指導とご支援を賜りました恩師の先生,共同あるいは競合的研究環境の中で苦楽をともにした諸先生をはじめ,お世話になった方々に深く感謝の意を表したいと思います.

更新日:2010.4.5