流れ 2017年2月号 目次
― 特集テーマ:流体工学部門講演会 ―
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流れの夢コンテストに参加して
山内遥
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1. はじめに
私達,「明星バキューム」は,11月12日に山口大学で行われた第15回流れの夢コンテストに参加した.「明星バキューム」は,明星大学理工学部総合理工学科機械工学系の3年生6人で構成されている.浮上する掃除機「フライング排気ing19800V」の製作を行い,ユニークな発想で見る人に感動を与えた作品に贈られる「一樹賞」を頂いた.
ここに,私達が製作した掃除機について記したい.
2. コンセプト
今回のテーマは「流れを活かそう」だった.チーム内でどういったものを作ろうかと考えていた時,近年,国内外の様々なイベントで日本人がゴミを拾う光景がニュースに取り上げられていることを思い出した.
日本と言えば,お掃除.そこで,毎日の掃除の主役である掃除機の排気に着目した.掃除機をかける時に,家の中のドアの段差に引っかかったり,掃除機自体が重かったりする2つの難点を,流れを活かして解消すれば,ストレスフリーで掃除が出来るのではないかと考え、「フライング排気ing19800V」が生まれた.
それから,恐らく誰もが気になるであろう,作品タイトル「フライング排気ing19800V」について説明をしたい.「排気を活かして飛ぶ」と,「掃除機がまるでハイキングをしているかのように動く」をかけて「フライング排気ing」,誰もが買いたくなるような値段を想定して「19800」(イチ・キュッ・パと読む),そして「V」はバキュームから取った.
3. 作品について
そもそも掃除機と言えば,ごみを取る機械であるので,主に家庭におけるゴミを取る事について考えてみた.紙屑やプラスチック片などのゴミがフローリングの床に落ちている状況を想定し,製作時に行った実験では,プラスチック片の代わりにビーズやBB弾を用いた.
完成した「フライング排気ing19800V」(Typeα)の全体像である(Fig.1).これは,浮上する本体部分と,吸引部分に分けられる.また,ゴミを収集する際の排気で浮く掃除機(Typeβ)も製作したので紹介したい.
Fig.1 フライング排気in19800V
3.1 本体部分について
まず,本体部分は,カップ麺容器とファンを用い,ホバークラフトの原理を利用して製作した.(Fig.2)ホバークラフトの原理を簡単に説明すると,吸い込んだ空気で機体と床との間に空気溜まりを作り,その空気圧を利用して浮上する.空気圧が床に対して均一にかかる必要がある為,機体の中心に吸引部分を取り付けた際に,機体が傾かないように軽くて丈夫なバルサ材で接合した.この部分は,2種類のカップ麺容器を用意して,どちらがより浮上できるかを検討した結果,重心が低く,安定していた写真のものになった.
Fig.2 本体部分
また、使用したファンとモーターにも,こだわった.それぞれ3種類と2種類ずつ用意し,性能比較を行った.ファンは,黒いプロペラ,青いプロペラ,白いターボファンの中から一番揚力を得られ,且つ静かに動いた白いターボファンを選んだ.モーターはファンに対してトルクが高く,サイズと重量が適当な写真右側の大きなモーターを選んだ.(Fig.3)
Fig.3 羽根とモーター
3.2 吸引部分について
吸引部分は,後方のファンで吸気を行うことにより,先端のノズルからゴミを吸うことができるようになっている.(Fig.4)
このノズルとホースに辿り着くまでに改良を重ねた.最初はチームメンバーでノズルに使えそうなものを持ち寄り,その中で方眼紙と市販のノズルを用いたが,重量の関係とノズル内部の角度の問題で,あまり吸引力を得られなかった為に,次に軽いプラスチック板でノズルとホースを自作した.これは,最初のものに比べて吸引力は上がったが,目標としていたゴミを吸引するには至らなかった.しかし,ホース部分の角度を調整したところ,目標としていたゴミを吸引できた上に,先端に手を加えていない状態のものの方が,吸引力が高いことが判明した.
Fig.4 吸引部分
3.3 Typeβ
フライング排気ingMS19800V(Fig.1)は,吸引部分と排気部分が独立しているが,改良を重ねた結果,ゴミを吸引した排気を使って浮上する掃除機(Typeβ)を開発し,コンテスト会場で実演した.この掃除機は,浮上する際にその排気でゴミを散らしてしまう問題があり,今後,吸引部分に改良を加える必要があるが,当初の構想であった「排気を利用して浮上」する掃除機を実現させたものである.
(Fig.5) Typeβ
4. まとめ
今回,排気を利用して浮く掃除機の製作を試みた.吸引部分と排気を活かして浮上する部分を1から自分達で作り上げ,ゴミに見立てたビーズ,BB弾を実際に吸引する事が出来たので,電源をバッテリーに変えたり,もっと色々なゴミを吸引できるように吸引力を強くしたり,また,マイコンやセンサを取り付けたりするなど改良を重ねていけば,実際にこの掃除機が家庭の中で使われるようになるのではないかと考えている.
また,コンテスト当日の午後からの実演時には,午前のプレゼンテーションを見ていただいた方々から,作品に対しての感想や改善点などのご意見をいただいた.大変、参考になり、感謝している.今後の改良に生かしていきたい.
6. 最後に
今回,第15回流れの夢コンテストを通して,実行委員長の亀田孝嗣先生をはじめとした,実行委員の方々のご尽力に感謝致します.
また,「一樹賞」受賞という大変名誉な体験が出来たのも,担当研究室の教授である森下先生,熊谷先生の的確なご指導があったからこそです.
そして,「明星バキューム」のチームの皆の協力にも感謝します.