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第103期 (2025年度)流体工学部門 一般表彰(フロンティア表彰)

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一般表彰(フロンティア表彰)


津田 伸一(九州大学)

受賞理由

気液相変化を伴う複雑なキャビテーション流れを主要な素過程に分解したうえで再構成する数理モデリングに加え,空間スケールが異なる素過程間の接続に向けた理論および数値解析を多数実施し,当該分野を先導した.

受賞のコメント

 このたびは,大変誉れ高い賞を頂戴いたしまして,身に余る光栄に存じます.ご推薦ならびにご審査をいただいた先生方をはじめ,これまでに多くのご指導をいただいてきた先生方,および,ともに研究活動に勤しんでいる先生方と学生諸氏に,厚くお礼申し上げます.

 私は,主としてキャビテーション流れのモデリングに関する研究に従事してきております.学生時代の恩師である東京大学の松本洋一郎先生と高木周先生が標榜された「マルチスケール解析」の概念に魅了され,このコンセプトを,様々な時空間スケールの素過程から成る複雑なキャビテーション流れの高度モデリングに繋げたいという意思のもと,仲間たちとともに少しずつ研究を進めてきております.量子・分子のスケールから水力機械や船舶のスケールに渡り,幸いにも学会の場を通じて多くの研究者から学ぶ機会に恵まれ,牛歩ながらも独自のアプローチによる現象解明ならびにモデリングを展開してきている点を評価いただいたものと受け止めております.

 一方で,まだ道半ばどころか,ようやく道四半に至るかどうかとの認識が非常に強く,いまのタイミングにて本賞を頂戴いたしましたことを,私自身はご関係の皆様からの大いなる叱咤激励と受け止めている次第です.今後も微力ではございますが,現在取り組んでいる研究を通じて流体工学の深化にしっかりと繋げて参りたく,引き続きご指導およびご助言を賜りましたら幸いです.

一般表彰(フロンティア表彰)


阿部 圭晃(東北大学)

受賞理由

圧縮性流れ解析の「一様流保持」を満たす解法を開発し,また流体構造連成解析を通じ航空機設計へと展開した.一連の研究は社会実装にも波及しつつある.

受賞のコメント

 このたびは、名誉あるフロンティア表彰を賜り、誠に光栄に存じます。ご推薦・ご選考をいただきました関係者の皆様、これまでご指導くださった先生方、そして共に研究を進めてきた研究室の学生・スタッフの皆様に、心より御礼申し上げます。

 本受賞の対象となった研究は、圧縮性流れの高次精度数値解析において、一様流保持性を満たす解法の開発と、その技術を流体構造連成解析を通じて航空機設計へ応用した一連の成果に関するものです。

 遷音速大型旅客機などに見られる圧縮性乱流を伴う主翼空力性能を高精度に予測するためには、複雑形状まわりの流れ場を対象とした高次精度スキームによる非定常乱流解析が有力なアプローチの一つとなります。しかしその際、計算格子の歪みに起因して一様流保持性が損なわれるという本質的な課題がありました。本研究では、この問題を解決する汎用性の高い手法を開発し、現在では高次精度圧縮性ソルバーのオープンソースにも基盤技術として採用され、国際的に活用が進んでいます。さらに、近年はこの技術を基盤として流体構造連成解析へと展開し、複合材航空機の機体設計への応用も進めてまいりました。国内重工メーカーとの協調により開発した機体設計ソフトウェアは、海外OEMが主導する次世代旅客機開発の設計提案にも活用され始めており、こうした取り組みを通じて国内航空産業の発展に少しでも貢献できればと願っております。

 本研究は、計算流体力学(CFD)におけるブレークスルーと、その応用としての航空宇宙分野への設計技術貢献を両立した、理論と実践を結ぶフロンティア研究として進めてきたものと自負しています。このたび、その成果をご評価いただけたことを大変嬉しく思っております。

 今後は、本受賞を励みに、高精度な圧縮性流れ解析技術を次世代航空機開発や、より広範な連成現象の解明へと発展させ、流体工学を基盤とするフロンティア研究をさらに推進してまいりたいと考えております。

一般表彰(フロンティア表彰)


伊賀 由佳(東北大学)

受賞理由

旋回キャビテーション等のキャビテーション不安定現象の発生機構の解明と抑制手法の開発,ならびに,極低温キャビテーションの熱力学的自己抑制効果の解明を通じ,液体ロケットポンプの信頼性向上に資する先駆的研究を行った.

