流れ 2015年11月号 目次
― 特集テーマ:2015年度年次大会(その1) ―
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流れを視る医療用・バイオ用ディスポーザブル型流量計
中西 哲也
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1.はじめに
医療分野における流量計測には,血流量や透析液の流量計測などの用途があるが,チューブポンプなどの定量ポンプの設定値から流量を算出していることが多い.チューブポンプは,ゴム製品であるチューブの劣化により誤差が拡大していく傾向があり,モレや吐出不良などの検知もできない.
実際に流量計測をおこなうディスポーザブル型血流量計に関しては,ファラデーの電磁誘導の法則を計測原理とした電磁血流計と超音波トランジェット法を用いた超音波トランジェットタイム血流計などがあるが,ともに幅広く使われている印象はない.用途が限定されている,扱いにくい,計測精度が高くないなどの理由により,主に研究用途で使用するに留まっているものと推察する.
しかしながら,医療現場では血流量や透析液,治療薬などを手軽に流量計測したいとの声があり,手軽に扱えるディスポーザブル構造の流量計が求められている.
さらに臓器潅流保存装置,再生医療分野の細胞培養装置などの様々な用途においても,流量計測ニューズは高まってきている.
2.ディスポーザブル型流量計の構成
(1) ディスポーザブル構造
ディスポーザブル流量計は、接液する部分のみを交換可能なディスポ流路チップとし,その他の計測回路等を電磁流量計本体とした2つのハードから構成している.ディスポ流路チップを電磁流量計本体にセットし,電磁流量計本体より磁界を発生させ,ディスポ流路チップに磁束を与えることにより,流れる流体の流速に応じた起電力をディスポ流量チップ内の検出端子にて検出する.
ディスポ流路チップは,磁束貫通部分が厚くなると,その分磁気抵抗が増し,磁束強度と共に検知電圧が低下してノイズの影響を受けやすくなり,流量検出の精度が低下する.そのため,ディスポ流路チップの磁束貫通部分を薄くすることにより,脱着時における流量検出の誤差を低減することができる.
図1 ディスポーザブル型流量計 概要 |
表1 目標仕様
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(2) ディスポ流路チップ
ディスポ流路チップは,メイン樹脂プレートと2つのサブ樹脂プレートの3つのプラスチック部品 から構成される.メイン樹脂プレートに電極をインサート成形し,サブ樹脂プレートには溝を形成することで, メイン樹脂プレートとサブ樹脂プレートのプレート間に流路を構成する.メイン樹脂プレートとサブ樹脂プレートの接合には,衛生面を考慮して,熱圧着にて接合している.樹脂材料には成形時での寸法安定性が高いCOC樹脂を採用することにした.
図2 試作したディスポ流路チップ |
表2 ディスポ流路チップの構成
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3.2流路の計測精度
今回試作したディスポ流路チップの2流路の計測精度を確認した.
目標の流量範囲(10~250mL/min)において,水温25℃の条件下で±0.1%以内(校正後)であることが確認できた.
図3 2流路の精度グラフ
4.おわりに
ディスポーザブル型流量計は,流量範囲,接続方法などに汎用性を持たせ,様々な用途で貢献していくことを目標としている.肝臓などの臓器保存における流量制御・監視,血液透析患者に対する負担軽減をおこなうために透析時の血流を監視する,細胞培養の培養液の循環量を管理・監視する,などの用途でも流量計測ニーズが高まってきている.
それゆえ,医療現場・細胞培養施設において,流量計測の知識がない看護師・技師の方などでも,簡単にディスポ流路チップを交換でき,衛生面を気にすることなく,流量計測がおこなえる環境を作り上げていきたい.今後は、量産化を目指した課題に取り組み,ディスポーザブル型流量計の実用化を目指していきたいと考える.
5.参考文献
(1) | M.K.BEVIR,The theory of induced voltage electromagnetic flowmeters, J.Fluid Mech(1970),vol43,part3,pp.577-590 |