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流れ 2022年3月号 目次

― 特集テーマ: 流体工学部門講演会 3月号 ―

  1. 巻頭言
    (橋本,松田,朴)
  2. 印象派物理学への誘い:流体・界面などの研究から
    奥村 剛(お茶の水女子大学)
  3. 遠心羽根車の回転円板と静止円板間の隙間流れと摩擦トルクの関係
    阪井 健人,稲葉 夢乃,宮川 和芳(早稲田大学),佐野 岳志,前田 聡(三菱重工業株式会社)
  4. べき乗則流体の伸長レオロジーとせん断レオロジーの関係
    松本 祐月(東京農工大学),田川 義之(東京農工大学)
  5. 火炎旋風の魅力
    田中 実(明星大学)

 

火炎旋風の魅力


田中 実
(明星大学)

1.はじめに

 私たち明星大学理工学部総合理工学科機械子学系熊谷研究室に所属している3年生6名は、2021年(令和3年)11月8日~11月10日にYouTube上のオンデマンド方式で開催された第19回流れの夢コンテストに「プーさんファミリー」というチーム名で参加した。そのコンテストで私たちは「一樹賞」という賞を受賞した。

2.コンセプト

 今回、第19回流れの夢コンテストの作品テーマは「魅せる!流れの美しさ」ということで それに基づいて作品を考えた。

 私たちは最初に美しく魅せるものについて考えた。そこで出した案がミラーボールやイルミネーションなどの光ものに注目した。しかしながら電気の光と流体をどのように結びつけるのか案が思い浮かばなかった。

 そこで我々は光るものを火に置き換え試してみた。火の現象の中で有名である火炎旋風を用いて私たちは、炎の色を変えるなどをしてイルミネーションみたいに美しく動画映えするような作品になるように考え作成した。

3.作品について

 火炎旋風の作成にあたってまず仕組みは、実際に燃えている火の中心部と新鮮な酸素を中心部へ供給しながら回転する空気に分けられる。それにともないまず初めに新鮮な酸素を供給できるような装置の作成にあたった。

 そこで私たちが考えたのは、電動轆轤(ろくろ)を用いて火炎旋風を発生させる方法である。電動轆轤(ろくろ)の中心部に灰皿を置き固定し、灰皿の中にエタノールを入れて火を付け、その周りに金網の円筒を覆いかぶせて電動轆轤(ろくろ)を回転させたら火炎旋風ができていることが確認できた。


図1 火炎旋風ができているときの様子

 火単体だけだとつまらないので花火みたいにほかの色が作れないのか我々は考えた。
そこで、私たちが高校時代に化学の授業で学習した炎色反応を使い火の色を変えることができないか試みた。

 まずはじめとして炎色反応の仕組みは、物質を燃やしたとき原子に熱が加わることでそれによりエネルギーが高まり電子が外側に移動する。離れた電子はもとに戻ろうとしてその時にエネルギーとして光を放出して元の位置に戻る。これによって色が変わる。元素によって電子の離れる距離が変わるので、放出するエネルギーの波長が異なるため色に違いが出る。これが炎色反応の仕組みである。
そして使用する水溶液が沸騰したら以上のように色が変わりによって沸点が異なる。
これらのことから私たちはまず初めに炎色反応の実験キットを使って実際に色の違いが出ることを確認することができた。


図2 塩化ナトリウムの炎色反応


図3 ホウ酸の炎色反応


図4 塩化ストロンチウムの炎色反応

 しかしホウ酸の炎色反応以外どれも沸点が1000℃を超えてしまった。キャンプ用のガスバーナーで火炎旋風が出来ないか試みたが火炎旋風が発生することは無かった。そのうえ1000℃を超えるものを回転させるのは危険と判断し通常の火炎旋風とホウ酸を用いた火炎旋風、そこに新たに線香の煙を使って火炎旋風に見立てた竜巻を発生させたものを採用した。


図5 ホウ酸入りの火炎旋風の様子


図6 線香の煙を使って火炎旋風に見立てた竜巻が出来ている様子

 線香の実験を行っているときに私たちは一つの疑問が生まれた。
それは、通常の火炎旋風やホウ酸入り炎色反応の火炎旋風での場合轆轤(ろくろ)の回転する速度が遅いと火炎旋風の大きさが小さくなり勢いが弱くなり、逆に轆轤(ろくろ)の回転を速くすると火炎旋風の大きさが大きくなり勢いが強くなるのを確認することができた。

 しかしながら煙の場合ではその逆で轆轤(ろくろ)の回転する速度を速くすると火炎旋風に見立てた竜巻が出来ず煙が外に逃げていった。轆轤(ろくろ)の回転する速度を遅くする、または速い速度から急ブレーキをかけると煙の渦が出来ているのを確認した。
だが私たちは、煙がなぜ炎と違って回転数が遅いと渦ができるのかについて理解することができなかった。

 そこで今回YouTube上でのオンデマンド方式ということで、「煙がなぜ炎と違って回転が遅いと渦ができるのか?」について視聴者さんに疑問を問いかけることにした。
そして学会の方から「上昇気流の強さが関係している」というアドバイスを受け取ることができた。
そして動画作成にあたり今回は例年と違ってYouTube上でのオンデマンド方式ということで、いままでと違った形となった。動画の構成を考えるうえで普段から我々がよく見るたくさんのYouTuberたちの動画を参考にしつつ、第三者が見ても飽きないようなアップテンポな音楽などをBGMに加えるなど工夫し動画作成に取り組んだ。

4.まとめ

 今回、私たちは、火炎旋風の作成にたどり着くまでにガスバーナーを用いて炎色反応を試したりするなど試行錯誤を繰り返した。そして何度も失敗を繰り返して今作品にたどりついた。この動画で少しでも流体工学に興味を示して欲しいと考えている。

5.最後に

 今回第19回流れの夢コンテストの参加するにあたって、協力してくれた研究室の仲間達、いつも研究室でお世話になっている熊谷先生に感謝したいと思います。そのおかげで一樹賞という光栄な賞を受け取ることができました。
そして、このような貴重な体験をさせてくださった日本機械学会にこの場をお借りして深くお礼を申し上げます。

更新日:2022.3.1