大きい球と小さい球2(同密度)
まずは見てみよう!
どんな実験?
実験手順と種あかし
- 発泡スチロール製でほぼ同じ密度の大きいボール(直径30mm、赤)と小さいボール(直径6mm、白)を使って実験します。
- 容器の中の下に大きいボール(赤)を、その上に小さいボール(白)を入れます。
- 容器を上下方向に振ると、大きいボールが上に上がってきて、上下が入れ替わります。
- これは、小さなボールが大きなボールのすきまに入り、振動を繰り返すたびにどんどんすきまに入り込み、下に下がったからです。上に大きなボール(赤)、下に小さなボール(白)となります。
- 次に、大小のボールを同時に落とします。すると大きいボールのほうが速く落ちます。
- 以前の「大きい球と小さい球」と似た実験ですが結果は逆になります。「大きい球と小さい球」では、重さが同じ大きいボールと小さいボールで実験して、小さいボールの方が速く落ちます。大きなボールほど流れを受ける面積(前方投影面積)が大きくなり、それにほぼ比例して空気抵抗が大きくなって遅く落ちるのです。
- 今回の実験では、密度がほぼ同じ大きいボールと小さいボールで実験して、大きいボールのほうが速く落ちました。なぜでしょうか?
- これは空気抵抗と重力の性質によるものです。空気抵抗の大きさは、物体の形、大きさ、速度などによって変わります。空気抵抗の大きさは、流れを受ける面積(前方投影面積)にほぼ比例しますので、物体の大きさ(長さ)のほぼ2乗に比例します(たとえば、大きさが2倍なら空気抵抗はおよそ4倍になる)。このことは「ふしぎな粉」の水の抵抗と同じです。
- 一方、中実で密度が均一なボールにはたらく重力の大きさは、ボールの大きさ(直径)のほぼ3乗に比例します(たとえば、大きさが2倍なら重力の大きさはおよそ8倍になる)。つまり、ボールが大きくなるほど重力は非常に大きくなります。空気抵抗が大きくなるのよりも重力のほうがもっと大きくなります。そのため、同じくらいの密度の物体では、大きなものほど(この実験では赤)速く落ちるのです。このことは「ふしぎな粉」の沈む速さと同じです。
【注意】 | この実験を思いついたのは、高校物理の教科書で「小さな石」や「小さな物体」を落とすという事例が多く見られたからです。と言うのは、小さな石ほど空気抵抗の影響を受けやすいという点が気になったからです。 「大きな石」では危険です。また、大きさが非常に小さければ、落下距離を物体の重心から測っても、物体の最下点から測ってもほとんど変わらないという点は確かにそうだと思います。気になったのは「小さい」ことから空気抵抗の影響が小さいと感じている人が理科の先生も含めてたくさんいそうな気がしたからです。実際にはその効果は逆だからです。大きな物体ほど空気抵抗は大きく、それは大きさの2乗(あるいは前方投影面積)に比例します。しかし、同じ密度であれば、物体にはたらく重力の大きさは物体の大きさの3乗に比例します。大きな物体ほど重力は大きくなり、その大きさの増加率は空気抵抗より大きいのです。たとえば、物体の形を変えずに大きさ(長さ)を2倍にすると、空気抵抗はおよそ4倍、重力の大きさは8倍になり、相対的に空気抵抗の影響は小さくなります。 つまり、同じ密度の物体であれば、大きな物体ほど空気抵抗の影響は小さくなります。大きな石なら空気抵抗は無視できますが、非常に小さな砂(黄砂など)は空気抵抗の影響が大きくなり、落下速度は小さくなりますし、等加速度で落下することもありません。今回の実験はそのことを示しています。雨滴でも霧雨やもやなど小さな水滴は空気抵抗の影響が大きく、落下速度が小さくなることからも確認できます。 |
【キーワード】 | 抗力、空気抵抗 |
【関連項目】 | ふしぎな粉、大きい球と小さい球、風から受ける力1(大きさの影響) |
【参考】 | 石綿良三「図解雑学流体力学」ナツメ社、P72-75. |
更新日:2018.10.1