空気の重さを測るのはむずかしい2
まずは見てみよう!
どんな実験?
実験手順と種あかし
- ゴミ袋(45リットル)を使って空気の重さの実験をしてみましょう。
- ゴミ袋の一つに空気を入れて、もう一つは空気を入れません。てんびんにつるすと、2つの袋はつりあいます。見かけ上は「空気の重さが0(間違い)」のように思えます。
- 袋の中には約40リットルの空気が入っていて、その重さは約48gです。てんびんの実験では、この重さが現れていません。
- 袋の中の空気には、まわりの空気から浮力がはたらきます。この浮力の大きさは、袋の中の空気と同じ体積のまわりの空気の重さに等しいのです(アルキメデスの原理)。袋の外と中の圧力はともに大気圧なのです。袋をパンパンになるまで空気を入れないことがポイントで、少しゆとりを持たせておくと、中の空気も大気圧になります。そうすると、袋の外と中の空気を同じ体積で比較すると同じ重さになります(空気の密度が等しいので)。ですから、袋の中の空気の重さと浮力の大きさがつりあって、打ち消しあい、見かけの重さが0になっているのです。
- 私たちは日常生活のさまざまな場面で、空気の重さと思えることを経験していて、多くの場面で空気の重さはほとんどないと感覚的に思い込んでいます。しかし、実際には空気の重さは意外に大きく(1リットルで約1.2g、1m3で約1.2kg、気温や気圧、湿度によって変化)、感覚として感じている重さ(ほとんど0)とは大きな差があることを知っておいてください。
- なお、前の実験「空気の重さ」では、ペットボトルに空気入れを使って中に空気を送りこみました。このとき、ペットボトルのふくらみはわずかで、その体積があまり変化していない(浮力の大きさがあまり変化していない)ので、てんびんで比較しているのは近似的に注入した空気の重さということになります。
- 食品などをはかり売りで購入する際にも、まわりの空気からの浮力が影響しています。はかりに載せて測っている重さは空気の浮力を差し引いた値であり、わずかに軽く表示されています。ただし、比重が1くらいのものであれば、浮力の影響は1000分の1くらいですので、ふだんはほとんど問題になりません(1kg買うと1.2gくらいの差)。そうは言っても、軽く表示されていますから、買う人は得をして、売る人は損をしていることになります。
- 測定精度1/1000より精密な測定をするとき、金(きん)などの貴金属の売買をするときは、わずかな差でも問題になりますので、補正が必要になります。大気圧、気温、湿度から空気の密度を求めて補正するのも一つの方法です。貴金属の重さは、はかりに載せて測るのではなく、その貴金属の体積と比重から計算しているようです。比重はその貴金属の純度(他の金属がどのくらいの割合で含まれているか)によって異なりますので、精度の高い比重の値が必要になります。
- この実験動画はJSPS科研費 18K03956の助成を受けて制作しました。
【キーワード】 | 空気の重さ、浮力、密度 |
【関連項目】 | |
【参考】 | 石綿良三・根本光正「流れのふしぎ」講談社ブルーバックス、P26-29、P42-51. 石綿良三「図解雑学流体力学」ナツメ社、P12-13、P188-189. |
更新日:2024.10.1