ニューズレター

流れ 2011年4月号 目次

― 特集テーマ: 流れの夢コンテストの10年 ―

  1. 巻頭言
    (塚原,菊地,久芳)
  2. 夢コンの舞台裏と表舞台あれこれ
    松村 昌典(北見工業大学)
  3. アイデア一本を何十倍にも面白く見せる方法
    村井 祐一(北海道大学)
  4. 尺八の発音と息流ジェットの挙動の観察 〜流れの夢コンテストに参加して
    植松 洋一,鹿野 一郎,高橋 一郎(山形大学)
  5. 流れの夢コンへの挑戦
    望月 修(東洋大学)
  6. 流れの夢コンテストに参加して
    杉本 康弘,佐藤 恵一(金沢工業大学)
  7. 流れの夢コンテストへのチャレンジ 〜参加者と実行委員の立場から
    鵜飼 涼太,長田 孝二,酒井 康彦(名古屋大学),久保 貴(名城大学),寺島 修(名古屋大学)
  8. 第10回流れの夢コンテストに参加して
    早水 庸隆,西田 五徳,丹波 享,石田 憲保,仲田 悟,松田 達也,安田 直幸(米子高専)
  9. 流れの夢コンテストへの挑戦と成果
    渕脇 正樹(九州工業大学)

 

流れの夢コンテストへのチャレンジ −参加者と実行委員の立場から


鵜飼涼太
名古屋大学


長田孝二
名古屋大学


酒井康彦
名古屋大学


久保貴
名城大学


寺島修
名古屋大学

1. はじめに

  執筆者らの研究室からは,第2回,第9回および第10回流れの夢コンテストに出場させていただきました.それぞれの内容は以下の通りです.
第2回:不飛(飛ぶにあたわず):宇井岳夫(優秀賞)
第9回:速く走れるかな?:鵜飼涼太, 佃紗織, 伊藤成良(最下位!)
第10回:フローキックでシュートを決めろ:星野晃一,佐々木俊輔,鵜飼涼太(一樹賞)
また,第9回のコンテスト(2009年11月名古屋工業大学にて開催)では長田・久保・寺島が実行委員長および幹事を努めさせていただきました.本ニューズレターでは,まず,第9回,10回流れの夢コンテストに出場した鵜飼が参加者としての立場から流れの夢コンテストを振り返り,概要および感想を述べたいと思います.次に,第9回流れの夢コンテストの実行委員を経験して感じたことをコンテストの概要と共に述べたいと思います.

 

2. 第9回,第10回流れの夢コンテストに参加して

2・1 第9回流れの夢コンテスト

 「速く走れるかな?」と題し,ミニ四駆を速く走らせるために空気抵抗を低減するという目標をたて,そのために実験を行いました.

 まずは様々な車の空気の流れを調べました.図1はPIVにより水中で車の模型の周りの流れを可視化したものです.車体の後方の乱れが大きく観察されました.


図1 PIVによる車体周りの流れの可視化

 


図2 大型風洞内での実験風景

 

 次に空気中に実験場所を移し車体後方の流れの観察を行いました(図2).水中ではミニ四駆のスケールに変換した時,数10cm/s程度の速度しか出せなかったためです.大型風洞内にミニ四駆を入れ,熱線流速計により車体後方の流れ場の可視化を行いました.このときの設定は約20m/sという,ミニ四駆には十分な速さです!様々な車種について計測しましたが,ここでは使用したミニ四駆(図3)とプラモデル(図4)の計測結果を例として示します.どのような車体にしたら後流がなめらかになるかを考え,図3のミニ四駆の車体表面に紙粘度をくっつけ,図5のような最適と思われる車体表面形状を製作しました.図5は制作したミニ四駆の後流を可視化した実験結果です.もともとの流れ(図3)に比べてなめらかな流れを得ることができました.

 しかし見た目が悪い!さらに,紙粘度の重さで走らない!空気抵抗を減らして速くするという,当初の目的とはかけ離れた結果となってしまいました.その結果,当日は見向きもしてもらえず最下位に沈みました.


図3 ミニ四駆の後流の可視化

 


図4 プラモデルの後流の可視化

 


図5 制作したミニ四駆の後流の可視化

 

2・2 第10回流れの夢コンテスト

 「フローキックでシュートを決めろ」と題し,サッカーボールに回転をかけゴールにいれることを目指しました.前回のコンテストの反省を生かし,今回は体験型でビジュアル重視にします.

図6 ボールを打つ瞬間

7 全体図


図8 ボールの打つ位置・角度・高さが変えられるようになっている様子

 

 図6はボールを打つ瞬間を高速度カメラで撮影した時の1コマです.写真右の人形の下から棒を勢いよく押し出し,ボールをはじくようになっています.ボールに回転がかかる様子を確認できるようにボールに線を入れ,観客の方を意識して撮影を行いました.図7は全体の写真です.下には人工芝,ゴール前には壁となる人形を配置し,見た目も重視しました.また,図8のようにボールを打つ位置,角度,高さを変えることができるようにし,様々な条件で訪れた方々に試していただけるようにしました.当日は共に参加した後輩2人の頑張りが大きく,多くの人に実際に試していただけました.

