部門賞

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第102期 (2024年度)流体工学部門 部門賞

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部門賞


亀田 正治(東京農工大学)

受賞理由

圧力変動にともなう気泡運動および気泡流中の圧力波の力学,高速応答型感圧塗料および圧力波の光学的計測法の研究を行い,混相流,流体計測の研究分野において顕著な業績を挙げた.

受賞のコメント

 伝統ある日本機械学会流体工学部門より部門賞を賜り、心より光栄に存じます。ご推薦、ご選考に携わっていただいた皆様に、深く感謝申し上げます。研究の成果は、恩師のご指導、研究仲間や学生の協力の賜物であります。多くの方々の支えのありがたみを改めてかみしめています。
授賞理由の一つである「気泡運動、気泡流中の圧力波の力学」は、東京大学の松本洋一郎先生のご指導のもとで始まり、その後、東京農工大学に着任してから約10年間続けてきた研究です。当時、世界的に未解決であった圧力波に関する実験結果と数値解析(理論)の相違が、実験中の気泡群の偏りに起因するものだと分かったときの嬉しさは、今でもありありと思い出すことができます。この研究は幸運にも高く評価され、機械学会奨励賞を受賞しました。また、Andrea Prosperetti先生(ジョンズ・ホプキンス大学)のご助言をいただきながら執筆したPhys. Fluidsの論文は、この分野の標準引用論文となりました。この研究を通じて身に付けた知識と研究スタイルは、その後の活動の基盤となり、火山爆発ダイナミクスという新たなテーマへと広がっていきました。

 もう一つの授賞理由である「高速応答型感圧塗料および圧力波の光学的計測法」は、農工大の東野文男先生のご指導をきっかけに発展させたテーマです。シュリーレン法などの光学的可視化手法や、衝撃波を含む流れ場の実験技術を学ぶ中で、浅井圭介先生(当時、航空技術研究所、現東北大学)の声がけにより、「感圧塗料(PSP)」に関する大きなプロジェクト(MOSAIC)に参加する機会を得ました。プロジェクトの成果として発表した高速応答型PSPの時間応答メカニズムに関する論文は、Meas. Sci. Technol.誌に掲載され、幸運にも年間最優秀論文に選ばれました。この成果とプロジェクトで得た研究仲間は、私が流体計測の専門家として歩み続ける大きな支えとなっています。

 流体工学部門においては、長らくJFST誌のアソシエイトエディタを務め、さらに部門の主要メンバーが集うRC分科会において主査や幹事を担当するなど、貴重な経験をさせていただきました。私が活動してきた期間は、流体工学の研究が国際化へと進む過程と軌を一にしています。研究の世界的なインパクトの重要性は高まるばかりです。構成メンバーの国際的活躍により、流体工学部門がさらに発展することを心から祈念しております。

部門賞


川原 顕磨呂(熊本大学)

受賞理由

流体工学分野の教育と研究に従事し,流体工学の発展に功績があった.特に,マイクロ流路から原子炉内の広範囲のスケールにおける気液二相流現象の解明において顕著な業績を挙げた.

受賞のコメント

 この度、日本機械学会流体工学部門賞を受賞できたことは、私にとって大変光栄であり、深く感謝申し上げます。本賞の推薦および審査をして下さいました皆様に心より深く御礼申し上げます。これまでお世話になりました恩師の先生方、学会等でご助言をいただきました先生方・企業の皆様、共に研究を進めてきた学生諸子を含む仲間たちの協力なしには、このような成果を上げることはできませんでした。心から感謝します。

 熊本大学流体工学研究室の学生として、佐藤泰生先生(熊本大学名誉教授)、佐田富道雄先生(熊本大学名誉教授)のご指導の下、原子炉燃料集合体内のサブチャンネル間の気液二相流体移動に関する研究に携わったのが、私の流体工学の研究のスタートでした。気液二相流は単相流と異なり、気液界面が存在し、その気液界面が時空間的に変化する複雑な流れで、加えて燃料集合体内の流路形状は非常に複雑です。佐藤先生の“the simpler, the best”、「単純な流路を説明できずして 何ぞ複雑な流路をや」、すなわち精度の高いデータを得るために単純明瞭な実験をしなければならないとの教えをもとに、境界条件を明確にした単純な流路を作製して実験を行いました。そして、得られたデータを元に流体移動のモデル化を行ってきました。このような実験からモデル化に至るプロセス(考え方)は今の私の研究の根幹になっています。佐田富先生とは前述の研究に加えてマイクロバブルやミストを製造できる多流体混合器の開発を進め、多くの企業との共同研究を行いました。佐田富先生の研究に対するアイデアや取り組む姿勢は大変参考になり勉強させていただきました。2001年にトロント大学の川路正裕先生(現、ニューヨーク・シティ大学)の研究室に1年間滞在させていただき、そこでマイクロ流路内の気液二相流の研究を始めました。その当時はマイクロ流路内の単相流(液体あるいは気体)についても十分理解されていないことが多く、例えば、層流から乱流への遷移がレイノルズ数Re = 400で起こる、その層流の管摩擦係数の実験値がハーゲン・ポアズイユ流れの理論値に一致しない等の現象が報告され、それらの原因を調べる多数の研究が行われていました。川路先生の研究室では博士課程の学生が1辺100  mm正方形流路内液単相流れの速度分布の計測にチャレンジしており、私もそれに加わりました。そして、その滞在中にニューオリンズで開催された混相流国際会議ICMF(International Conference on Multiphase Flow)のキーノートレクチャーで芹澤昭示先生(京都大学名誉教授)の「Two-Phase Flow in Micro-Channels」のご講演を聴き、マイクロ流路内二相流の調査はこれからの研究テーマとして面白いと感じたのがきっかけで、一連のマイクロチャンネル内の流動機構を調べる研究を始めた次第です。現在は米本幸弘先生(熊本大学)と連携してマイクロ流路内非ニュートン流体二相流や流路壁面の濡れ性の研究を進めているところです。

