ニューズレター

流れ 2011年4月号 目次

― 特集テーマ: 流れの夢コンテストの10年 ―

  1. 巻頭言
    (塚原,菊地,久芳)
  2. 夢コンの舞台裏と表舞台あれこれ
    松村 昌典(北見工業大学)
  3. アイデア一本を何十倍にも面白く見せる方法
    村井 祐一(北海道大学)
  4. 尺八の発音と息流ジェットの挙動の観察 〜流れの夢コンテストに参加して
    植松 洋一,鹿野 一郎,高橋 一郎(山形大学)
  5. 流れの夢コンへの挑戦
    望月 修(東洋大学)
  6. 流れの夢コンテストに参加して
    杉本 康弘,佐藤 恵一(金沢工業大学)
  7. 流れの夢コンテストへのチャレンジ 〜参加者と実行委員の立場から
    鵜飼 涼太,長田 孝二,酒井 康彦(名古屋大学),久保 貴(名城大学),寺島 修(名古屋大学)
  8. 第10回流れの夢コンテストに参加して
    早水 庸隆,西田 五徳,丹波 享,石田 憲保,仲田 悟,松田 達也,安田 直幸(米子高専)
  9. 流れの夢コンテストへの挑戦と成果
    渕脇 正樹(九州工業大学)

 

流れの夢コンへの挑戦


望月 修
東洋大学

 確かに挑戦しました.ただし,タイトルから受ける印象のようなスポーツ的,根性物語的なものではありません.本来,私はこういったイベントは大好きで,出たがりなだけです.したがって,募集を見ると学生達に「出よう」と誘いますが,これよりおもしろいことをたくさん知っている今の学生はなかなかのってきません.のりの良い学生が私にだまされたときだけ「夢コンに挑戦」したという話です.つまりタイトルの挑戦は,学生をいかに夢コンに参加させるかという大げさに言えば私の挑戦物語です.

 私ののりに火を付けるのが毎回提示されるテーマです.その点,毎回の企画,実行委員の皆様のテーマの絞り出しには頭が下がります.でも想像すると,テーマを考えるときほど楽しい議論はないだろうと思いますので,うらやましい気持ちにもなります.さて,初めて参加したのは,流れの夢コンテスト2002〜ドリーム・マシーン〜(2002.11.17名古屋国際会議場)でした.なんとテーマがドリ−ム・マシーンではありませんか.いかにも夢が広がる,私のお祭り気分を高めるのに十分魅力ある響きのテーマでした.この時点で,頭についているタイトルは完全に吹き飛んでおり,単に「ドリーム・マシーン」という言葉だけが私の心を占めておりました.当時,私は東洋大学工学部機械工学科に教員として北大から転入したばかりで,研究室の学生達は私の専門が何でどのような卒論をやるのかを知らずに入ってきたもの達ばかりでした.研究室の名前は「生物機械システム研究室」でバイオミメティクスをやると研究室配属を決めるための案内には書いてありました.したがって,なにやら聞いたことのない言葉にだまされてきた学生達で構成された研究室であったわけです.研究室立ち上げ時の私ののりは最高潮でその毒気に研究室の学生たちは当てられっぱなしでしたから,ドリーム・マシーン作るぞ,という一言で2人の学生が素直にやります(後で聞くと無理矢理引きずり込まれたらしい)と,のってきました.

生物機械+ドリーム・マシーン+お祭り=サイボーグ人間を作り上げたマッド博士の研究

この図式が瞬間的に出来上がり,後はいかにそれを学生に理解させるかということだけでした.人工心臓や人工脳をつけたドリーム・マシーンのサーボーグが動き回ったらおもしろいだろう?人工臓器に栄養や情報を送り込むパイプをつけてそれをコンピュータで制御するマッド博士が居たらすごいだろう?などと,SF映画の世界を実現しようと言いましました.一人が,頭や心臓にパイプをつなげ,サングラスをして黒のスーツを着て無表情のサイボーグ人間に仮装.もう一人は頭から足先までクリーンルーム用の防塵服で身をくるみ,さらに防塵マスクとゴーグルを付けたマッド博士であるDr. Bioにふん装.これで大賞(この時点で賞の名前も変わっている)間違いなし,というわけで名古屋に向かう新幹線の中で,学生達に衣装に着替えろと指示.しかし,いやだというのでしかたなく演技指導をして,その気にさせ会場に乗り込みました.・・会場に入ったとたんに,あれ?雰囲気違うぞ,間違えたかもしれない,・・ここ?,発表してる!?,まじめに学会のようだ.我々だけが浮いた存在となってしまった.学生には,これは試練だ,練習通り演技するしかない,押し通せ,というわけでDr. Bioがサイボーグの性能について発表し,その説明通りの機能を果たすべくサイボーグ人間は動作を披露しました.審査員も観客も「こいつらはいったい?」と思いつつも感心するしかなく,発表後の会場でサイボーグとDr. Bioはスターのように多くの人のカメラに収まりました.つまり,大もてでした.ここで,また,なぁーんだ,学会もこういうのを受け入れてくれるんだ,なんと心の広い,なんて気持ちになり,賞の発表に望みました.何の賞にも引っかからず,周りからは面白かったんだけどね,という慰めの言葉を頂きました.ここで初めて,私の間違いに気がつきました.仮装大会ではない!次回は研究発表にしようと決意しました.

