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第101期 (2023年度)流体工学部門 一般表彰(フロンティア表彰)

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一般表彰(フロンティア表彰)


田坂 裕司(北海道大学)

受賞理由

 超音波流速分布計を応用した新たなレオロジー物性の計測法(超音波スピニングレオメトリ)を開発,困難だった不均質流体や混相流体の擬塑性・粘弾性測定に成功した.プラントや食品製造にも活用できる大きな成果を挙げた.

受賞のコメント

 このたびは,このような大変名誉かつ伝統のある賞をいただき,身に余る光栄を感じております.ご推薦いただきました先生方ならびに選考いただきました委員の皆様に,改めて感謝申し上げます.

 大学院生からこれまで,一貫していることと言えば実験的研究手法への拘りのみで,興味のままに様々な問題に取り組んで参りました.熱対流,遷移,回転流体,液体金属とMHD,混相流,非ニュートン流体などなど,広く浅く,ピンポイントで深く.フロンティア表彰の受賞業績として評価いただいた研究は,超音波を用いた流速分布計測により,混相流体を含む様々な複雑流体のレオロジー物性を評価するものです.研究業績として日の目を見始めたのは比較的最近ですが,上記の様々な研究を通して得られた知見や経験の中から芽吹いた研究であることは確かです.この研究は広がりを見せ,医療,食品・化学工学から地球惑星科学まで,流体工学の範疇を超えた多方面での共同研究に発展しています.このような学際的な研究が,基礎研究分野である流体工学の方法論から発生したことに,流体工学の奥深さを改めて感じております.

 これだけの多方面の研究は,国内外,様々な研究者の方に支えられて参りました.特に,実験研究を支えてくれた学生の皆さんには,与えられた分を教育として返すことができたのかどうか,自問する毎日です.今回の受賞は,私の研究に関わって下さった全ての方への評価だと感じております.研究活動への肯定感をもって,これからも楽しく実験をしていく所存です.

 最後になりますが,日々,激しく研究の刺激を与えて下さる村井祐一先生,研究室の皆様,奇しくも同日表彰される,上の部屋の小林一道先生にも感謝しつつ,ともに喜びを分かち合いたいと思います.

一般表彰(フロンティア表彰)


小林 一道(北海道大学)

受賞理由

 主に分子シミュレーションを用いて,気液界面の熱・物質輸送に関する研究を精力的に行った.また,その知見を気液混相流れに応用し,多数の論文を報告した.

受賞のコメント

 この度は、流体工学部門一般表彰(フロンティア表彰)を賜り、大変光栄に存じます。ご推薦・ご指導いただきました先生方に深くお礼申し上げます。

 気液界面の熱・物質輸送は複雑な混相流体流れに関連しており、私が博士課程に在籍していた時から今日まで研究を行ってきました。特に分子シミュレーションを用いて界面熱物質輸送の研究を行っており、分子シミュレーションから得た知見を流体力学に応用することで、気泡の崩壊現象や微小液滴の衝突といった流れの物理法則解明に貢献することができました。

 今回の受賞を励みとして、今後も引き続き微視的な立場から複雑な流体の物理を研究するとともに、また、産業応用や環境問題解決への展開も目指したいと考えております。

 最後になりますが、ご指導頂いた先生方に深くお礼を申し上げますとともに、一緒に研究を行ってくれた多くの方々に感謝いたします。

一般表彰(フロンティア表彰)


古澤 卓(東北大学)

受賞理由

 超臨界流体の流動および関連する諸問題を解決するために,超臨界流体の数理モデルならびに数値解法に関する分野融合研究を推進して,先駆的・先導的な役割を果たしてきた.

受賞のコメント

この度は日本機械学会流体工学部門フロンティア表彰を賜りまして大変光栄に存じます。このような栄えある賞をいただき、身の引き締まる思いでおります。ご推薦頂いた先生方および関係者の皆様に深く御礼を申し上げます。

 受賞対象となった超臨界流体の数理モデル構築ならびに流動解明は私が東北大学山本悟先生の下で研究を始めてから一貫してテーマとしているものです。超臨界流体は高圧高温条件の流体であり、臨界点近傍で密度や定圧比熱などの熱物性値が急激に変化することから、その流動は一般的なものとは大きく異なることが知られています。特に化学工学分野では超臨界水や超臨界二酸化炭素を反応場として広く活用していましたが、反応器内部流動は十分に解明されていませんでした。高圧高温であるために超臨界流体の流動は直接観測が難しく、数値計算による流動解析手法および数理モデルの構築が必要とされていました。例えば連続水熱合成法は超臨界水と常温水溶液を反応器内で混合させることでナノ粒子を生成する手法ですが、超臨界水の混合流動、水熱合成反応、ナノ粒子生成を正確に予測する必要があります。このような未知の流動および複雑現象の解明に挑戦できたのもひとえに山本悟先生の先見性に基づくものです。また近年では超臨界二酸化炭素を利用した発電システム内部の非平衡凝縮や加熱流動などの多岐にわたる超臨界流体の流動問題が顕在化していることから、さらなる超臨界流体の複雑現象の数理モデル構築の必要性をひしひしと感じています。 

 今回の受賞を励みに今後もより一層の研究を重ねて、流体工学を発展させる一助になるように精進して参ります。最後になりましたが、本受賞の研究成果は多くの共同研究者の皆様、研究室のメンバーのご協力により達成されたものです。また、学会発表などを通して多くの皆様にご助言を頂きました。厚くお礼申し上げます。

更新日:2023.8.8