流れ 2003年1月号 目次
― 特集1.流れのコントロール ―
― 特集2.学生の流体工学研究 ―
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アート志向サボニウス風車の展開
協同組合プロード 増田頼保
『空気の流れの中に彫刻を置くとどうなるか?』
そんな素朴な興味からモニュメント型の風力発電機を始めました.流体関係の学者や先生から見れば,協同組合プロードメンバーは素人の集まりでした.協同組合と言っても,異業種交流組合で色んなジャンルの職業を持った中小企業の事業者の集りです.
1. 活動と実績
プロードのこれまでの活動と実績をご紹介すると共に,これから行なおうとする事業展開をご披露して,皆さまにも一緒に参加していただこうと思います.
プロードは,異業種交流組合として1994年発足しました.大手遊具会社の下請け企業同士が集まり結成したのですが,バブル崩壊と同時に公共事業の減少等で全て縮小もしくは中止になり手詰まり状態になったため,提案型企業を目指して更なる組合員の増強を図り,私の提案で1995年にモニュメント型の風力発電の開発に着手しました.
図1.アーケード街の風車 |
図2.会議場や教育機関のモニュメント |
これまでの活動で,実際販売したモニュメント型風力発電機の数はまだ少なく,数えるほどしかありませんが,この研究開発をしたことによって繋がった人脈は数知れません.特に,福井大学工学部を始め,福井県工業技術センター,福井県立大学,京都大学,足利工業大学,三重大学,東海大学,島根大学など多くの教授陣との交流の他に,NHKや大手新聞などメディア関係,日本風力エネルギー協会,NPOの方々とも幅広く交流することが出来ました.その交流がきっかけで,プロードの応援をしていただけることになりました.
また,JICAを通してアフリカのタンザニアにまで直線ダリウス型風車を輸出することになり,発足当初に予想していたよりもはるかに,たくさんの人々に影響を与えたのではないかと実感している次第です.
2. 可能性と多様性
もの造りのプロ集団がプロードでありますが,このプロードは色んな方向性を内蔵しております.例えば,鉄工所や設備業,オートメーションシステム従事者など異業種交流と言う視点で見るとよくお解りいただけるでしょう.中小企業の集まりでも全く異なる分野の職業の多様性は,自ずと幅の広い付きあいが可能になります.
風車の研究開発から出発したことで,発電機,ベアリング,羽根形状,ブレーキ,システム構成などの各部に対する企業としてのコンセプトが生かされています.
〈発電機部分〉
・起動風速の弱いところでも発電可能な発電機の開発.
〈羽根部分〉
・見た目に美しい形を追及した羽根形状の開発.
〈機械装置部分〉
・全体重量を浮かすリニア方式のベアリングの開発.
・ 強風対策に磁石を使った摩耗しないブレーキの開発.
・微風時には彫刻としての形を楽しみ,適風時には最適に発電し,強風時では発電よりも回生ブレーキを働かせて電気を有効に利用するシステムの開発.
3. 協同組合プロードの展開
このテーマのポイントは,人々の心の問題と相関関係にあると思います.何を捨てて何を残すのか?どう生きることが幸せなのか?満足するということはどういうことなのか?開発することと同時に,生み出されたものがどのように使われるかを考えるべきです.
私たちは,人々に楽しみながら利用してもらいたいという気持ちから,参加型の利用を可能にすることも大きなコンセプトであると考えています.つまり,地域ごとに文化や歴史が違う人達と一緒にデザインから考えるということです.このような環境の下で,もの造りをする側も考えるべきなのです.
同じような製品が至るところにあることは,大量消費・大量廃棄を招いた結果です.ものを大事に使うことで全体のその寿命が延長されます.また,リサイクル出来る素材を選ぶことも社会全体を考慮すると重要なことです.ただ安いものをたくさん作れば大儲けが出来ると考えるのは,もう終わりにしないといけないでしょう.価格の上でも,品質の点でも,中国を始め後発の工業国にどんどん追い上げられてきました.
むしろ日本のこれからのあり方は,製品やサービスを通して人間同士が繋がる関係を築くことが最も大切なことだと思います.そこには,企業の思想全てが見えてきます.地域に住んでいる人が喜ぶ関係を築くことに,新しいビジネスのあり方が生まれるのです.それを御手伝い出来るのが,提案型企業集団プロードの大まかな説明です.
私たちは,自然を通して同じような夢を追いかけているのではないでしょうか?自分の価値観に照らし合わせると,じっとしていられなく正しいと思った行為を実現することで,理想の世界が一歩ずつ近づいてくるのです.こんな素敵なことを,色んな人に勧めたいと考えるのが普通です.
しかし,世間には偏向的な考えを持っている人がいるのも事実で,どのようにしたら肩に力を入れずに勧めるかを考えると,一緒に何かをつくる喜びを分かち合いたいのです.もちろん人によっては,価値観が違うので私の考えることが全て正しいとは思いませんが,経験的に過去を振り返ってみると,その時その時の行動と共に新鮮に記憶が甦ってきます.
何かに感動し,心が揺り動かされたときに生きている意味を感じるのです.
その舞台を作るのが,『協同組合 プロード』だと考えます.単なる発電所を作るために一生懸命活動しているのではなく,そこで何が生まれるか?どういう人間関係が作れるか?ということを中心に活動しています.
多くの自然エネルギー発電所を作ってどういう夢が描けるか?どのような夢を膨らますことが出来るかを私たちは考えています.
そしてさらに,交流を通してソーラークッカーの熱でバーベキューをすることもでき,自転車を漕ぎそれにより発電した電気を利用してコンサートを開くことさえも出来ます.色々な企画ものを打ちながら多くの人と繋がることができます.1人で食事するのも10人で食事するのも,1人当たりのお金は同じですが,そこにかけがえの無い『交流の場』が生まれます.
お問い合わせ:------------------------------------------------------------
協同組合プロード 〒918-8173 福井県福井市下江尻町21-13-3 TEL0776-38-6166
自宅 〒915-0228 福井県今立郡今立町大平2-4-89 TEL0778-43-0717