  第9回と第10回に参加して大きく違ったところは目的をどこに置いているかでした.第9回は自分たちが楽しめるような研究をして,自己満足は得られましたがコンテスト参加者としては良くありませんでした.第10回は観客に楽しんでもらうことを目的としその結果受賞できました.両方の回において他に受賞したグループを見ると,特に審査員を楽しませることができたグループが受賞していたように思います.2年連続で参加して2年連続で最下位という,今後数年間は先生方に語り継がれそうな結果にならなくて良かったと,胸を撫で下ろすばかりです.

 

3. 第9回流れの夢コンテストの実行委員を経験して

 コンテストの詳細は「日本機械学会 流体工学部門 第9回流れの夢コンテスト」の報告書にまとめられているので,興味がある方はそちらをご覧いただきたいと思います.第9回のテーマは「流れと遊ぶ,美しさと力を求めて」でした.これは,流体工学部門講演会の実行委員長であった鬼頭修己先生(名工大)のご提案によるものです.遊び心を重点にし,流れの美しさや流れの働きをその中に織り交ぜることを目指して,全国の高専,大学等の学生を対象として募集し,最終的に15チームの参加がありました.コンテストは,作品の一般公開(展示・デモ),パワーポイントによるショートプレゼンテーション,特別講演,表彰式(於 流体工学部門講演会の懇親会)の順に実施されました.各チーム3分間のショートプレゼンテーションでは,作品の趣旨,アイデア,見どころ,工夫した点などを発表していただきました.特別講演では,豊橋技術科学大学の関下信正先生とCEEPOの田中信行様(講師は関下先生)に「トライアスロンと競技用自転車の風洞実験」という演題で,シニア・ソムリエールの島幸子様に「自然環境とワイン」という演題でそれぞれご講演いただきました.関下先生のご講演では実際の競技用自転車の展示もあり,参加者の皆さんは大変興味深く見学されていました.また,島様のご講演では,ワインのテイスティング方法に関する実演もあり,大変好評でした.お忙しい中ご講演を快諾頂きました関下先生,島様にはこの場をお借りして改めてお礼申しあげます.厳選な審査の結果,最優秀賞,一樹賞,優秀賞,アイデア賞,ドリーム賞を決定しました.なお,当研究室チームは最下位でしたが,これはこれで「八百長」がないことを示すものであると,よい方に考えております.

 本コンテストでは運営費の多くが企業からの寄附金(広告費)で賄われており,実行委員長の大きな仕事としてまず企業に寄附をお願いすることから始まります.これは,昨今の不景気を考えると非常に厳しく,実際,大半の企業からはよい返事が得られませんでした.これは仕方のないことだと思います.そのような中,コンテストの趣旨に賛同し快諾いただきました企業各社には大変感謝しております.予算確定後の次の懸念は参加者が集まるかどうかです.締切日が近づいても申し込みが数件しかなくはらはらしましたが,結果的に15件の申込みをいただき,盛況にコンテストを実施することができました.申し込みが少なすぎるのは当然コンテストとして成立しませんが,逆に多すぎても,会場の広さや電気容量,開催時間等の関係から開催が困難となります.様々な境界条件から最小参加チームが12件,最大参加チームが17件を想定していたのですが,その間に収まりほっとしたことを思い出します.指導教員の先生方に直接参加をお願いしたケースもありますが,いずれもご快諾いただきました.なお,この年は新型インフルエンザが流行し,場合によってはコンテスト中止の可能性も危惧されましたが,結局,無事に開催することができました(会場が閉鎖された場合の対応や赤字損失額の計算等もしましたが,幸い徒労に終わりました).予算と参加チームが決まった後は,開催の準備をして当日に備えるだけです.会場全般に関しては名工大の土田先生,飯田先生,内藤先生に大変お世話になりました.HPの製作と運営は名工大の牛島先生にお願いしました.その他,実行委員の玉野先生(名工大),辻本先生(三重大),安藤先生(三重大)にも大変お世話になりました.このように,たくさんの方々の協力を得ながら,コンテストを無事開催できたことに深く感謝しております.当日は和やかな雰囲気の中コンテストが開催されました.天気もよく,また正門のすぐ横という会場位置にも恵まれ,1時間半の一般公開時間中に一般の方々を含めて(本コンテストは無料一般公開です)およそ100人程度の見学者がありました.パワーポイントによるプレゼンテーションでは独創的で聴衆の興味を引きつける発表が多く,1時間程度のプレゼンの時間があっという間に過ぎました.参加者から「部門講演会よりも面白い」という声も聞かれたほどで,実行委員としては嬉しい限りです.全体的に,内容もプレゼンテーションも非常にレベルが高かったと思います.なお,第10回のコンテストにはビジターとして参加しましたが,第9回よりもさらに参加チームのレベルが高く,参加者のレベルが年々高くなっているように感じました.

 

4. おわりに

 流れの夢コンテストは2011年で10回の節目を迎えました.2011年度は日米韓流体工学会議が開催されるためコンテストは開催されません.過去10回の開催を振り返り,この機会にやり方を変えてみるのも一案だと思います.運営側は結構大変な作業が1年間続き,正直,このコンテストは本当に必要なのだろうか,と準備期間中に何度も思いましたが,当日の参加者の活き活きとした表情を見るとやってよかったと思いました.このようなイベントを通して,学生の流体への興味と熱意が深まることを切に願う次第です.

更新日:2011.4.1