流れの読み物

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流れ 2000年11月号 目次

― 特集 自然エネルギー ―

  1. ネパール・ブジュン村の極小水力発電所建設
    (中瀬 敬之 前徳島ネパール友好協会会長,徳島大学工学部)
  2. 急進展する風力発電 陸から海へ
    (牛山 泉 足利工業大学)

― 研究会紹介 ―

  1. 研究会紹介 : 「新エネルギー研究会」が発足
    (林 農 新エネルギー研究会 主査,鳥取大学工学部)

― 海外研究動向 ―

  1. : ライス大学滞在記
    (野々下 知泰 上智大学)
  2. 海外研究動向 : Imperial College...そしてパブ
    (川添 博光 鳥取大学)

― 開催行事報告 ―

  1. : 風に負けるな,水を超えろ! 第6回 流れと遊ぶアイデアコンテスト
    (石綿 良三 神奈川大学システムデザイン工学科)

 

  1. 第78期流体工学部門講演会報告
    (実行委員長 杉山 弘 室蘭工業大学)
  2. 78期流体工学部門賞の選考と授与
    (総務委員会委員長 重河 和夫 ㈱神戸製鋼所)
  3. 学生の欄 : 実験流体力学トークインに参加して
    (細野 晃裕 岐阜大学大学院工学研究科)
  4. 開催予定行事案内
  5. 広報委員会からのお知らせ

 

第78期流体工学部門講演会報告

▲実行委員長
杉山 弘
(室蘭工業大学)

 21世紀の流体工学を展望する2000年の部門講演会が,平成12 年9月8日(金)~10日(日),室蘭工業大学で,約450名の参加者を得,大盛況のうちに終了しました.ここでは,本講演会を開催するに至った経緯,講演会の概要,感想等について述べてみたいと思います.

〈経緯〉

 流工部門の技術委員会で,鳥取の次は北海道で開催して頂けないかとの打診を受け,北海道の先生方と相談した結果,本州から参加される方々の交通の便,運賃の安さ,流体関係のスタッフの多さなどを考え,室蘭工大で引き受けることにしました.日程については,土,日をはずしたらとの意見も一部ありましたが,他学会の行事,各大学の行事,運営費を安くあげるなどを考慮し,9月上旬の土,日に行うことにしました.

〈市民フォーラム〉

 社会に対し流体工学の最新の成果,情報を発信するために,市民フォーラムを,日本機械学会北海道支部と合同で企画することにしました.テーマは,北海道や地元室蘭で関心の高い「風力エネルギーの現状と将来」で,講師はこの分野で署名な清水教授(三重大),地元から岸浪教授(室蘭工大),吉田部長(日本製鋼所室蘭)にお願いすることにしました.日時は, 1日目の9月8日(金)の午後1時半から4時半.本フォーラムに対する関心は高く,一般市民,企業技術者,市役所関係,大学関係者,学生など約90名の参加がありました.その内,約半数が一般市民,地元企業技術者であったことより,本フォーラムの目的は達成されたと思います.夜,新装になった大学会館のレストランで,懇親会を,北海道支部流体工学懇話会,マイクロEFD研究会と合同で行いました.40名を超える参加者があり,「試される大地北海道(頭)」などの話題で大いに盛り上がりました.

〈基調講演と特別講演〉

 2日目の9月9日(土)に行われた基調講演のテーマは「流体工学の将来」で,講師はこのテーマに最も相応しい木谷教授(北大).この基調講演は大盛況で,定員210名の視聴覚講義室は立ち見がで,廊下でも何人かの人達が聴いておられたとのことです.流れ現象の研究は,多様性があり,重要で,複雑で,面白い.若い人達は,未開拓の分野にチャレンジ精神をもって取り組んでほしいと,述べられました.なお,講演内容は,講演概要集とCD-ROM版講演論文集に載っております.
 特別講演は3日目の9月10 日(日)に行われました.タイトルは「将来型宇宙輸送システムについて」で,講師は,この分野の第 1人者である文部省宇宙科学研究所の棚次教授.棚次先生は,将来型宇宙システムとしては,空気吸込み式エンジンを搭載した再使用型スペースプレーンが望ましい,推進機関の革新なくして,輸送システムの革新はあり得ない,エンジンの研究開発には,機械工学,流体工学が非常に関与している,この研究開発に多くの機械技術者の参加をお願いしたい,と述べられました.この講演も大変関心を呼び,講演会場はほぼ満員の状況でした.


