丸い物体にはたらく揚力
まずは見てみよう!
どんな実験?
実験手順と種あかし
- 前に「ななめに浮く風船」という実験を紹介しました。ドライヤーで風船を浮かせ、ドライヤーを傾けても風船は落ちないで、浮いています。
- このとき、風船には重力、空気抵抗がはたらいています。ただ、この2つの力だけではつり合いません。もう一つ、流れに垂直な方向の力(揚力*)がはたらいてつり合っているのです。
- この場合、なぜ揚力がはたらくのでしょうか。実験してみましょう。
- 発泡スチロールの円柱を軸に通して、上下に動くように支えます。水平方向からドライヤーの風を当ててみます。真ん中の高さあたりに当てても円柱は動きません。
- 次に、少し上の方に風を当ててみます。すると、円柱が上に動き、上向きの揚力がはたらいていることがわかります。
- これは、上面に当たった風が丸い面に沿って曲がり(コアンダ効果*)、やや下向きに流出していきます。流れが下向きに曲がることの反作用で物体(円柱)には上向きの力がはたらきます(運動量理論)。
- 上向きの力が発生する理由は、流れが曲面に沿って曲がる所では流線曲率の定理(流れのふしぎp120~135参照)から円柱表面で圧力が下がることからも説明できます。
- 一説には、上下の速さの違いから揚力が発生するという説明もありますが、これは本質をとらえていません。さらに、ベルヌーイの間違った理解*を連想されることから注意が必要です。
- 「速い所は圧力が小さく、遅い所は圧力が大きい」とは限らないことをこの後の実験でも確かめてみましょう。
*揚力:流れに垂直な方向の力を揚力といいます。必ずしも上向きだけとは限りません。下向きの揚力(レーシングカーのダウンフォースなど)や横向きの揚力(野球のスライダーなど)がはたらく場合もあります。
*コアンダ効果:噴流(ホースや穴から流体が噴出する流れ)が凸な曲面に沿って流れるときに、曲面に沿って曲がりやすいという効果。
*ベルヌーイの定理の間違った理解:「速い所は圧力が小さく、遅い所は圧力が大きい」という誤解が科学書などでもしばしば見られます。詳細は「ベルヌーイの定理」を参照してください。
- この実験動画はJSPS科研費 18K03956の助成を受けて制作しました。
【キーワード】 | 物体まわりの流れの性質、揚力、コアンダ効果 |
【関連項目】 | |
【参考】 | 石綿良三・根本光正「流れのふしぎ」講談社ブルーバックス、P120-135. 石綿良三「図解雑学流体力学」ナツメ社、P206-209、P214-215、P224. |
更新日:2024.8.1