新型コロナウイルスに負けるな5(小さな粒子を水に沈める)
まずは見てみよう!
どんな実験?
実験手順と種あかし
- 新型コロナウイルスの感染拡大が問題になっています。その対策として3密(密閉、密集、密接)を避けることが求められています。その背景に、新型コロナウイルスが長時間空中に浮遊するということがあります。そのため、密閉、密集、密接を避けるのです。今回の実験は、小さな粒子の落下速度に関係するものです。
- 日本画の岩絵具を使って、水に沈む速さについて実験してみます。岩絵具とは、岩石を細かく砕いたものなどで、これをニカワ(固着させるため)などと混ぜて使います。粒子の大きさで番号(通常5番から13番と白)が付いていて、番号が大きいほど小さな粒子になります。
- 今回用いた青い粉は群青の特荒目(5番相当)、6番、7番、12番です。
- それぞれを水といっしょに容器に入れておきます。これらをさかさまにして沈む速さを比べます。小さな粒子ほどゆっくり沈むことが確認できます。
- 物体を沈めたり、落としたりするとき、初めは加速していきますが、やがて重力と水の抵抗(または空気抵抗)が同じ大きさになると一定の速さで落ちていきます。これを終端速度といいます。非常に小さな粒子では短時間で終端速度に達します。今回の12番などはすぐに終端速度に達しているものと思われます。
- 粉の粒にはたらく水の抵抗の大きさは、粒の大きさ(長さ)のほぼ2乗に比例するという性質があります(たとえば、大きさが2倍なら水の抵抗はおよそ4倍になる)。
- 粉の粒にはたらく重力の大きさは、粒の大きさ(長さ)の3乗に比例するという性質があります(たとえば、大きさが2倍なら重力は8倍になる)。つまり、粒が大きくなるほど重力は非常に大きくなります。水の抵抗の大きさが大きくなるのよりも重力のほうがもっと大きくなります。そのため、同じくらいの密度の粒では、粒の大きなものほど速く沈むのです。逆に、小さなものほどゆっくり沈みます。
- 12番は非常にゆっくり沈みます。12番の粒子の大きさは15~20μm(1マイクロメートルが1000分の1ミリ)、およそ100分の1.5~2ミリくらいです。
- これに対して、新型コロナウイルスはおよそ100 nm(ナノメートル、1nmは100万分の1ミリ)で、およそ1万分の1ミリという非常に小さな粒子です。12番の岩絵具のおよそ150~200分の1くらいの大きさです。今回の実験と比べると、粒子の大きさ以外に、水と空気、粒子の密度、形などが違うのですが、大ざっぱな計算(量子論は用いていない)では、新型コロナウイルスが空気中を落ちる速さは今回の12番のおよそ10万分の1くらいとなり、桁違いに遅いことがわかります。
- このように新型コロナウイルスが重力で落ちる速さは非常に遅いのです。また、人が動いたり、空気が動いたりしたら舞い上がりますので、重力で床に落ちることは期待できないと考えたほうがよいでしょう。
- 空気中にウイルスがただよっている可能性があれば、ともかく換気をすることが重要になります。
- この実験動画はJSPS科研費 18K03956の助成を受けて制作しました。
【キーワード】 | 抗力、水の抵抗、終端速度 |
【関連項目】 | ふしぎな粉、大きい球と小さい球2 |
【参考】 | 石綿良三「図解雑学流体力学」ナツメ社、P72-75. |
更新日:2020.8.1