床をすべるスライダー
まずは見てみよう!
どんな実験?
実験手順と種あかし
- 床の上をすべるおもちゃ(スライダー)を紹介します。
- これは工作用紙を組み合わせて作ります(図面参考)。先頭のフックに輪ゴムをかけて離すと、すべって移動します。機体がわずかに浮いて摩擦が減り、遠くまですべることができるのです。
- 機体は工作用紙(あるいは厚紙)で作ります。上板は長さ25cm、はば15cmです。側面は長さ25cm、高さ3cmの長方形の後ろ半分を説明図のように曲線にカットして、後ろ側の高さを1cmにします(2枚作る)。上板と側面は図面のように1枚につなげて作ると組み立てが楽になります。側面を折ってセロテープでつなぎます。おもしの板は長さ6cm、はば14cmに切り、上板の前方側に貼ります。さらにクリップでフックを作り、上板に貼ります。
- これを床に置いて、輪ゴムをフックにかけて引き、手を離すと、機体は床をすべっていきます。
- なぜ遠くまですべることができるのでしょうか。機体が床の上をすべると、前から機体の中に空気が入っていきます。その流れは上板の下面にそって進み、説明図のように流線が曲がります。曲がった流線では外側ほど圧力が大きく、内側ほど圧力が小さくなります(流線曲率の定理)。そのため、上板の下面では圧力が大きくなります。
- さらに、機体の内部には正面から空気が流入しますが、後部の出口のすきまがせまくて流出するときの抵抗になります。そのため、機体内部では全体に圧力が大きくなる傾向があります。
- 一方、上板の上面では空気が下に曲がって進みます。流線が曲がりますので、曲がり
の外側で高圧、内側で低圧になります。その結果、上板の表面の圧力は低くなります。
- 以上の結果から、上板の上面では低圧、下面では高圧になり、表裏の圧力差から上板には上向きの力(揚力)がはたらきます。この揚力によって機体は床から浮くことができ、摩擦力が小さくなります。そのため、機体は遠くまですべることができるのです。
- 以上のように、わん曲した上板では上面、下面とも流れを下向きに変え、その反作用として上向きの揚力がはたらいています。このことは、飛行機の翼(よく、つばさ)の原理と基本的に同じです。さらに、下に床があり、揚力を大きくする効果もあります(地面効果)
- うまくいかない場合もあります。一般に、速いときほど揚力は大きくなります。輪ゴムを引っ張る力が大きすぎると、速く動いて揚力が大きくなりすぎて機体が浮いてしまい、失敗します。一方、引っ張る力が小さすぎると、揚力が小さくなって浮上せず、床とこすれて摩擦を受けてすぐに止まってしまいます。引っ張る力は大きすぎても小さすぎても失敗します。
- この実験動画はJSPS科研費 18K03956の助成を受けて制作しました。
【キーワード】 | 揚力、流線曲率の定理、地面効果 |
【関連項目】 | ダウンフォース |
【参考】 | 石綿良三・根本光正「流れのふしぎ」講談社ブルーバックス、P120-127、P168-169. 石綿良三「図解雑学流体力学」ナツメ社、P218-219. |
更新日:2025.6.1