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空気の重さを測るのはむずかしい1

まずは見てみよう!

どんな実験?

実験手順と種あかし

  • 風船(45cm)を使って空気の重さの実験をしてみましょう。
  • 一つの風船(赤)はふくらませない、もう一つ(ピンク)は空気を入れてふくらませます。てんびんにつるして重さを比べてみると、空気を入れた風船の方がやや下に下がります(重い)。これは、中に入っていった空気の重さの分だけ重くなったからでしょうか? これは注意しなくてはいけません。
  • 空気を入れていない赤い風船の重さは8.7gです。
  • 空気を入れた方は、9.3gです。この差の0.6gは空気の重さでしょうか? これはおかしいのです。
  • 空気を入れた風船は長さ40cmくらい、体積が約25リットルあり、重さを計算すると約30gです。何かおかしいですね。
  • 空気を入れた風船は、まわりの空気からその体積に応じた浮力を受けます。風船の体積は約25リットルで、まわりの空気から受ける浮力は約30gになります(アルキメデスの原理によれば、浮力の大きさは風船が押しのけた体積と同じ体積のまわりの空気の重さに等しい)。ただし、風船の中の空気は圧縮されて体積が小さくなっていますので、浮力は少しだけ(圧縮された分だけ)小さくなっています(動画の実験では逆算して浮力の大きさは約29.4gと推定)。
  • ですから、空気の入った風船にはたらく力は、概算ですが、
    8.7g(風船の重さ)+30.0g(空気の重さ)-29.4g(浮力)= 9.3g(表示された重さ)
    と推定されます。
  • このように、はかりに表示される重さが9.3gになったのです。空気中で物体の重さを測るときは、まわりの空気による浮力がはたらいて見かけの重さが小さくなることがわかります。
  • 「空気の入った風船と入っていない風船の重さを比較して、その差が空気の重さである」と誤解してしまうと、「空気の重さはすごく小さい、重さはほとんどない(間違い)」と思い込んでしまいます。理科を学んでいくときにこのような「間違った実感」をすることは危険です。この実験は、2つの風船の重さの違いを比較しているのではなく、「空気の重さ-浮力」の違いを比較しているのです。その違いは、風船の中の空気が圧縮されて体積が減り、その分だけ浮力が減っていることから起こっているものなのです。つまり、てんびんで測っているのは、浮力の減少量ということになります。
  • 私たちは日常生活のさまざまな場面で、空気の重さと思えることを経験していて、多くの場面で空気の重さはほとんどないと感覚的に思い込んでいます。しかし、実際には空気の重さは意外に大きく(1リットルで約1.2g、1m3で約1.2kg、気温や気圧、湿度によって変化)、感覚として感じている重さ(ほとんど0)とは大きな差があることを知っておいてください。
  • 空気の重さが大きい証拠に、強い風が吹けば飛ばされそうになる、何百トンもあるジェット旅客機の機体が空中を飛ぶことができるのは、この空気の重さがあるからです。
  • この実験動画はJSPS科研費 18K03956の助成を受けて制作しました。
【キーワード】 空気の重さ、浮力、密度
【関連項目】

大小の風船空気の重さを測るのはむずかしい2

【参考】 石綿良三・根本光正「流れのふしぎ」講談社ブルーバックス、P26-29、P42-51.
石綿良三「図解雑学流体力学」ナツメ社、P12-13、P188-189.

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更新日:2024.10.1