▲写真1 講演会が催された講義棟全景

〈学術講演と機器展示〉

  流体工学の広い分野をカバーするために,また本講演会を盛り上げるために,オーガナイズドセッション(OS)とワークショップ(WS)をいろいろな分野で企画して頂くことにしました.その結果,圧縮性流れ,宇宙往還機,無重力環境下の流動現象,流れの計測・制御,流力振動,せん断乱流,流体の抵抗減少効果,流体機械,キャビテーション,多孔質内の流動,非ニュートン流体,混相流,分子流の分野で13のOSが企画されました.各オーガナイザーのご努力と講演を申し込んで頂いた方々のお蔭で,OSとGS(一般セッション)を合わせ,271件もの多くの研究発表が行われることになりました.
 ワークショツ ブ(WS)として,自然の流体エネルギー,水中衝撃波の医療応用,ジェットエンジンを用いた学生実験,若手研究者・技術者のためのEFD(はく離流),流体関連振動と流体騒音に関する5つの興味ある分野で,OSが企画されました.これらのOS,GS,WSの発表は,1日半にわたり,1講義棟で,8室を使い,パラレルで行われましたが,何れの室でも熱心に,遅くまで発表,討論が行われておりました.全体の20~30%の発表者は,最新の液晶プロジェクターを使って発表していた状況です.
 本講演会の特徴として,航空宇宙分野の研究者の参加がかなりあり,機械と航空宇宙工学分野の融合を図ったこと,論文集の CD-ROM化を定着させたことなどが挙げられるでしょう.
 機器カタログ展示は,比較的人目のつく,会場(講義棟)の2階で行われました.展示内容は,ヘリコプタの模型,PIVシステム,コンピュー画像処理,測定機器,カタログなどで,2日間で200名以上の参加者が訪れたとのことで,企画はうまくいったようです.

〈懇親会〉

 前もっての申込み者は約60名であったが,当日の参加者は160名を超え,流工懇親会始まって以来の大盛況の会となりました.沖縄,九州をはじめ全国各地から顔馴染みの方々や,新しいメンバーが多く参加されました.懇親会は,実行委員長である筆者(杉山)と流工部門長の深野先生(九大)の挨拶,室蘭工業大学の田頭学長と室蘭市の村上助役の歓迎の挨拶,途中,流工部門の各賞の表彰などがあり,少し時間が掛かり過ぎましたが,約 50分後に懇談に入りました.懇談会では,久し振りに会ったこと,研究のこと,室蘭の今昔,講演会のことなどあちこちで話は盛り上がっておりました.「この講演会と懇親会をみている限り,流工部門は活性化しているナ」,「室蘭の街と室蘭工大は20年の間にずいぶん変ったナ」と何人かの方々が言っておられたのが,印象に残っております.会の終わり近くに次回実行委員長である南部先生(東北大)のスピーチと,北海道支部長の木谷先生の閉めの挨拶があり,懇親会は終了しました.

〈終わりに〉

  本講演会(以前は流工・流機講演会と呼んでいた)は,21年振りに室蘭工大で開催されました.21年前と比べ,講演会室の数と発表件数は約3倍に増加していること,企画は,市民フォーラム,OS,WS,機器展示など多彩になっていること,講演発表でITの波(ディジタル化)が確実に進行していること,などが実感されました.当日の運営は,2日目の午前中に,450 冊の講演論文集が売り切れてしまい,何人かの参加者にご迷惑をお掛けした以外は,首尾よくいったと思います.本講演会が,流体工学部門の活性化に些かでも貢献したなら幸いです.
 終わりに,本講演会の準備のために多くの時間を費やされた,また担当されたそれぞれの仕事を熱心に,丁寧に,手際よく行って頂いた実行委員各位,学会本部職員の方々,アルバイトの学生諸君に謝意を表します.また,財政面で援助して頂いた室蘭市,機器カタログ展示でご協力頂いた企業の方々に感謝申し上げたいと思います.


▲写真2 参加者で一杯になった基調講演会場

▲写真3 懇談会の様子
更新日:2000.11