ニューズレター

流れ 2014年12月号 目次

― 特集テーマ:2014年度年次大会 (2) ―

  1. 巻頭言
    (真田,横山,杵淵)
  2. 高クヌッセン数流れ(希薄気体流からマイクロ気体流れへ)
    新美智秀(名古屋大学)
  3. ワークショップ:先端熱流体計測の計算との連携を含む新展開
    早瀬敏幸(東北大学)
  4. 荷電ナノ粒子流の計測(イオン電流とトンネル電流)
    土井謙太郎,川野聡恭(大阪大学)
  5. 空力音源探査のためのファン表面圧力変動計測技術の開発
    飯田明由(豊橋技科大)
  6. プロセス・トモグラフィー法による血液循環流路内の血栓検出の可能性
    Sapkota Achyut,布施拓士(千葉大学),丸山修(産業技術総合研究所),武居昌宏(千葉大学)
  7. 最近の先端熱流体計測における高速度カメラの利用について
    桑原譲二(株式会社フォトロン)

 

最近の先端熱流体計測における高速度カメラの利用について


桑原 譲二

株式会社フォトロン

1.まえがき

  本稿は, 私が平成26年9月27日に東京電機大学で開催された「日本機械学会2014年度年次大会」のワークショップ「先端熱流体計測の計算との連携を含む新展開」にて講演(「最近の先端熱流体計測における高速度カメラの利用について」)をする機会をいただいたため, その内容をご報告するものです.

 

2.「実験」と「数値計算」の融合

  近年の電子計算機の性能向上に伴い様々な分野で数値計算による現象のモデル化が推進されている(図1). 信頼性の高いモデルを作るために欠かすことができないのが「実験」による検証作業であるが, それに関連して最近の先端熱流体計測分野では「実験」と「数値計算」の連携を高めるような計測手法の開発が盛んになっている.


Fig.1 実験と数値計算の連携

 例えば熱流体計測分野において代表的に計測される物理量として「速度」「温度」「圧力」等がある. 「速度」では熱線流速計(HWA)・レーザードップラー流速計(LDV)・粒子画像流速計(PIV/PTV), 「温度」ではレーザー誘起蛍光法・赤外線放射温度計測法・2色温度計測法・感温塗料, 「圧力」では接触式のセンサー・感圧塗料といった測定方法が用いられているが, 近年はそれを複合的に扱った同時計測手法の開発が盛んである.

 

3.「感圧塗料」と「感温塗料」

  中でも特に近年注目が集まっているのが「感圧塗料」と「感温塗料」である.

  前者は特に, 周囲の圧力強度(酸素濃度に相当)に応じて発光強度が変わる蛍光塗料を塗布することによって, 従来は接触式のセンサーをアレイ状に並べることでしか得られなかった面分布としての圧力情報を比較的簡単に得られる方法として知られている[1]. 主に航空機などの空力性能を得るために風洞実験で使用されるが, PIV/PTV法との同時使用によって空間の速度分布と境界面の圧力分布を同時に取得することが可能になる.

  後者は, 従来の計測手法では課題や制限の多かった面分布としての温度情報を得られる方法として注目を集めている. 流体中の温度場計測にはレーザー誘起蛍光法などの適用も可能であるが, これは比較的高温場には適用が難しく, PIV/PTVとの併用をする場合に蛍光染料の選択に制限がでる問題もあった. また気体を対象とした温度計測には適用が難しい課題もある. 特に感温塗料をトレーサー粒子に焼き付けた「TSPartile(Temperature Sensitive particle) [2]」は流速をPIV/PTVにて測定し, 温度を感温塗料からの燐光寿命にて測定することで流速と温度の完全な同時計測を実現している.

 

4.高速度カメラの役割

  感圧塗料や感温塗料の開発が盛んになっている理由のひとつに, 高速度カメラの性能向上が挙げられる. 前述した感圧塗料や感温塗料について, 面分布としての圧力や温度を計測する場合には高速度カメラなどの装置を利用することになる. 感圧塗料は塗料そのものや塗布方法の改善により数kHzオーダーの変動にも追従できる応答性を備えるようになっているが, それに対応する高速度カメラの性能もフルフレームでメガピクセル以上の解像度を保ちつつ数kHzの撮影速度が実現できることが望まれる. 感温塗料の場合, 燐光寿命のオーダーが数μから数10μ秒オーダーであるため, やはり高速度カメラの性能にも高いものが要求される. また, どちらの場合にも元々の発光量が大きくないところを高速な撮影速度で撮影をすることになるため, イメージセンサーに高い感度を要求する.

  手前味噌ではあるが, 一例として弊社株式会社フォトロン製のハイエンド高速度カメラ「FASTCAM SA-Z」はフルフレーム(1024x1024ピクセル)での撮影速度が20000FPS, かつ, 非常に高い感度(十数年前の高速度カメラの約20倍)を実現しており, 感圧塗料や感温塗料との組み合わせに適した装置となっている(図2).


Fig.2 株式会社フォトロン製ハイエンド高速度カメラ「FASTCAM SA-Z」

 

5.終わりに

  本稿では先端熱流体計測における高速度カメラの利用現場において, 最近特に注目が集まっている「感圧塗料」と「感温塗料」について紹介をした. 本稿で取り上げた以外にも数多くの計測手法があるが, 前述したとおり「実験」と「数値計算」の連携のためにはこれらの複合計測手法の開発の進展が求められており, 今後の更なる技術の発展に期待したい.

 

参考文献

[1] Crites,R.C., Pressure Sensitive Pint Technique, von Karman Institute for Fuild Dynamics Lecture Series (1993).
[2] Someya S., Uchida M., Tominaga K., Terunuma H., Li Y., Okamoto K., “Lifetime-based phosphor thermometry of an optical engine using a high-speed CMOS camera”, International Journal of Heat and Mass Transfer, Vol. 54 (17-18), pp. 3927-3932, 2011.
更新日:2014.12.15