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流れ 2025年2月号 目次

― 特集テーマ:流体工学部門講演会(その1) ―

  1. 巻頭言
    (朴,松田,洪)
  2. ロケット推進系の今と未来 ~ JAXA角田宇宙センターの取り組み ~
    冨田 健夫(宇宙航空研究開発機構)
  3. 第21回 流れの夢コンテスト 癒しのmoment
    土方 翔真(明星大学)
  4. 別の視点から考えたSDGs

    山田 友衣,渡邊 泰知,川田 治斗(日本大学)

  5. 流れの夢コンテスト体験記
    神戸 理志,松嶋 太郎(金沢大学)

 

第21回 流れの夢コンテスト 癒しのmoment

土方 翔真
明星大学

1. はじめに

 私たちは2024年11月19日に新潟県長岡市で開催された第21回流れの夢コンテストに「明流星」のチーム名で参加した.
「明流星」は,明星大学理工学部総合理工学科機械工学系の3年生2名と修士2年生1名で構成されたチームである.私たちは,すべての人に癒しを与えることを目的とした「ウォーターベッド風マッサージ機器」を制作した.

2. 製作理由

 第21回流れの夢コンテストのテーマは,「流れの力でSDGs達成に貢献しよう」であった.SDGsには17個の目指すべきゴールがある為,私たちはまずどのゴールを目指すのかを決めるところから始めた.

 今回,私たちは「全ての人に健康と福祉を」を目指すべきゴールにすることにした.この「全ての人に健康と福祉を」を達成するためには健康について知らなければならない為,調べた.WHOが定義している健康とは「病気でないとか弱っていないということではなく,肉体的にも精神的にもそして社会的にも全てが満たされていること」を指しており,私たちは肉体的にも精神的にも満たされる事象を考え,マッサージと睡眠を取り上げ,マッサージ付きウォーターベッドに着目した.

 しかし,市販のマッサージ付きウォーターベッドは医療用のものが多く,高価である.そこで私たちは安価にマッサージ付きウォーターベッドを再現し,世界中の人に癒しを届けたいという思いで今回の作品を制作した.

3. 作品について

3.1 装置
 今回,私たちが制作したウォーターベッド風マッサージ機器が図1である.高さ950mmの円筒アクリルケースに水位800mmで水を入れ,ゴム膜を上部に装着した.3mm径のシャフトにプロペラを取り付け,モーターを用いてシャフトを回転させ,ジェットを起こしマッサージを再現した.


図1 制作装置

3.2 プロペラ
 私たちが初め重要視していたのはプロペラである.水中にプロペラを沈め,モーターを用いて回転させることでジェットを起こせると考えていた.

 しかし,上手くいかなかった.当初,市販のプロペラを使用していたが,渦が発生してしまった.その為,プロペラは3D-CADと3Dプリンターを用いて様々な形状を試行錯誤することにした.今回,私たちが制作したプロペラが図2である.


図2 プロペラ4種類

 プロペラの羽の角度を上げ,螺旋状にする.また,4枚羽にすることで水流は強くなったが,ジェットではなく渦が発生してしまうのは変わらなかった.

3.3 筒
 私たちは,プロペラのみでジェットを発生させることは困難と考え,市販の水槽用ジェットからプロペラを囲む筒を重要視することにした.今回,私たちが制作した筒が図3である.


図3 筒3種類

 筒の出口に障害物を設置したデザインと下を半球にしたデザインは市販の水槽用ジェットを参考に制作した.
また,筒の下に穴を空けていないものは筒なしの場合と変わらず,良い結果を得ることができなかった.

 

3.4 結果
 今回,制作したジェットと理想としている市販の水槽用ジェットを図4,5に示す.また,プロペラと筒のパターン別マッサージ強弱表を表1に示す.


図4 理想ジェット


図5 現実ジェット


表1 パターン別強弱表

 今回,私たちが制作したジェットは理想のジェットと比べ,中央に渦が発生しているのが図4,5からわかる.しかし,筒を取り付けることによって,筒の淵に水が当たり垂直方向に噴き出すようになった.これにより,擬似的にジェットを発生させることができ,マッサージ機能を再現することができた.また,筒の出口に障害物を設置することによりバブル的な効果も再現することができた.

3.5 制作にあたり苦労した点
 今回,この作品を制作する上で最も苦労した点はジェットによるマッサージ効果を再現することである.初め,プロペラのみで実行してみると渦になってしまい,プロペラの回転方向やモーターの出力,プロペラの形状を変えるなどの試行錯誤をしたがどれも上手くいかなかった.そこで筒を設計したら,渦はできるものの図5のように噴き出していることが確認できた.

 また,水位をアクリルケースと同じ高さに設定すると振動を感じなくなるやモーターの出力を上げすぎると筒ありでも噴き出すことなくマッサージ機能を消してしまうなど条件によって起こる現象が違うため,改めて試行錯誤を繰り返し,作品を完成させることに成功した.

4. まとめ

 私たちは流れの夢コンテスト参加にあたって,ジェットを用いてマッサージ機能を再現し「ウォーターベッド風マッサージ機器」を制作した.

 今回,作品の規模を手のひらサイズで制作を行った為,装置を増やして規模を全身サイズにしたり,モーター音が大きい為,防音対策をするなど今後,改良を重ねていけば全身で更なる癒しを感じることのできるマッサージ機器になれると期待している.

5. 謝辞

 今回,流れの夢コンテストに参加をし,貴重な経験をさせていただけたのは,第21回流れの夢コンテストを運営してくださった実行委員の方々のご尽力のおかげであるため,心より感謝申し上げます.

 また,このような栄誉ある賞を受賞できましたのは、私一人の力ではなく,メンバー全員の協力があってこそだと身にしみて感じています.本当にありがとうございました.

更新日:2025.2.27