 気液二相流の研究は、多くの挑戦と発見の連続で、加えて研究を通して多くの国内外の研究者とのご縁をいただき、その一つひとつが私を成長させ、このような素晴らしい賞に結びついたと感じています。今後も引き続き、流体工学の分野で新たな知見を広げ、かつ後進の育成に励み、社会に貢献できるよう努力を続けてまいります。今後とも変わらぬご指導とご支援を賜りますようお願い申し上げます。

部門賞


武居 昌宏(千葉大学)

受賞理由

長年にわたり流体工学分野の教育と研究に従事し,流体工学の発展に顕著な功績を収めた.また,AJK-FED 2011国際会議の副議長として会議を成功に導くなど,流体工学部門の活性化に多大なる貢献をした.

受賞のコメント

 このたびは第102期(2024年度)日本機械学会流体工学部門賞を賜り、大変光栄に存じます。ご推薦、ご選考をいただきましたご関係の皆様に厚く御礼申し上げますとともに、これまでお世話になりました先生方、研究室のスタッフ、および、学生の皆さんに、深く感謝申し上げます。

 私事ではございますが、1995年3月 に「スパイラルフローを用いたジェットカッティングに関する研究」で、博士(工学)の学位を早稲田大学から授与され、その後、日本大学理工学部の助手として、教育・研究のキャリアをスタートいたしました。その直後、英国マンチェスター大学のTomaz Dyakowski教授のところで、当時まだ基礎研究の段階の「電気トモグラフィー」という計測技術を学ぶ機会をいただき、新たな研究の方向性を見出すことができました。

 日本大学に在籍中は、工学教育、特に流体工学の教育には、特に力を入れさせていただき、一般的な難しいといわれている流体力学を面白おかしく教えることに、多くの時間を費やしました。
2011年4月から千葉大学大学院工学研究科に、縁がありまして、移籍させていただきました。千葉大学に移籍してからは、電気トモグラフィーのハードウェアとソフトウェアをいちから開発し、その手作りの可視化計測システムを、エネルギー・食品・薬品などのプラント内混相流の流れ場に応用しました。さらに、最近では、生体や細胞の物質輸送の可視化とその力学解析について、研究を発展させています。

 ちょうど日本大学から千葉大学に移籍した直後に、松本洋一郎先生が議長された日米韓流体工学国際会議(AJK-FED 2011)を静岡で開催いたしました。大学研究室の立ち上げと授業などの業務と国際会議などが重なり、超多忙であったことを覚えています。この国際会議に貢献できたことをとてもうれしく思っています。
最近では、いままでの経験を生かして、千葉大学発スタートアップの育成とアントレプレナー教育にも従事し、機械工学だけではなく新しい教育・研究に従事しております。

 最後に、今後の流体工学部門と関係の皆様の益々のご発展を祈念し、部門賞受賞のご挨拶とさせて頂きます。

部門賞

細川 茂雄(関西大学)

受賞理由

先端的な計測技術を開発して気液二相乱流や気液界面現象の解明で多くの研究成果を挙げ,実験流体力学の発展への貢献と共に,流体工学を社会安全分野に展開し,新たな研究課題や教育体系の開拓に尽力している.