  次は翌年の流れの夢コンテスト2003〜見る・聞く・触る〜(2003.8.5 徳島大学)でした.この魅力的なテーマに,前年度の決心をすっかり忘れ,流れに触れ,その結果を目で見えるようにする癒し系の装置を作らないか?と学生達(研究室の2期生なので流れを扱う研究室だと前年度よりはわかって入ってきている)に持ちかけました.透明な平板上の水膜流に触れると波(衝撃波のような)ができ,それを投影すると影絵のようで癒される,この装置は受けること間違いなし.というわけで,徳島まで持って行かねばならないことを考慮して持ち運びができる程度の大きさ・重さの装置”Cats and Dogs”作りに(学生が)専念しました.会場ではうまく動くよう調整して臨みました.結果として,きれいなんだけどね,癒されるけどね,という慰めの言葉を頂きました.ここであらためて,私の間違いに気がつきました.何か作ればいいのではない!次回は研究発表にしようと決意しました.

  2回ほどいろいろな事情で参加できませんでした.2006年に流工部門講演会が東洋大学工学部(川越キャンパス)で開催されることになり,夢コン(流れの夢コンテスト2006〜エコノミー・エコロジー〜 2006.10.28 東洋大学)も本学でということで,しかもテーマはエコノミー・エコロジーなので,何かできそうだし,過去2回の失敗をふまえ,学生達に是が非でも賞を取ろうと持ちかけました.このとき研究室は機能ロボティクス学科の生物機械をあつかうバイオロボット研究室に衣替えしていたことから,実験室で飼育している熱帯魚に自分の使う電力は自分でまかなわせようということになりました.闘魚の攻撃力で圧電素子をつつかせ,それで発電する仕組みを作りました.実験としては闘魚が何に対してつつくのか,色か,形か,種族か,雄か雌か,また,鏡を付けて自分の姿にも闘争心を示すかなどを調べました.学生は興味を持って,いろいろ実験しました.その結果を報告しました.やっと本来の姿である研究という形で発表することができました.結果として,ドリーム賞を頂きました.しかし,学生はまじめに取り組んだのですが,私の指導の方向性に依然として「お祭り」要素が入っており,審査員やブースに訪れた人たちからは,面白そうだけどね,という評価でした.

  3回ほどいろいろな事情(またですか,本気で参加するつもりだったんですか?)で参加できませんでした.この間に研究室は生体医工学科の生物機械システム研究室に戻っておりました.今度は生体医工学科の1年生の学生達に,テーマが「楽しみながら流れを見る,感じる,理解する」なんだからブースに来てくれた人たちを楽しませよう,と3年間のブランクですっかり元に戻った頭で,持ちかけました.私ののりも絶好調で,それ以上に学生達ののりも最高でした.山形大学の旧米工本館(重文指定)の優雅さをみると鹿鳴館のような舞踏会を想像し,それと流れをつなごうというわけで,ガラス面を伝う水滴流が湾曲する様子を舞踏会に見立て「水の舞踏会」で流れの夢コンテスト2010〜楽しみながら流れを見る,感じる,理解する〜(2010.10.30 山形大学)に臨みました.もちろん過去の失敗を踏まえ,研究をしっかり行いました.その上で,入賞経験豊富な北見工大の松村先生に「どうしたら賞が取れるのですか?」とそれとなく聞いたところ,「来た人に実験に参加してもらい楽しんでもらうことです」との情報を得,早速,湾曲した水流がどこへ到達するか賭けてもらおうということになりました.「楽しんでもらう」の一言から,またまた初めて参加したときの「仮装」が頭をもたげてきて,学生達にかぶり物もしくはコスチュームを何とかせよ,と指令を出しておりました.今回の学生達ののりは私を凌いでおりましたから,実験装置もさることながら,コスチュームで(学会会場の雰囲気とは)別世界にいるプレゼンターが訪れた人たちを虜にしてくれました(この部分はおじさんの心わしづかみ大作戦と呼んでいましたゴメンナサイ).おかげさまで,審査員からはすべての項目で最高点でしたという,最高の評価を頂きました.コンテスト終了後も多くの先生から「完敗でした」,「かわいいプレゼンターに心奪われました」などの評価を得,プレゼンテーションに若干隠れてしまい「すばらしい研究でした」という直接の声こそなかったものの,最優秀賞を頂きました.

 最初の参加から丸8年かかって,最優秀賞まで来ましたが,この夢コンに参加した学生達のうち,Dr. Bioに扮した学生は本当に博士(工学)になり,Cats and Dogsで参加した学生も博士(工学)になり今生物流体の分野で助教として活躍しています.お魚発電の学生は企業で活躍しています.ということは,水の舞踏会の学生達は博士確定でしょう.夢コンの趣旨が参加した学生に理解してもらえたからこそこれからの社会で活躍できる人材を育めたのだと,つくづく流れの夢コンの力に感謝いたします.今後も何らかの形でこのようなイベントが続くことを期待いたします.

更新日:2011.4.1