遠心力
- 遠心力とは回転する物体に乗って現象を観察するとき(回転系)の見かけの力であり、静止する外部の点から観察するとき(静止系または等速度運動する慣性系でも同じ)は実在しない力です。
- 円運動(ある点を中心に回転運動)する物体について考えてみます。たとえば、図のようにターンテーブルに乗って円運動している物体は、ターンテーブルとの間の摩擦力によって回転中心に向かう力(向心力)が作用しています。この力によって、常に回転中心の方向に加速度(向心加速度)が発生し、円運動を持続します。この場合、遠心力は存在しません。
- 次に、円運動する物体に乗ってこの現象を観察してみましょう。たとえば、非常に大きなターンテーブルの上に乗っているとします。乗っている人は外向きに力が作用していると感じ、これを遠心力といいます。物体は外部から力が作用しなければ直線運動を続けようとします(慣性)ので、本来は円軌道の接線方向に運動しようとします。円軌道よりも外側に進もうとするので、外向きに力が作用していると感じるのです。したがって、回転する物体に乗って観察する場合には見かけ上の力、遠心力が作用すると考えることにします。物体に作用する向心力がこの遠心力とつりあうとき、円運動が持続され、見かけ上、何も起こっていないように感じます。
- この話は、カーブを曲がる自動車に乗っている人でも同じです。本来は接線方向に直進しようとしますから、円軌道から外側にずれる方向に見かけ上の力、遠心力が作用していると感じます。実際に、カーブの外側に引っ張られるという力を感じた人は多いでしょう。乗っている人は外側に飛ばされないように座席や手すりから力(向心力)が作用しないと円運動を続けられません。このとき、見かけ上、遠心力と向心力がつりあっていると考えます。
- カーブを曲がる自動車に乗った人を、外の歩道にいる人が観察したとしましょう(慣性系)。自動車に乗っている人は何も力が作用しなければ直進します。しかし、手すりにつかまったり、座席からカーブの内側に向かう力(向心力)を受けてカーブの内側方向に自動車といっしょに曲がっていきます。遠心力は存在せず、向心力だけを受けて回転中心の方向に加速度が発生して円軌道を描きます。
- 流体力学では、渦あるいは回転運動する流体を対象とする場合、しばしば流体の粒子に乗って運動を考えます(回転系)。このとき、粒子には見かけの力、遠心力が外向きに作用し、これと向心力がつりあうとき、円運動を続ける(渦を巻く)と考えます。回転運動する場合、外側が高圧、内側が低圧となり、この圧力差から流体粒子には内向きに力が作用し、向心力となります。
- このように渦あるいは回転運動する流体では、回転系で考えることがしばしばあります。
更新日:2012.5.28