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流れ 2021年4月号 目次

― 特集テーマ:流体工学部門講演会 4月号 ―

  1. 巻頭言
    (橋本,松田,朴)
  2. 液晶の背流とマイクロアクチュエータの開発
    蝶野 成臣,辻 知宏(高知工科大学)
  3. 非ニュートン性流体の粘弾性は粒子の分散状態に影響されるか?
    芳田 泰基,田坂 裕司,村井 祐一(北海道大学)
  4. フローフォーカシングデバイスによるマイクロ液滴生成手法の開発
    塩崎 寛子,藤原 裕貴,杵淵 郁也,一柳 満久,田川 義之,高木 周(東京大学)
  5. 流れの夢コンテストに参加して
    大橋 弘明,逢坂 竜之介,森野 魁人,竹内 文哉(摂南大学)

 

流れの夢コンテストに参加して

大橋 弘明,逢坂 竜之介,森野 魁人,竹内 文哉(摂南大学)

はじめに

 2020年11月12日にオンラインにて開催された第18回流れの夢コンテストに摂南大学流体工学研究室から「ちーむさやけき」として参加し,初参加ながら大変光栄な「優秀賞」を受賞した.本稿では,本コンテストの作品の紹介,参加した感想を記したいと思う.

コンセプト

 本コンテストのテーマは「流れで遊ぼう」であった.そこで,私たちは流体力学を知らない方やお子様に興味を持ってもらえるようなおもちゃの製作を考え,ただ単に遊べるおもちゃではなく,遊びながら流れについて学べ,また遊んだ後もインテリアとして飾ることができるように,「遊べる」,「学べる」,「癒される」の3つの要素を含めたコンセプトとした.

 3つの要素が含まれているおもちゃは多くなく,「学べる」,「癒される」の観点から,アート作品や知育玩具に使用される「モビール」に着目した.それに加え,流体の流速をスピードコントローラーを用いて自由に変化させ,遊べる要素を追加した.モビールとは,紙や木,プラスチック等で製作された物体を紐や棒に吊り下げ,空気の流れにより複雑に動くインテリアである.

 私たちは流れを容易にコントロールできるように空気ではなく水を用い,流速を変化させることで水中に沈めたモビールを動かすおもちゃ「水中モビール」を考えた.

作品紹介

 本作品は,実際にモビールの動きをコントロールすることで視覚的に物体が流体から受ける力を体感でき、同時に流体力学的現象も学ぶことができ、使用しない場合でもインテリアとして楽しむことができるのが特徴である.

 製作したおもちゃの概要をFig.1に示す.600×600×1000mmの水槽を仕切り板で2つに区切り,Fig.1の後方の水槽からポンプ(スピードコントローラーで任意の流量に調整可能)によって矢印の方向へ流れる.その後,手前側の水槽を下から上方向に流れ,オーバーフローする仕組みである.


Fig.1 水槽全体 

 Fig.2に示すモビールはPLA樹脂を用いて3Dプリンタで製作した.これをFig.1の手前側の水槽に沈める.Aのモビールは直径9.7mm,長さ9.0mmの円柱で,Bのモビールは直径7.0mm,長さ37mmの円柱である.


Fig.2 使用モビール

実演1

 まず,Aのモビールを沈めて様子を観察する(Movie.1).水槽内を回流させると,モビールは流れの影響を受け上下方向に動いたり,停滞している様子が観察できる.


Movie.1 実演1のモビールAの様子

実演2

 次にBのモビールを沈めて様子を観察する(Movie.2).水槽内を回流させると,上方向の流れがあるのにも関わらず,モビールは左右にゆらゆら動くという興味深い現象が観察できる.


Movie.2 実演2のモビールBの様子

 今回2種類のモビールを使用したところ,ポンプの吐出量を変化させたことや、形の異なるモビールを使用したことで全く異なる動きをするという興味深い結果となった.他にも形の異なるモビールを用いると,興味深い動きをするのではないかと考える.

 また,このおもちゃは遊んだ後も楽しめる.モビールを水槽に入れたままふわふわと浮遊させて癒しの効果を得たり,Fig.3のように好きな色のライトを照らしてオブジェとして使うこともできる.


Fig.3 水槽ライトアップの様子

流れの夢コンテストに参加して

 本コンテストに参加したことで,設計や機構等のものづくりに関する知識はもちろんのこと,チームワークの重要性を学んだ.

 作品製作では,本コンテスト本番直前まで試行錯誤が続いた.それらの原因は水路断面積が大きいことや管摩擦損失により目的の流量に達さないこと等,大学での流体力学の授業で学んだことが関係しており,実際にものづくりを行うことで,授業で学んだことを体験できる良い機会となった.

 コンテスト終了後には,装置の解体を試みたが,部品を接着剤で固定していたことで,取り外しができず,設計段階からメンテナンスのことまで考えなければならないことも学んだ.そして作品が完成した後もまだまだ改良の余地があることがわかり,さらに良い作品をつくりたいという思いが高まった.

 本コンテストで行ったことは,自身の研究内容とは異なるが,流体工学的知見を広めることができた良い機会となった.

 また,本コンテストに参加するまでの準備期間では,新型コロナウイルス感染防止のため,チーム全員が集まって作業することが困難な状況であった.その中で,チーム一丸となって作品を作り上げたことで達成感を得ることができ,大変有意義な時間を過ごすことができたと感じている.

おわりに

 第18回流れの夢コンテストに参加させていただいた実行委員長の塩見先生をはじめ,実行委員の方々,本コンテスト当日に,私たちの実演ルームにお越しいただいた方々に厚く御礼申し上げます.

 本コンテストでは大変光栄な「優秀賞」を受賞することができました.お選びいただいた方々,製作に携わっていただいた方々に心より御礼申し上げます.

 また,本稿執筆の機会をいただいた日本機械学会流体工学部門関係者様にも厚く御礼申し上げます.

更新日:2021.4.13