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流れ 2020年12月号 目次

― 特集テーマ:2020年度年次大会 ―

  1. 巻頭言
    (本澤,森)
  2. 乱流のLarge Eddy Simulation の課題
    梶島 岳夫(大阪大学)
  3. ターボ機械内部流の非定常性について(現象理解と空力・伝熱設計への展開)
    船﨑 健一(岩手大学)
  4. 固体高分子形燃料電池におけるガス拡散層内部の蒸発を伴う二相流解析モデルの構築
    長山 龍也,境田 悟志,田中 光太郎,金野 満(茨城大学)
  5. 粒子追跡法によるナノ空間流速分布計測に向けたナノ粒子挙動の統計力学的解析
    田中 美典(慶應義塾大学),花崎 逸雄(東京農工大学),嘉副 裕(慶應義塾大学)
  6. 年次大会の備忘録 ―ウェブ開催の運営的立場から―
    伊藤 靖仁(名古屋大学)
  7. 年次大会 流体工学部門OS「流体工学の基礎と応用」開催の経緯 および変遷
    (森)

 

年次大会 流体工学部門OS「流体工学の基礎と応用」開催の経緯 および変遷

日本機械学会流体工学部門 広報委員会
文責:森英男

 コロナ禍の中,オンライン形式で開催された2020年度年次大会(名古屋大学)における,流体工学部門オーガナイズドセッション(以下,OS)「流体工学の基礎と応用」では,39件もの講演がなされた.

 2018年度年次大会(関西大学)までは,各部門のセッションにおいて一般セッション(以下,GS)が設けられ,各OSのテーマとは合致しないものの,各機械工学分野における重要な研究トピックに係る研究発表の機会を提供してきた.流体工学部門においても,例年GSでは30件前後の講演を集めており,既設のOSの枠組みに収まらない研究トピックに関する貴重な研究成果の発表の場として活用されてきた.

 一方,機械学会において,年次大会の大規模化に伴い,開催準備が会場校の多大な負担となっており,そのため,いわゆる旧帝大や大都市圏に所在する国立大学または大手私立大学でなければ,スタッフの人材や教室確保の面で開催が難しくなっていたことが問題点となっていた.あわせて,2010年代後半より学会にて議論されてきた部門横断化の促進のため,年次大会においては部門横断セッションをなるべく増やす動きがあった.

 以上のような,年次大会における簡素化と部門横断促進という2つの方向性に基づく年次大会の開催方法の改革について,学会上層部で検討が進められ,その結果,2019年度(秋田大学)以降の年次大会において,大会テーマベースの講演プログラム編成や,学生員による発表の原則ポスター化といった開催方法の大幅な変更とあわせ,GSの廃止が正式に決定された.このGS廃止については,2018年度に日本機械学会流体工学部門長を務められた能見 基彦 氏(株式会社荏原製作所)は,自身の私見と断った上で,「学会上層部にて,部門の中であっても,特定テーマのないGSは,中途半端な立ち位置にあるとみなされ,廃止されることになったのかもしれません」と語っている.一方で能見氏は,「しかしながら、流体工学の範疇ながら、既設のOSに枠組みに入っていないという理由で、研究発表できないケースが出てきてしまうのは、私としては避けたいと考えました」とのことで,2018年度の委員長幹事会において,GSに代わり流体工学分野に係る研究発表を幅広く集めるOS「流体工学の基礎と応用」を提案し,審議を経て,同OSを2019年度年次大会より開催することが決まった.なお当初,同OSがGSの後継であることが部門の皆様に伝わるように,OS名として「流体工学の基礎と応用(一般)」を提案したが,年次大会実行委員会からは,学会方針にそぐわないので「(一般)」を削除するよう指示を受けた.そのため,研究発表の応募予定者に対してGSの後継と認識してもらえるかどうか,講演会WG関係者間で大変心配したが,同OSの開催初年度となる2019年度には例年通りの発表件数が集まり(後述),関係者一同,安堵したとのことであった.

 以上のような経緯により,2019年度年次大会よりOS「流体工学の基礎と応用」が開催されることとなり,2019年度年次大会では35件,また2020年度年次大会では前述の通り39件の講演発表を集めることとなった.なお,それ以前の年次大会における,流体工学部門GSの講演件数が,2014年度(東京電機大学)では30件,2015年度(北海道大学)では57件,2016年度(九州大学)では36件,2017年度(埼玉大学)では35件,2018年度(関西大学)では24件と,概ね35件前後で推移していることから鑑みると,本OSが,他のOSとはなじまないが,多彩な流体工学分野の研究内容に関する発表の場として活用されていると言える.前述のように,年次大会における簡素化と部門横断促進がGS廃止の目的であれば,GSの代替であるかに見える当OSの開催は,本部の方針に逆行していると捉えられかねず,またそのような研究内容に関する成果発表は,流体工学部門講演会で行うべきとの意見もあるかと思う.一方で,流体工学は,機械工学のいわゆる「四力学」の一翼を担う基幹分野であり,部門横断的な研究トピックを開拓する上で必要不可欠な基盤研究要素であるため,年次大会という様々な分野の研究者が一堂に会する機会を活用し,他分野の研究者に向けて流体工学分野の優れた研究成果をアピールする場を設けることは,むしろ部門横断促進に利するものと考えられる.

 今後もOS「流体工学の基礎と応用」が,流体工学分野の幅広い研究内容に関する成果発表の場としてご活用頂き,また他分野の研究者の方々にも是非とも足をお運び頂ければ幸いである.

謝辞

 本記事の執筆にあたり,流体工学部門 技術委員会 講演会WG主査 田坂 裕司 先生,同 幹事 茂田 正哉 先生,および2018年度 流体工学部門長 能見 基彦 様,2018年度講演会WG主査 玉野 真司 先生,同 幹事(2019年度 主査) 伊賀 由佳 先生に多大なご協力を賜りました.厚く御礼申し上げます.

更新日:2021.1.19