流れ 2008年4月号 目次
― 特集: 次世代二相流研究 ―
| リンク一覧にもどる | |
バブルリングの形成過程の観察(流れの夢コンテストに参加して)
|
1.はじめに
流れの夢コンテストは日本機械学会流体工学部門主催で2001年より年次講演会や部門講演会などと同時開催で行われている.本研究室では4年次の工学設計Ⅲプロジェクト活動(卒業研究に対応するもの)では,流体力学を応用したものづくりを行っており,学生の絶好の発表機会であることから,本コンテストに挑戦している.本年度は太田および鈴木の2名の学生がコンテストに挑戦した.ここにコンテストにおいて好評を得たバブルリングについて紹介する.
本年度,広島大学で流体工学部門講演会と同時に開催された第7回流れの夢コンテスト(1)では「流れと遊び、学ぶ」というテーマが提示された.このテーマに対し,太田および鈴木は気液2相流および渦輪現象に興味を持ってもらおうというコンセプトの下,バブルリングを取り上げた.バブルリングとは,イルカが水中で作り出すことで知られている(テレビコマーシャルなどでご覧になった方もいるのでは?)泡の輪(2)のことで,ダイバーなどの呼吸時にも生成される.このようなバブルリングを簡単に生成できる装置の設計・製作をした.
2.バブルリング発生装置
図1のように本装置は水槽,ノズル,電磁弁,電磁弁制御回路,圧力計そしてコンプレッサから成っている.コンプレッサは逆止弁,自転車用の空気入れおよびペットボトルで構成された手作りのものである.ノズルはある程度の空気溜めをもつ直径2.5~4mm程度の円筒形状である.空気噴射時間を調整するため電磁弁で開時間を制御した(ここで示す結果は弁開時間を20~25msに設定した).生成されたバブルリングを図2に示す.バブルリングは形成後,回転しながら水面まで上昇する.
Fig. 1 Observation system
Nozzle diameter: d=4mm, Pressure: P=200kPa, Valve opening time: tv=20ms
Fig. 2 Bubble ring
3.バブルリングの形成様相
図3にバブルリング形成を高速度ビデオ観察した結果を示す.バルブ開時間tv=25msそして噴射圧P=200kPa(ゲージ圧)で大気圧下の水槽に噴射した.気泡が液中に噴射され始めた時点をt=0msとする.図3の(a)~(d)に示すようにノズルから噴射された空気は大きく成長し,やがてノズルから離れ始める.(e)~(f)では気泡がノズルから離脱すると同時に気泡の下端部がくぼみ,水噴流が気泡に流入する.(f)~(k)で水噴流は気泡内部を上昇し,(k)で水噴流の先端はほぼ気泡の上部に到達し,気泡内を水噴流が貫通し,(m)で気泡はリング状になっている.この後,表面張力などの影響を受けて図2に示すような綺麗なバブルリングに移行していく.
気泡の成長・離脱・上昇に伴い,気泡内部への流れが誘起されると考えられる.このような流れは渦輪キャビティ(バブルリング)を形成し,その径をやや大きくしながら上昇してゆく.バブルリングは,ある程度安定してその形態を保っている.気泡や渦輪のダイナミクスに関して多くの基礎的な研究が行われており,このようなバブルリングに関する流れ場は興味深く今後,更なる検討が必要と思われる.
Nozzle diameter: d=2.5mm, Pressure: P=200kPa, Valve opening time: tv=25ms
Fig. 3 Growth process of bubble ring
4.おわりに
最後に,第7回流れの夢コンテストおいて最優秀賞を受賞することができた.第7回流れの夢コンテストに際して山口大学の望月信介先生をはじめ関係各位に感謝申し上げます.また来場者からの多くのご意見,ご指導をいただきましたこと御礼申し上げます.
参考文献
(1) | 第7回流れの夢コンテスト,https://www.jsme-fed.org/contests/yumecon2007/index.html |
(2) | 島根県立しまね海洋館アクアス,http://www.aquas.or.jp |