受賞のコメント

 この度は,このような名誉ある賞を賜り,大変光栄に存じます.ご推薦,ご選考をいただきました関係者の皆様,これまでご指導くださった先生方,ともに研究に取り組んできました研究室スタッフと学生の皆様に,心より御礼申し上げます.

 流動キャビテーションは19世紀末,イギリスの舶用プロペラで発見された現象で,長い研究の歴史がある故に,残された課題は大変難しい課題であると感じながら研究に取り組んでおります.私は博士学生のころより,液体ロケットターボポンプに発生するキャビテーションに注目して研究を行ってきました.またその中でも特に,超同期旋回キャビテーションは,産業用ポンプでは観察されることが無いロケットポンプ特有の現象で,通常のターボ機械で観察される旋回失速現象とは逆向きに現象が伝播し,そのメカニズムが完全には解明させていない,大変面白い現象です.また,液体ロケットの推進剤である液体水素,酸素などの極低温流体では,キャビテーションが発生すればするほどキャビテーションが抑制されるという自己抑制効果が発現することが知られており,こちらも複雑で面白い現象です.

 本受賞を励みに,これからもキャビテーションの研究に取り組み,流体工学分野の発展に少しでも貢献できるよう,精進してまいります.この度は誠にありがとうございました.

一般表彰(フロンティア表彰)


金子 暁子(筑波大学)

受賞理由

縮小拡大管を利用した微細気泡発生装置における気泡微細化メカニズムの解明およびこれを利用した環境負荷低減技術の研究を行い、先進的な業績を挙げた.

受賞のコメント

 この度はフロンティア表彰という栄誉ある賞を賜り、大変光栄に存じます。ご推薦、ご選考いただきました関係の皆様に心より御礼申し上げますとともに、これまでご指導・ご鞭撻を賜りました先生方、共同研究者の皆様、卒業生の皆様、そして研究室のメンバーの皆様に深く感謝申し上げます。本受賞の対象となりました研究は、私がポスドク時代に取り組み始めたテーマに端を発し、先生方、先輩方、同僚、共同研究先の研究者、そして研究室メンバーの皆様という多くの仲間と切磋琢磨した日々の成果であり、感慨もひとしおです。
本研究は、縮小拡大部を有する円管内における気液二相流の音速と、それが実現する流動場での気泡の膨張・収縮挙動を対象としたものです。一般に水の音速は常温常圧で約1500 m/sと非常に速いのに対し、わずかに気泡を混入させるだけで数十 m/sまで低下することに強い衝撃を受けたことを、今でも鮮明に覚えています。この現象の複雑さと奥深さに魅了され、気泡の分裂挙動やその応用可能性を探る中で、多くの研究者の方々と議論・協働する機会に恵まれたこと、また多彩な共同研究を通じて応用技術に触れることができたことは、工学に携わる者として大きな喜びでした。

 現在もなお、説明しきれていない現象や未解明の点が数多く残されており、より的確に理解・表現したいという探究心が尽きることはありません。地球環境問題やエネルギー問題において過酷な未来が予想される中で、こうした社会課題の解決に資する要素技術として発展させられるよう、学際的な展開を図ってまいりたいと気持ちを新たにしております。さらに、本研究で得た経験や成果を後進の育成にも還元し、若手研究者が自由な発想で研究を進められるような環境づくりにも尽力したいと考えています。このたびの受賞を励みとして、未知への探求と挑戦を続けながら、学術と社会の双方に貢献できる研究者を目指して、一層精進してまいります。誠にありがとうございました。

更新日:2026.1.19