流れの読み物

Home > 流れの読み物 > 楽しい流れの実験教室 > かんコーヒーを斜面でころがす

かんコーヒーを斜面でころがす

まずは見てみよう!

どんな実験?

実験手順と種あかし

  • 常温のかんコーヒー(液体)とこおらせたかんコーヒー(固体)を斜面でころがしてみます。どちらのほうが速くころがるでしょうか?
  • ころがしてみると、常温のかんコーヒー(液体)のほうが速くころがります。
  • こおらせたかんコーヒーでは、固体なのでかんが回転しはじめるといっしょに中の氷も回転します。
    はじめの高さのエネルギー(位置エネルギー)は回転のエネルギーと前進のエネルギー(運動エネルギー)に変わります。
  • 常温のかんコーヒーでは、液体なので変形することができ、外側が回転しても中の液体はあまり回転しないでいられます(慣性という性質によって運動しにくくされている)。回転のエネルギーは小さくなり、その分のエネルギーを前進のエネルギーで使えるのです。そのため、速くころがることができるのです。
  • こおらせたほうは、回転のエネルギーに取られてしまう分だけ遅くなります。
  • 中の液体がまわりにくいという原理(液体と固体の違い)は「たまご回し」の原理と同じです。
  • この実験の原理を「慣性モーメント」(大学の物理で習う)という概念で説明することもできます。慣性モーメントとは、物体の角速度(回転の速さ)を変化させるときの変化させにくさを表していて、慣性モーメントが大きな物体ほど、回転をスタートさせにくく、回転している場合には減速しにくくなります。今回の実験では、中が固体の場合、回転部分が多いので慣性モーメントが大きく、回転が速くなりにくいと言えます。そのため、加速が悪くなったのです。一方、液体の場合は、実質的な回転部分が少なく慣性モーメントが小さくなり、加速しやすくなったのです。
  • この実験動画はJSPS科研費 18K03956の助成を受けて制作しました。
【キーワード】 液体と固体、粘性、慣性モーメント
【関連項目】 たまご回し
【参考】

石綿良三・根本光正「流れのふしぎ」講談社ブルーバックス、P12-15.

石綿良三「図解雑学流体力学」ナツメ社、P10-11.

次の実験へ ▶

更新日:2025.12.1