受賞のコメント

 このたびは第101期日本機械学会流体工学部門賞受賞の栄誉を賜り,大変光栄に存じます.ご推薦ならびにご選考に関わられた皆様に厚く御礼申し上げます.このような栄誉ある賞を頂けましたのも,これまでお世話になりました先生方や一緒に研究に取り組んでくれた学生の皆さんのご協力があってのことと存じます.関係の皆様に深く御礼申し上げます.
 私と流体工学の関わりは,神戸大学の中島健先生の研究室において池田裕二先生とともに非接触流速計測手法であるレーザドップラ流速計(LDV)センサーの小型化・最適化に取り組んだことに始まります.この時期に得た光学計測とものづくりに関する基礎とノウハウは,その後の研究活動の礎となりました.また,“計測のための研究をしてはいけない”と教えられ,計測手法を改良しなければ測定できない現象を念頭に計測装置の設計・改良を行う意識が強まりました.その後,坂口忠司先生,冨山明男先生から気液二相流を学び,変形しやすい界面が存在する気液二相流こそ非接触測定が必須とされると感じ,LDVの二相流への応用から研究をスタートしました.気液二相流の知識を深めていくに伴い,乱れの消散率や界面スリップ,界面への吸着など細かな現象にも興味が湧き,それらを測定すべく,計測機器の改良を続けてまいりました.これらの研究は,根気強く,また丁寧に研究を一緒に行ってくれた学生諸氏の力が無ければ,達成することはできませんでした.同じ研究室で切磋琢磨した宋明良先生,林公祐先生の存在も,研究を行う上で大きな刺激となりました.菱田公一先生には,学生時代から継続的に叱咤激励いただきながら,多くを学ばせていただきました.今回私の研究成果を評価していただけましたのも,これらの多くの方々のお力添えがあったからこそと思います.改めて深く御礼申し上げます.

 計測手法は特定の研究者だけが使えても,学術分野への貢献はわずかです.今回評価していただいた計測手法をみなさまに使っていただければ,大変ありがたいことです.私の計測に関する知識やノウハウがお役に立つのであれば,お気軽にお声がけいただければ幸いです.

 最後になりましたが,流体工学部門と部門に所属される皆様のますますのご発展をお祈り申し上げます.

部門賞


宮川 和芳(早稲田大学)

受賞理由

流体機械の研究開発と教育に従事し,水車やポンプの内部流れ,流体関連振動やキャビテーション現象の解明,高性能化など流体工学の発展に顕著な功績を収めた.また,第100期流体工学部門長を務め,部門運営に多大なる貢献をした.

受賞のコメント

 この度は,日本機械学会流体工学部門より由緒ある賞を賜り,大変光栄に存じます.ご推薦いただきました関係各位に心から感謝申し上げます.

 私は,早稲田大学理工学部機械工学科博士前期課程を1985年に修了し,三菱重工業(株)高砂研究所ターボ機械研究室に入社,2011年からは早稲田大学理工学術院基幹理工学部機械科学・航空学科(現在,機械科学・航空宇宙学科)で機械工学に携わっています.2007年には大阪大学基礎工学研究科で辻本先生のご指導のもと博士学位をいただきました.また,1992年にはドイツアーヘン工科大学のジェット推進・ターボ機械研究所でGallus先生のご指導をいただく機会も得て最先端のターボ機械研究を学ぶことができました.修士課程時代に日本機械学会の会員になり,その後40年間流体工学部門を第一登録として今に至ります.現在は,ターボ機械の専門組織として50年前に流体部門から分かれた一般社団法人ターボ機械協会の会長として微力ながらターボ機械を産学で支える活動をしております.

 私の流体機械との付き合いは,大学院修士課程の時からで,ダリウス・サボニウス併結型風力タービンの研究開発の中で,大学での風洞試験,風速に応じた可変速運転制御のハード,ソフトの開発,秋田県での高さ5mの実機の建設,実証試験などをいたしました.その後入社した三菱重工業(株)ターボ機械研究室では,大型水車や揚水発電用ポンプ水車のプロジェクトに従事し,多くの電力会社の水車,ポンプ水車の開発をしてきました.その頃は,従来を上回る高効率な水車,超高落差の大容量ポンプ水車などの開発プロジェクトが実施され,幸い多くの研究開発に携わることができました.また,火力,原子力用ポンプ,大型排水機場ポンプやロケット用ターボポンプなどの技術的難易度の高い研究開発にも従事することができました.それらの研究開発の中で,流動解析を用いた設計手法の導入,翼列干渉,渦励振やキャビテーションによる流動不安定など不適合につながる流体関連振動の解明と対策を実験,解析を駆使してすすめてきました.それらの,企業の研究開発内容が大学での流体機械の研究にもつながっております.

 2022年度に第100期の流体工学部門長を拝命いたしました.流体工学は,エネルギー,輸送,社会インフラを支える重要な基盤技術でありますが,工学への応用や複雑な問題解明のためには流体工学を核とした幅広い知見が必要となり,日本機械学会の重要なミッションである分野連携活動を学会最大の部門である流体工学部門がリードして進めていく必要性を強く認識いたしました.一方,部門長の期間においても部門登録者の減員は著しく,部門で活躍していただく会員の確保は喫緊の課題でした.今後も産学で広い視野を有する流体工学分野の研究者・技術者が増え多くの分野で活躍していただくことを期待しています.

 最後になりますが,今後の流体工学部門と関係の皆様の益々のご発展を祈念し,部門賞受賞の御礼の挨拶とさせていただきます.

更新日:2024.12.3