流れ 2019年3月号 目次
― 特集テーマ:流体工学部門講演会 ―
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水面制御装置を用いたゴミの分別
本間 俊貴
明星大学
1.はじめに
私たちは2018年11月29日に北海道室蘭市で開催された第16回流れの夢コンテストに「ウォタセパ」というチーム名で参加した.
「ウォタセパ」は,明星大学理工学部総合理工学科機械工学系3年の5名で構成されたチームである,私たちは,水面に浮遊するごみを渦の力で分別することを目的とした「水面制御装置」を作成した. 「ウォタセパ」というチーム名はWaterとSeparateから名付けた.
2.このテーマを選んだ理由
第16回流れの夢コンテストでは,「流れのアクティブ制御」というテーマが与えられ,このテーマを基に起案した.
私たちは,しばしばニュースに取り上げられるプラスチックによる海洋汚染に着目した.海洋汚染は年々深刻化しており,海洋汚染によって命を落とす海洋生物も珍しくない.
そこで,私たちは海洋汚染問題を流れで解決できないかと考えた.そして,その解決策こそ私たちが作成した水面制御装置である.
3.私たちの作品について
3.1.作品について
私たちが作成した水面制御装置は水面に浮遊するゴミを渦の力で分別する装置である.これらの技術は今後下水道に応用され海洋へのゴミの流出を防ぐことが期待されている.
私たちが作成した水面制御装置は2種類の制御板を用いることで大小2つのゴミを分別して回収することに成功した.
3.2.渦の種類について
水面制御装置を作成するにあたって渦を発生させる必要がある.しかし,一言で渦といっても様々な種類の渦が考えられる.
3.2.1 渦その1
私たちが初めに注目したのはプロペラである.水中にプロペラを沈めて回転させることで渦を発生させようとした.実際に水槽に沈めてプロペラを回すことで渦が発生し,ゴミが滞留する様子が確認できた.
しかし,この案には問題があった.それは,海洋汚染という環境問題に取り組む私たちが,問題解決に動力を用いることである.そこで私たちは動力を用いない方法を考えた.
3.2.2 渦その2
次に私たちは身近に発生している渦を考えた.私たちにとって身近な渦といえば,浴槽の栓を抜いた時に発生する渦である.これを再現しようと,私たちは水槽を2段に重ねて上の水槽に穴を開け,ゴミが渦によって下の水槽に吸い込まれていく装置を考えた.
しかし,コンテストの性質上,作成する装置の高さには制限があり,その制限内で水槽を2段に重ねて装置を作成することは現実的に困難であった.
3.2.3 実際に使用した渦
そこで私たちはもっと簡単に渦を発生させようと考え,回流水槽の中に制御板を設置した.そして,その制御板後方にできる渦を利用して水面に浮遊するゴミの分別および回収を行った.
3.3.制御板その1
主に大きなゴミを回収する目的で設置した制御板が図1である.1枚目の制御板後方にできる渦によって1枚目と2枚目の間に大きなゴミを滞留させることができる.直径の大きなゴミはこの渦に巻き込まれやすく,直径が小さいゴミはこの渦に巻き込まれずに制御板を通過していく.
図1. 制御板その1
3.4.制御板その2
前述した制御板その1を通り抜けた小さなゴミを回収するのが制御板その2である.制御板その2のようすは図2に示した.
制御板その2で作り出した渦によって,制御板その1を通過したゴミはすべて取り込まれ,1ヶ所に集まる.
図2. 制御板その2
3.5.装置の作成において工夫した点・苦労した点
私たちがこの装置を作成するにあたって,もっとも苦労したのは,ゴミの大きさに応じて分別し,回収することだ.授業時間やその他の空き時間を活用しメンバー全員で試行錯誤を繰り返した.その結果,図1,図2に示したような制御板を設置することでゴミの大きさに応じて分別し,回収することに成功した.
また,図1に示した制御板では大きなゴミを滞留させられるが,長時間滞留させることができずにいた.そこで,魚を捕るのに用いられる仕掛けをイメージし,ゴミが一度入ると出ていかないような形のネットを作成し設置した.これにより,実演会場では大きさによって分別することができている様子を視覚的に訴えることに成功した.
4.まとめ
流れの夢コンテスト参加にあたって作成した水面制御装置は下水道などに応用されることが期待されている.今後,さらに改良が加えられていくことで海洋汚染を食い止める革新的な技術になると考えた.
5.最後に
本コンテストに参加するために作成した水面制御装置で,私たちは幾多のトライアンドエラーを繰り返した.しかし,最後まで諦めずに実験を重ねたことでこのような装置を完成させることができ,貴重な経験をすることができた.
この経験をすることができたのは,第16回流れの夢コンテストを運営してくださった実行委員の方々のご尽力のおかげであり,実行委員の方々に深く感謝申し上げます.
また,今回このような大変光栄な賞をいただくことができたのは、熊谷先生、森下先生をはじめとする先生方のご尽力ならびに、メンバー全員の協力があったからだと思います.本当にありがとうございました.